12月6日にABC・テレビ朝日系で生放送された『M-1グランプリ2015』。伝説の漫才頂上決戦が5年ぶりの復活、そして敗者復活枠から第11代王者の栄冠を勝ち取ったトレンディエンジェルの快挙と、全国のお笑いファンを熱くするドラマが生まれた新生『M-1』を、オンエアにはのらなかった出演者たちの表情を交えながら振り返る。

『M-1グランプリ2015』で優勝したトレンディエンジェル(中央)

出場資格がコンビ結成10年以内から15年以内に広げられ、3472組がエントリーした今大会。11月19日の準決勝を勝ち抜いたメイプル超合金、馬鹿よ貴方は、スーパーマラドーナ、和牛、ジャルジャル、銀シャリ、ハライチ、タイムマシーン3号(以上、ネタ披露順)の8組が決勝のステージへと駒を進めた。さらに新生『M-1』には、審査員として歴代の王者9名が登場。王座を目指す後輩たちにどのような評価を下すのかも注目を集めた。

審査員たちが見せた様々な表情

会場に興奮と緊張がみなぎる中でスタートした決勝戦は、ファーストラウンドの冒頭から大波乱。結成からわずか3年でファイナリストに名を連ねた男女コンビ・メイプル超合金が審査員席のチュートリアル・徳井と「ホンマにヤバい人ですよね?」と笑わせる型破りの漫才を見せれば、続く馬鹿よ貴方はは「大丈夫?」を延々と繰り返すボケでフットボールアワー・岩尾を「『大丈夫』だけで1分ぐらい保たせるなんて…」と驚かせた。審査員席に着いてからというもの緊張をうかがわせる硬い表情を貫いていた歴代王者たちも、"やりたい放題"のスタイルでのびのびと漫才を楽しむ彼らのネタに顔を見合わせながら大笑いするなどややほぐれた様子だ。

MCの今田耕司が「ヤバいやつばっかり(笑)」と評した異色の2組の後、3組目に登場したスーパーマラドーナが正統派漫才で流れを変え、今大会初の800点台「813点」をマークして1位の座に。しかし、決勝進出は2010年の大会以来2回目となる5組目のジャルジャルに「834点」でスーパーマラドーナがトップを奪われ、3回目の決勝に意気込む7組目のハライチがボーダーラインの800点代に届かず涙をのむなど波乱の展開が続き、8組のネタが終了した時点での暫定順位は1位「ジャルジャル」、2位「銀シャリ」、3位「タイムマシーン3号」に。そんな熾烈な戦いを審査する歴代王者も真剣そのもの。終始笑みをたたえながらも鋭い眼差しで舞台を見据える中川家・礼二、前のめりの姿勢でファイナリストたちの熱演を食い入るように見つめる徳井、決勝の舞台に連続10回で出場した経験からファイナリストの思いが痛いほどわかるのか、点数を出すたびに困ったような顔を見せる笑い飯・哲夫など、バラエティー番組などでは見られない芸人たちの表情が印象的だった。

トレンディエンジェル斎藤も極限の緊張状態に

そして、いよいよ9組目、この日の昼に行われた敗者復活戦を勝ち上がったトレンディエンジェルがステージへ。CM中、会場に現れた2人に客席から大きな拍手が起こる。その応援ムードを味方につけ、持ち味の明るさと親しみやすさを遺憾なく発揮する漫才で大爆笑をもぎ取ったトレンディエンジェルは銀シャリを凌ぐ「825点」で2位の座を奪い、敗者復活枠から最終決戦で王者を争うベスト3に急浮上。決戦前にジャルジャル、銀シャリとステージに並んだトレンディエンジェルは、CMの合間にも得意の「斎藤さんだよ?」ポーズで客席の笑いを誘うなど愛嬌を振りまいていたが、時折、胸に手を当てて鼓動を抑えるようなしぐさを見せるなど、極限の緊張感が見て取れた。

優勝が決まった瞬間

そうして迎えた運命の最終決戦ラウンド。審査員による投票で9票中6票を獲得し、敗者復活枠から一気に王者に上り詰めたトレンディエンジェル。この快挙は、2007年の王者・サンドウィッチマン以来となる。受賞後の会見では「準決勝ではウケてたのに負けてしまったのが悔しくて、(酒が一滴も飲めないのに)梅酒ソーダを2杯も飲んでベロンベロンに酔っ払っいました(笑)」と敗退の屈辱に痛飲した夜を振り返った斎藤。「その悔しさをバネにがんばった」とも語り、大逆転を成し遂げた喜びを爆発させていた。

大会終了後の記者会見ではリラックスした表情を見せていた2人