山梨県で第2子以降の保育料無料化、その理由は?

山梨県は平成28年度から、所得税によって定められている国基準保育料額の第5階層(推定年収640万円)までにあたる子育て世帯を対象に、第2子以降(3歳未満児)の保育料を無償化する方針を固めた。今回の政策立案の背景には、県のどんな意図があるのか。担当者に聞いた。

平均世帯がすべて対象になるように

同事業は、国基準保育料額の第5階層までにあたる子育て世帯を対象に実施するもの。推定年収640万円未満の世帯が該当するとされ、議会で承認されれば平成28年度から第2子以降で3歳未満児の保育料が無料になるという(認可保育所利用者のみ)。政府も今年4月から、年収約360万円未満の世帯を対象に第2子の保育料を半額、第3子以降の保育料を無償化する方針を固めている。しかし、同県の事業では政府の補助以上に対象者を広げ、さらに第2子から無償化を進めるなど支援が手厚くなっている。

なぜこのような事業を進めようと考えたのか。事業の趣旨について、後藤斎・山梨県知事は「小さい子どもを持つ両親が、安心して預けられるのが保育の趣旨。そこに財源を充当し、社会全体で若いお父さん、お母さんの第2子以降の子育て環境の充実をしたいというのが一番の強い思いです」と語っている。

さらに対象世帯の推定年収を政府より高く設定したのにも、深い理由があった。県によれば、国の調査や同県の調査では、子どもを持つ30代夫婦共働き世帯の平均年収は約600万円と推定されているとのこと。この上限設定であれば、第2子がいる約8割の世帯が対象になるという。子育てと仕事の両立を支援するため、平均世帯がすべて対象になるようにしたいという県の思いが込められている。

「2人以上子どもが欲しい」という希望に応えたい

「第2子以降」の保育料を無償としたのも、子育て環境に対する県民の要望を色濃く反映させてのことだ。平成27年5月、50歳未満の既婚者あわせて2,518名を対象に県が行った調査によれば、夫婦にとって理想的な子どもの数は「2人」(46.4%)が最も多く、次いで「3人」(42.2%)と続いている。

一方で、「理想的な子どもの数」より「実際に持つつもりの子どもの数が少ない」と回答した人を対象に行った調査では、全体の約半数を占める理由として「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(51.4%)という回答があがっている。県の担当者は、「人口減少対策として、また子育て支援策として、2人以上子どもが欲しいという希望に応えたい」と語ってくれた。

同調査では人口確保対策のために行政が取り組むべき施策として、55.0%の人が「子育てしやすい環境づくり」をあげている。県によれば、第3子以降の有無にかかわらず、第2子から保育料が無料となる取り組みは全国で初めて。子育て世帯の要望に真摯に向き合った取り組みが他の自治体でも広がっていくことを願いたい。