名古屋ではコメダ珈琲に次ぐ老舗喫茶チェーンとして知られる「支留比亜珈琲店(しるびあこーひーてん※以下支留比亜)」。2014年、東京に初出店したのを皮切りに長野、広島と地元以外での出店も活発化し、現在約50店舗を構える。今回は、同店の中でも人気のメニュー「カルボトースト」(680円)をご紹介しよう。

これが支留比亜オリジナルの「カルボトースト」(680円)

ひたひたソースがたまらないカルボトーストの魅力

喫茶店王国と呼ばれる名古屋で、支留比亜ならではの魅力となっているのはサンドイッチ。フードメニューはパン類のみでご飯物やスパゲティはないが、その替わりにサンドイッチはバラエティ豊かでクオリティー、コスパも高い。店内で食べるのはもちろんのこと、テイクアウト需要も多くある。例えば、名古屋ならではなふわふわの厚焼き玉子の「エッグトースト」(550円)や、B.L.Tならぬ「E.H.Tサンド」(650円)、食べごたえのある「三元豚のカツサンド」(680円)などがそろう。

「エッグトースト」(550円)。ゆで玉子をつぶしたタマゴサラダをはさむのが一般的だが、名古屋ではふわふわの厚焼き玉子が主流

B.L.Tならぬ「E.H.Tサンド」(650円)。Egg=玉子、Ham=ハム、Tomato=トマトをサンドした一番人気のメニュー

分厚いトンカツがボリューム満点の「三元豚のカツサンド」(680円)

多彩なラインナップの中でも、異彩を放っているのがカルボトーストだ。「何それ? 」と思った人も少なくないだろうが無理もない。他にはない支留比亜オリジナルのメニューなのだ。

見た目も個性的で、厚切りのトーストが楕円(だえん)形の深皿にたっぷり入ったクリームソースに浸されている。その上には、ハムやマッシュルーム、シャキシャキの玉ねぎやピーマンなどの具材がどっさり。トースト版カルボナーラが名前の由来だが、卵黄は使われていないのがご愛嬌(あいきょう)といったところか。トーストは4つ切りで分厚いが、フレッシュクリームとゴーダチーズが入ったコクのあるソースが中までしみこんでいる。

バジルとブラックペッパーがきいたソースは、比較的ゆるめでまるでスープのようだ。フォークとナイフで切り分けながら口へ運び、スプーンでソースをすすると、カルボナーラのようでもあり、フレンチトーストのようでもあるが、そのどちらとも似て非なる個性がある。とはいえ、決して風変わりではなく万人ウケする味わいで、誰もが納得・満足できる完成度の高さを誇っている。

純喫茶ならではのこだわり・気配りが光る1品

カルボトーストの誕生はおよそ20年前。「当時イタリアンの店をやっていて、腕のいいシェフを雇っていたんです。彼の作るカルボナーラを参考に、喫茶店にある材料で作れるよう改良しました」と語るのは、同グループの浅尾亮・統括マネージャーだ。「コーヒーの香りを第1に考えたい」という思いからベーコンの代わりにハムを代用しているという。

2015年6月にオープンした「支留比亜珈琲店 栄生店」(名古屋市中村区)。名鉄病院に併設され、地下鉄改札のすぐ横という珍しい立地

さらにカルボトーストの提供にあたっては、こんな気配りがある。要望があればトーストを別の皿で出すこともでき、好みの量だけソースをつけて食べられるのだ。また、「さすがに無理だろう」と思っていたテークアウトも可能(容器の持参が必要)。名鉄病院と併設の栄生店(名古屋市中村区)では器ごと病室に持ち帰ることもできるとか。対応、柔軟すぎ!

名古屋以外のエリアの店舗でも好評で、「何だろう? と興味本位でご注文されながら、最後はソースをパンで残さずぬぐって食べ切ってくださるお客さまもいらっしゃいます」と浅尾マネージャー。

コメダ珈琲のシロノワールと並ぶ、名古屋喫茶チェーンが生んだ偉大なる発明のひとつ(!?)、支留比亜のカルボトースト。いっぺん食べてみやぁ~!

※記事中の情報・価格は2016年3月取材時のもの。価格は税込(店舗によって異なる)

筆者プロフィール: 大竹敏之(おおたけとしゆき)

名古屋在住のフリーライター。雑誌、新聞、Webなど幅広い媒体で名古屋情報を発信。Webガイドサイト「オールアバウト」では名古屋ガイドを務める。名古屋メシ関連の著作を数多く出版。『名古屋の喫茶店』『名古屋の居酒屋』『名古屋メン』『続・名古屋の喫茶店』(リベラル社)は自腹リサーチをコンセプトにしてご当地ロングセラーに。10月上旬にはご当地グルメコミックエッセイ『まんぷく名古屋』(KADOKAWA、森下えみこ著)に案内人として登場。