峰製作所は、場所をとらない新設計のノーズ可動クロッシングをアピール。既存の分岐器と同じスペースで設置できるところがミソ

軌道・信号・通信 - 鉄道分野の"隠れた大物"も

軌道関連設備のメーカーも、今回の鉄道技術展で目立っていた分野のひとつだ。

たとえば、分岐器である。「分岐器なんて、みんな同じ」ではない。「従来よりも小型で、既存のノーズ固定クロッシングと同じグラスのスペースで済むノーズ可動クロッシング」の出展もあった。ノーズ固定式と比べると、分岐器通過速度の向上を期待できる。その他、分岐器の可動部(トングレール)を動作させる転轍機を出展したメーカーもあった。故障すれば輸送障害に直結するから、高い信頼性が求められる大事な機器である。

枕木などにレールを固定する締結装置も、ただ固定するのではなく、微妙な位置の調整を容易にできるような工夫が求められる。だからメーカーは工夫を凝らした新製品を出展してアピールする。

信号関連のメーカーでは、タレスがCBTC(Communications-Based Train Control)装置「Seltrac」と、乗務員訓練用のシミュレータについて出展していた。じつはタレスという会社、鉄道用の信号機器では著名な存在で、さらに出改札機器も手がけている。日本では防衛電子機器のほうが知名度が高そうだが、鉄道分野でも"隠れた大物"である。

タレスは「Seltrac」の日本語版ブローシャまで用意していた

JR東日本が開発したATACS(Advanced Train Administration and Communications System)もそうだが、この手の無線ベースの信号保安システムの主眼は、地上側に複雑な信号設備を置かなくても済むようにすることにある。それが経済性と安全・安定輸送の両立につながっている。

駅設備とサプライヤー - 軽量型の可動式ホーム柵が登場

駅設備では、自動改札機のオムロンがよく知られている。しかし、出改札機器だけが駅設備ではない。乗務員向けの信号・標識・表示器の類や、旅客と関わりが深いところでは発車標や各種サイン類といったものもある。

「トレインシミュレータ」でおなじみの音楽館は、扉の部分にパイプを使用する軽量型の可動式ホーム柵を出展していた。軽く作れれば、設置の際にホームの構造を補強する手間を軽減、あるいは解消できるという利点がある。

音楽館の可動式ホーム柵。従来のものより軽く作れれば、既存線への設置を容易にする効果を期待できる。それは人身事故の防止、ひいては輸送障害の抑制につながる

新陽社の発車標。形はJR東日本の新幹線で使われている現行製品と似ているが、LEDがフルカラーに変わっていた。発車標にとって、見やすさは重要な要素となる

車両に搭載する機器や各種部品を手がけるサプライヤーの出展も多い。大物ではJR東日本で採用実績があるクノールブレムゼ社製の空気圧縮機、日立オートモーティブシステムズやカヤバのショックアブソーバー、細かいところでは電気配線を構成するためのハーネスやコネクタ、さらには車内に設置するゴミ箱などの蓋を手がけるメーカーの出展もあった。目立たないが、こういう細々したパーツまでそろわなければ、車両はできない。

技術開発のための試験、あるいは検修の際に使用する計測機器の出展がいろいろあるところは、航空関連の展示会とも共通する。ますます目立たない分野だが、ちゃんとデータを取らなければ開発も検修もできない。

E235系で使われる、クノールブレムゼのオイルフリー型空気圧縮機

ドイツ・中国など海外勢の売込みも

すでに取り上げたクノールブレムゼやタレスだけでなく、VVVFインバータでおなじみシーメンスをはじめとするドイツ勢も、比較的目立つ場所にブースを構え、自社製品をアピールしていた。他に中国企業の出展もあったのだが、場所は会場の端のほうでブースの規模も小さく、あまり注目はされていなかったようである。そもそも中国勢の場合、日本市場への参入に際して何を武器にするか、という問題はありそうだ。

とはいえ、案外と海外勢の製品が使われている事例はあるので、そういう業界動向を見たいときにも、このようなイベントは重要である。趣味的な面白さや派手さには欠けるかもしれないが、実務に携わる人にとって、こういう内容の展示会のほうが重要なのだ。