目黒区は南北に東急東横線と東急目黒線が走っており、銭湯も主にその沿線上に多い。その数は15軒以上と、都内では多い方ではないものの、デザイナーズ銭湯あり、番台銭湯あり。サウナが人気の銭湯あり、とバラエティは豊富だ。今回紹介するのは、東急東横線「祐天寺」駅から徒歩10分、閑静な五本木の住宅街を抜け、陸上自衛隊駐屯地手前、蛇崩(じゃくずれ)交差点にある「寿湯」。鮮やかな黄色の破風屋根と白い煙突、龍の形をした懸魚(げぎょ)も見ることができ、伝統的な外観を残している。

破風屋根に白い煙突と、昔ながらの佇まいな「寿湯」

見上げれば折上格天井

のれんをくぐって、正面には傘ロッカー。男湯右、女湯左側で、下足箱は板鍵になっている。一応番台式ではあるが、女将さんは玄関側を向いた仕切りの中に座っており、特有の抵抗感はないだろう。

天井を見上げると折上格天井。足元はピカピカに磨き上げられた床。日中は日もよく入る。ロッカーは壁側、中央、背側に3面。テレビ、ドリンクケース、ショーケース。自販機はビール・発泡酒の種類が豊富だった。中央に腰掛け。境目に鏡。浴室側にはHOKUTOW製のはかりと、洗濯機がある。余分なものはほとんどなく、隅々まで丁寧に清掃されており、大変清々しい。

大きく肥えた鯉3尾を眺めながら

男湯のイメージ(S=シャワー)

浴室は手前カラン、奥浴槽の一般的な東京銭湯スタイル。ひとつ面白いポイントは、壁側、浅風呂脇に埋め込まれた水槽で、大きく肥えた鯉が3尾、ゆったりと泳いでいる。正面の壁は白く、2015年頃に訪問した時の富士山のペンキ絵はなくなっていた。もしかしたら描き替えの時期なのかもしれない。

男女境目壁には、水車小屋風景のタイル絵。白い天井は無論高く、中央カラン島にはシャワーがないため、空間が一回り広く感じる。左側のジェットバスはややぬるめで、42~43度くらい。水枕もしっかり冷えている。右側のバイブラバスはさらにぬるく、41度前後かと思う。これからの季節にぴったり、のぼせることなく長湯もできる。

こういった、昔ながらの佇まいの銭湯は「あつ湯」である確率が高いので珍しい。鯉を眺めながらゆったりと湯につかっていると、時間の経つのを忘れてしまう。水風呂はないが、温冷両対応の立ちシャワーがあるので、温冷浴も可能だ。

アクセスもよく、中目黒や代官山といった街からの散歩圏内でもある。東京の銭湯の魅力を存分に備えながら、気軽に楽しむことができる立地と設備なので、銭湯未経験の若い方々にも、ぜひ試してもらいたい。

※記事中の情報は2016年5月時点のもの。イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。