画像と本文は関係ありません |
猫の飼い主は、犬の飼い主よりも多頭飼育率が高いという報告があります(1世帯あたり犬1.26頭に対して猫は1.76頭 一般社団法人ペットフード協会平成25年度調べ)。多くの猫飼い主が新しい猫を迎え入れたい、と思っていることが伺えますね。
確かに、猫が一頭で留守番するよりも友達がいた方が寂しくないでしょう。しかし猫同士にも相性があります。先に暮らしていた猫(先輩猫)は、突然知らない猫と同じ部屋に住むことになり、混乱してしまうこともあります。十分に配慮してあげましょう。
先輩猫が高齢の場合は避けたほうが無難
新しい猫(後輩猫)を迎え入れるのであれば、先輩猫が若い方が仲良くなりやすいです。理想的には1歳以下が望ましいといわれています。新しい猫の存在によるストレスで体調を壊してしまうことがありますので、先輩猫が10歳を超える場合は新しい猫を入れることをお勧めしません。新しい猫を受け入れられるかは先輩猫の性格にもよりますので、迎え入れる前に一度愛猫をよく知る獣医師に相談することをお勧めします。
第一印象が大事
人間関係においてもそうですが、第一印象がとても大切です。先輩猫にとっては自分のテリトリーに新しい猫が侵入してくるわけですので、かなりのビッグイベントになります。そのため、「先輩猫の気持ちを尊重する」ことが基本的な考えになります。
例えば後輩猫が来るのが日曜日だったとしましょう。以下では、曜日別に対面の手順を解説します。
1.(日)後輩猫が家に来たら、すぐにキャリーからは出さないようにしましょう。先輩猫は実際に面会しなくとも新しい猫が来たことを匂いで察知します。初日は、後輩猫に別の部屋で過ごしてもらうと良いですね。
2.(月)後輩猫をキャリーから出さずに、さらにキャリーにタオルをかけ目が合わない状態で、先輩猫を部屋に入れましょう。先輩猫は匂いを嗅いだり、キャリーの周囲をぐるぐると回ったりするでしょう。この時、すでに先輩猫がシャーと威嚇するかもしれません。
3.(火)ここまで慣れたらいよいよ面会させましょう。嫌なら逃げられるよう、先輩猫は自由に行動できる状態にしておきます。後輩猫はキャリーの中にいれた状態で、タオルを取りましょう。決して無理に近寄せることなく、先輩猫が自分の意思で近くへ行くのを待ちましょう。
4.(水)最後の段階です。いよいよ後輩猫をケージから出します。ここまで慎重に手順を踏んでも、いきなり喧嘩をすることがありますので注意しましょう。この時オヤツをあげると、猫たちの気が紛れて良いです。初日は短時間の交流にとどめ、その後別々のお部屋へ。それから時間をかけて、徐々に一緒にいる時間を増やしましょう。
匂い交換
仲の良い猫同士は体を擦り付け合い、自分たちの匂いを交換します。猫たちの対面で苦戦する場合は、まずは匂いを交換させると良いかもしれませんね。お互いの猫が好んで使用するタオルなどを使い、猫を撫でることで匂い交換をすることができます。
攻撃的な猫に鈴をつける
対面はできるようになったけれども、片方の猫がもう一方の猫を攻撃することがあります。多くの場合は、「年下の猫が年上と遊んでほしくてじゃれたけど、年上の猫がうっとうしく思い怒ってしまう」というケースですね。こんなケースでは、年下の猫がどこにいるのか察知できるよう鈴をつけておくと良いでしょう。
最後に
ポイントは何と言っても「焦らないこと」。これに尽きます。先輩猫が興奮するようであれば、前述したフローの2、あるいは3の段階でストップすることもあります。猫は長い歴史の中で、ずっと一頭で暮らしてきました。野生が残っている猫ほど、他の猫と対面することを嫌います。
動物病院では、人間に触診されている間はリラックスしていても、他の猫と目が合うと怒り始める猫もいます。「猫と人」よりも「猫と猫」の方が緊張感が高まるのでしょう。ゆっくりと慣らすことで、先輩猫と後輩猫の間に良い関係を作ってあげましょう。
■著者プロフィール
山本宗伸
獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み今年帰国。現在2016年6月に猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialists開院に向けて準備中。ブログ nekopeidaも毎月更新中。