表情ジワに作用するボトックス注射、その影響は?

最近では、シワを伸ばす作用のある"アンチエイジング"メニューとして、有名人だけでなく一般の人にも浸透しつつある「ボトックス注射」。人気施術である一方で、ボトックス注射の打ちすぎによって表情がなくなる、などといった施術後の影響を不安視する声もあがっている。

今回は、ボトックス注射が本当に表情に影響するのかについて、湘南美容外科クリニックの福澤見菜子医師にお聞きした。

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表情ジワを目立たなくする「ボトックス注射」

ボトックス注射にはさまざまな作用がありますが、30代以上の女性を中心に、表情ジワを伸ばすために顔に打つ方が多いです。もちろん男性で受けている方もいて、例えば会社経営者など社会的地位が高い方に多い傾向があります。やはり、眉間などに深くシワが刻まれていると顔の印象も険しくなってしまいますから、外見のイメージが大切な職業の人は特にシワを改善したいと思うのではないでしょうか。

ボトックスは、ボツリヌス菌から抽出されたタンパク質の一種で、表情筋のあるところに打つことで筋肉の収縮を抑制し、表情ジワをできにくくします。打つ箇所としては、眉間やおでこ、鼻根部、目尻、鼻の下、ほうれい線のくぼみの部分など。このほか、打つ箇所・部位に応じて、エラ張りや多汗症の改善や脚やせ効果なども期待できます。

効果には個人差がありますが、4カ月~半年ほど効果が持続するのが一般的。若い人の場合は筋力や回復力が強いため、比較的、効果が短いかもしれません。

ボトックス注射を打つと表情がなくなるのはホント?

一部には「ボトックス注射を打つと表情がなくなる」という声もあがっているようですが、誤解していただきたくないのは、ボトックス注射は適切な打ち方を守れば一生付き合っていける施術だということです。つまり、医師の指示に従い、打つ頻度や量などに注意して行うぶんには特に問題はないと思います。

一方で、顔の多くの箇所に打ったり、打つ量も多かったりすると、多少の違和感を覚えるかもしれません。そうならないためには、信頼できる医師を見つけることが一番。これは美容施術全般に言えることですが、人それぞれ作用や感じ方は異なるので、少しでも不安に思う点があったら、医師に相談してみましょう。

例えば、おでこや目尻は日常でそれほど動かさないので、ボトックス注射に向いている箇所と言えます。逆に口周りのようによく動かす箇所は、動きづらくなってしまっては困りますので、肌のくぼみを盛り上げる「ヒアルロン酸注入」のほうが適している場合も。また、注射を打たなければ時間とともに元の肌に戻りますので、一時的に施術をお休みするのも選択肢の1つです。医師によく相談して、打つ箇所と量を決めるようにしましょう。

シワがなくなることによる別の影響

医師の立場から言うと、ボトックス注射を受けている人を見ていてときどき心配になるのは、メンタル面への影響です。ボトックスを打つと、シワがピンと伸びて気にならなくなります。そうなると今度は1つのシワも許せなくなり、結果的に打ちすぎてしまう人もいるようです。

ボトックス注射は、美しくになるための手段です。細かなシワのひとつひとつに敏感になってしまうと、美容の大敵ともいわれるストレスを招きかねません。ボトックス注射のような美容施術を利用していてもしていなくても、今のご自分の美しさに自信を持って、おおらかな気持ちで年を重ねていけるとよいですね。

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いつまでも若わかしい肌でいたいと思う人にとって、ボトックス注射は効果を実感しやすい施術の1つだ。ただ、シワをなくすことにこだわりすぎると、十分キレイなのにも関わらず、ストレスを抱えてしまう懸念もある。本来であれば、外見に磨きがかかると心も明るく元気になるものだ。ボトックス注射に挑戦する場合は、上手に付き合いながら、笑顔で毎日を過ごせるとよいだろう。

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記事監修: 福澤見菜子(ふくざわ・みなこ)

2003年度ミス慶應グランプリで、歴代のミスの中でも唯一「専門医」の資格を持つ医師。

2006年に慶應義塾大学医学部を卒業後、同大学病院、東京大学医学部附属病院 形成外科・美容外科、大塚美容形成外科 千葉院院長などを経て、2013年より湘南美容外科クリニックに勤務。そのほか、日本形成外科学会 専門医、日本美容外科学会(JSAPS) 正会員、日本抗加齢医学会 正会員、埼玉医科大学総合医療センター 形成外科・美容外科 非常勤助教など。

医師として、正しい美容医療の普及と実現に貢献することをライフワークとし、オフィシャルサイトでも情報を発信している。