バターは体に良いのか、悪いのか

私たちの食生活に欠かすことができないバター。飽和脂肪酸が比較的多く、さまざまな疾病リスクとの関連性が叫ばれていたが、最近の研究によってバターの消費は心臓病や脳卒中のリスク増加には関連性がないことが判明した。むしろ、糖尿病の脅威から私たちを守ってくれる可能性があるかもしれないのだ。

海外のさまざまなニュースを紹介する「livescience」にこのほど、「バターと疾病リスク」に関するコラムが掲載された。米国マサチューセッツ州タフツ大学フリードマン校 栄養科学政策学部長のダリッシュ・モザファリアン氏による調査結果では、バターは健康に害を及ぼさず、バターの消費量が増減しても健康への主要な影響は見られないという。

バターは、一般的に「悪い脂肪」とみなされる飽和脂肪酸を比較的多く含有すると言われている。だが、バターのようにさまざまな栄養素が組み合わさっている食品は、単一の栄養素よりも人々の健康にさまざまな良い効果をもたらすこともある。

新たな研究では、10~23年間追跡した15カ国以上の63万6,000人を含め、9件の先行研究の情報を分析。その間に2万8,271人が死亡し、9,783例は心臓病と診断され、2万3,954例は2型糖尿病と診断された。研究対象の人々による毎日のバター消費量は、平均で大さじ3分の1程度だったという。

データを調べた結果、毎日バターを14gまたはテーブルスプーン1杯ほど摂取する人々は、追跡期間中の死亡率が1%高かった。また、バターを毎日摂取すると、2型糖尿病リスクが4%減少したが、バター摂取と心臓病との関連性は全く見られなかったという。

これらの事実から、バターは心臓病や糖尿病のリスク増加と関連がある砂糖よりは健康的であるかもしれないとのこと。一方で、亜麻仁油やエクストラバージンオリーブオイルなどよりは健康的ではないかもしれないとされている。これらの調理用油は一般的に、飽和脂肪酸よりも健康的と考えられている不飽和脂肪酸を多く含むためだ。

今回、バターの摂取で2型糖尿病リスクがわずかに低減することが明らかになったが、この理由が判明するにはさらなる研究が必要とされる。また、バター消費量と心臓病の関係や早期死亡、2型糖尿病との関連性が報告されているが、本当にバターが今回の結果に関与しているかどうかは証明できていない。

そのため、人々の身体活動レベルや遺伝的リスク因子など、今回考慮されなかった要因などを含め、今後さらなる研究が必要となってくる。バター愛好家としては一日も早く、「バターは健康に良い」とはっきりと統計的に証明してほしいところだろう。

※写真と本文は関係ありません

記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。