最近、なんとなく「体がだるい」「やる気がでない」「性欲が低下してきた」と感じる機会が多くなってきている男性はいないだろうか。これらの症状に該当する人は「LOH症候群」、いわゆる「男性更年期」かもしれない。
今回はメンズヘルスクリニック東京の院長・小林一広医師の解説をもとに、男性の更年期に起きる心身の不調について紹介していこう。
テストステロンの減少で心身に不調
更年期と聞くと、女性ホルモンの分泌が急激に減少する女性の閉経時期をイメージする人も少なくないだろう。「ほてり」「イライラ」などが女性更年期障害の代表症状だが、性ホルモンの減少に伴うこれらの心身の不調は男性にも訪れる。
「女性は閉経が50歳前後で来て、女性ホルモンがガクンと下がるため、そういう症状が顕著に出やすいです。ただ、男性ホルモンである『テストステロン』の分泌量は徐々に減っていき、症状の出る頻度にも個人差があります」。
近年の検査機器の発展などに伴い、従来は「もう歳だから仕方ない」とされていた心身の不調が、男性ホルモンの減少による「加齢男性性腺機能低下症候群」(LOH症候群)由来の症状であることがわかったという。
「LOH症候群の患者さんは、働き盛りで多忙な40代や50代の男性に多いです。普段からエネルギッシュな人はテストステロンの量が多いため、減少してきたときにわかりやすいですが、元来量が少ない人は減少に気づきにくいですね」。
メタボやEDにもつながる
LOH症候群による不調は、肉体面と精神面に現れる。中高年男性でわかりやすく訪れる肉体面の変化の一つとしては、メタボリックシンドロームがある。
テストステロンは筋肉の成長・維持に関わってくるホルモンで、分泌量が減ると筋肉量が減少する。筋肉が減れば基礎代謝も低下し、結果として体重が増加する。30代を過ぎると、年間で筋肉量が0.5%~1.0%ほど減少するが、小林医師によると筋肉が1kg減ると1年あたりで2.5kgも脂肪が増加するという。このサイクルがいわゆる「中年太り」の元凶と言えるだろう。
また、テストステロン減少は性欲低下やED(勃起不全)にもつながる。テストステロンが減ると勃起力が衰えるのは、性的刺激を感知した神経から分泌される一酸化窒素の産生を促す役割がテストステロンにあるためだ。
精神面では「やる気がなくなった」「イライラする」などの症状が出るほか、場合によってはうつや認知症などの疾患につながる症例も。「やる気が落ちるなど、いわゆるうつ病とオーバーラップする部分もLOH症候群にあるため、うつ病として扱われているケースも多々あるはずです」と小林医師は指摘する。
心身の変化に敏感でいることが大切
このようにLOH症候群はさまざまな疾病につながる可能性があるが、その症状が身体面に来るか精神面に来るかは個人で異なる。
症状が複雑なうえ、自覚症状を感じたとしても「歳だから」の一言ですまされてしまうこともあるLOH症候群だが、適切な治療をすれば症状の改善が可能。そのためにも、日ごろから自分の心身の変化に敏感でいるようにしよう。
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記事監修: 小林一広(こばやし かずひろ)
医療法人社団ウェルエイジング メンズヘルスクリニック東京院長。精神保健指定医、日本臨床精神神経薬理学会専門医、特定非営利活動法人アンチエイジングネットワーク理事、特定非営利活動法人フューチャー・メディカル・ラボラトリー理事。北里大学医学部卒業後、同大学病院でメンタルヘルスケア中心の医療に従事。1999年新宿に城西クリニックを開院。精神科医として皮膚科医、形成外科医と共に心身両面からの頭髪治療に力を注ぐ。2014年東京・丸の内に移転し、メンズヘルスクリニック東京と名称を変え、男性の外見と内面を医療によってサポートするクリニックを立ちあげる。