「月曜9時の夏ドラマ、ラブストーリー、海! この3つがそろったら最強なんです!」…キャストの三浦翔平が、そう興奮して紹介した新月9ドラマ『好きな人がいること』が、いよいよ11日にスタートする。三浦がこの言葉を述べたライブ配信での制作発表は、64万人以上が視聴し、Twitterの公式アカウントは、6月の時点で当時放送中の春ドラマ全てのフォロワー数を抜き去るなど、放送前から大きな話題を集めている。
制作を手がけるのは、昨年夏の月9『恋仲』(※)と同じチーム。同作で年甲斐もなく"キュンキュン"してしまった筆者(30代男性)が、この夏もときめくことができるのかを確認すべく、「"キュンキュン"をやらせたら日本一を目指すチーム」を率いるフジテレビの藤野良太プロデューサーを訪ねた――。
(※)『恋仲』…2015年7月~9月放送。福士蒼汰演じる三浦葵が、本田翼演じる芹沢あかりと運命の再会を果たし、さまざまな障害に七転び八起きしながら本当の恋をつかんでいく姿を描く、月9王道の純愛ラブストーリー。胸キュンな展開で、若い世代を中心に支持を集めた。
フジテレビ 藤野良太プロデューサー |
――湘南の海でロケが行われていますが、しっかり焼けてますね(笑)
はい、こんがり(笑)。現場のスタッフはもっと焼けてます。
――藤野さんは、昨年夏の月9『恋仲』でもプロデュースを手がけていましたが、やはり恋愛ドラマをやっていきたいという思いは強かったのですか?
全然なかったです(笑)。恋愛ドラマをプロデュースしているのがいまだに自分でも信じられません。
――そんな中で、恋愛ドラマをやることになったきっかけは何ですか?
ラブストーリーが若い世代に求められているのではと思ったからです。ラブストーリーは数字が取れないと言われていて、以前はあまり制作されてませんでした。フジテレビだけでなく、各局でもあまり恋愛ドラマをやっていなかったので、逆に勝機があるかもなと思って、苦手ながら挑戦してみようと思いました。
――実際に「ラブストーリーが若い世代に求められている」と感じた場面があったのですか?
その空気は、山崎賢人くんが出演していた『L・DK』という映画を見に行ったときに感じました。当時、山崎くんに注目していて、彼の出演する作品だから見てみようかなと。平日の渋谷の映画館に見に行ったのですが、そこに集まっている女子中高生の多さたるや! 正直余裕で座れるだろうと思ってましたが、ものすごい行列で。並んでる子に「これって『L・DK』ですか?」って聞いたんですが、「そうですけど」とぶっきらぼうに返されて(笑)。広い映画館で男は僕1人だけ。完全あやしいおっさんだと思われてたと思います(笑)
そこで、上映が始まったら、若い子たちがしゃべりながら映画を見るっていう、新しい発見があったんです。山崎くんの出演シーンになると「来るよ来るよ…」から「はっ!きたぁ!!」とか、キュンキュンシーンがあると「あー!」とか、結構大きな声でみんなリアクションするんですよ。その熱狂に大きな刺激を受けました。若い子たちはラブストーリーを見たいんじゃないかと思い始めたのはその頃からですね。
――まさにお客さんの生の声を見て、手応えを感じたんですね。
ティーンズラブ映画がたくさん作られていてヒットしていましたが、月9でラブストーリーをやらなくなって、その欲求が映画館に集まっているんだと思いました。これは映画館で若い子に囲まれながら映画を見なければ、分からなかった感覚ですね。
あと、若い子たちの映画の視聴スタイルを見たことが宣伝方法の大きな参考となりました。僕の感覚だと、映画はじっくりと黙って見るものなのですが、若い子たちは映画館でおしゃべりしながら作品を見ている。SNS世代の子たちは、すぐに誰かと共有しながら作品を見たいんだと気づきました。
僕たちの時代はドラマを見て感想を共有したくてもすぐに友達とは話せない。翌朝学校に行って、友達とあって「ねえねえ、昨日のドラマ見た?」ってやるしかなかったですけど、今は見た瞬間に感想を共有しあえるし、それが今の若い子たちの空気なんだなと。そこで、『恋仲』ではTwitterを使って仲間たちとすぐ共有できる施策をいろいろやってみたんです。
――『恋仲』は男の私も、すっかりキュンキュンさせられてしまいました(笑)
『恋仲』をつくる際に、ドラマや映画のラブストーリーを相当研究したんですが、マンガも参考にしまして。その中でもあだち充さんのマンガには相当ヒントがありました。
――『タッチ』ですね!
はい。本田翼さん演じるあかりちゃんを、主人公がどんな時でも笑顔を向けて励ましてくれるヒロインとして作ったんです。つまり"朝倉南"ですね(笑)。男性の方で『恋仲』にハマったという方は多かったのでうれしかったですね。
――そして今年の夏も、月9でラブストーリーですね。
『恋仲』以降、月9は3作品連続してラブストーリーを放送しています。1年前にはなかった"月9に行けばラブストーリーが見られる"という認識が、視聴者にも根付きつつあるのではないかと思います。『恋仲』でラブストーリーに挑戦して、作り手として反省ばかりが残りましたが、若い世代がラブストーリーを求めているという実感は得ることができました。今回の『好きな人がいること』は、桐谷美玲さん演じる女性主人公目線でラブコメディをつくっています。女性主人公の作品をプロデュースするのは、今回初めてなので、新たな挑戦だと思っています。