UR都市機構は10月20日、「URが目指すミクストコミュニティ形成のモデル的取組みの開始」に関する説明会・内覧会を埼玉県三郷市のみさと団地で開催した。説明会では、同機構が高齢者に優しい団地づくりを目指し整備を進めている「地域医療福祉拠点」について報告があったほか、みさと団地の取り組みが紹介された。
高齢者に優しい「地域医療福祉拠点」
「地域医療福祉拠点」とは、高齢者向きの居住空間や福祉サービスの整備などを通して、最期まで住み続けることができる環境を整えた団地のこと。若者や子育て世帯との交流も持てるような地域づくりを目指し現在全国の23団地で取り組みが始まっていて平成32年度までに100団地での拠点形成を目標としている 。
背景には団地の高齢化がある。同機構の賃貸住宅では高齢者(65歳以上)のいる世帯が約39%、平均世帯主年齢が56.8歳となっていて、いずれも全国平均を上回っているのだ。
説明にあたった同機構の瀬良智機理事は、「身体活動や社会活動によって高齢者の元気は維持できるといわれている。ハード面の整備だけでなく、イベントの実施などを通じたソフト面の取り組みも進めたい」と語った。
モデル地区「みさと団地」の取り組み
このうち埼玉県三郷市の「みさと団地」で始まったのは、高齢者向き住宅「健康寿命サポート住宅」の導入だ。内覧会では、10月30日から募集が始まる部屋のモデルルームが公開された。
注目すべきは、浴室に「ヒーター」が設置されていること。これは、部屋の移動による急激な温度変化によって脳卒中などの健康被害を起こす「ヒートショック」の防止を目的としている。さらに、バスタブの高さを低くしてまたぎやすくし、安心して入浴できるよう手すりも3カ所取り付けられている。
また、トイレに関してもさまざまな工夫がある。出入り口の段差をできるだけ解消し、つまずきを防止。便座からの立ち上がりを補助するために、2カ所の手すりも設置した。
そのほか、モニター付きインターホンが付いていたり、段差が認識できるよう玄関と床の色をくっきりと変えたりするなど、きめ細やかな心遣いが感じられる設備が多く取り入れられている。
同団地では既に、訪問介護の事業所や在宅診療の診療所、地域包括支援センターなどの整備が敷地内で進んでいて、さまざまな福祉サービスを受けることが可能。今年から、住民が参加できる落語や体操を使った健康増進プログラムも始まり、今後も定期的に開催していく予定だ。
幅広い世代が交流できる場所に
さらに、同団地では多世代交流のための環境整備も行われている。家具販売大手の「イケア・ジャパン」とコラボレーションした賃貸住宅を提供したり、子育て支援を行っているNPO法人事務所を呼び込んだりして、若者や子育て家庭を誘致。住民が集まれる集会所も新しくした。今後は、コミュニティーの活動拠点を新たに整備して、子どもから高齢者までが交流できるイベントの実施も検討しているという。
居住空間の整備を中心として、幅広い層を呼び込もうと考えている同機構。地域の結びつきが弱くなっているといわれている昨今、多世代の交流や支え合いを実現するためにはソフト面での努力が欠かせないだろう。この取り組みが全国でどのように広がっていくのか注目される。