頭が痛いときの頭痛薬が実は危険を招いている?

定期的に頭がズキズキ痛む片頭痛に、毎回悩まされている人も少なくないだろう。日本頭痛学会によると、片頭痛の年間有病率は8.4%と報告されており、日本の人口を1億3,000万人とすると実に1,000万人以上の日本人が頭痛持ちという計算になる。

ところが、実は痛みを治めるための頭痛薬が片頭痛を招いているケースもあるのだ。本稿では、高島平中央総合病院の福島崇夫医師の解説をもとに、片頭痛を悪化させる「薬物乱用頭痛」を紹介する。

片頭痛の特徴

ズキンズキンする拍動性の痛みが頭の片側(時には両側)に起こる片頭痛は、頭を振るだけで痛みが響く。ひどい症状だと嘔吐することもある。拍動性の痛みは血管の拡張が原因と考えられているが、くわしいメカニズムはわかっていない。

一般的な発生頻度は月に1、2回ほどで、痛みは数時間~3日間ほど続くケースがある。家族内で発生するケースもよく見られ、「片頭痛が家族内で発生しているケースが全体の3~4割ある」とするデータもあると福島医師は話す。

薬の"乱用"がさらなる頭痛を呼ぶ

片頭痛には痛みを招く前兆があることもよく知られている。

「『生あくびが出る』『目の前がチカチカする』『視界にギザギザしたものが見える』などがそうです。その前兆の後しばらくすると、血管が拡張して拍動性のズキズキした痛みが襲ってきます」。

片頭痛に慣れている人は、何かしらの前兆を感じるとそのタイミングで薬を飲んでしまいがちだが、これはよくないと福島医師は指摘する。

「片頭痛の薬には『トリプタン製剤』と呼ばれるものがありますが、前兆のタイミングで飲んでしまってはいけません。血管が拡張したのを収縮させるために使用するのに、収縮している段階で飲んでしまうと薬が効かなくなる事態につながりかねません」。

トリプタン製剤の他に「鎮痛剤」が発作期の薬として用いられる。一方で、抗うつ薬として知られる「トリプタノール」、抗てんかん薬の「バルプロ酸」などが片頭痛の予防薬として使用される。これらは処方薬だが、市販薬でもある程度の痛みはコントロールできる。

ただ、薬の"乱用"はさらなる悲劇を招くこともある。例えば、市販薬を大量に服用すると、逆に頭痛の程度や頻度がひどくなる「薬物乱用頭痛」に陥る可能性もある。人によって個人差があるが、「月に15日以上頭痛がある」「頭痛薬を月に10日以上飲んでいる」などの症状が当てはまる人は、薬物乱用頭痛の可能性がある。

また、過度の服用で薬の効能が薄まり、頭が割れるほどの本当にひどい頭痛のときに薬が効かなくなってしまうケースもある。くれぐれも不要な服用は避けるようにしよう。

※写真と本文は関係ありません

記事監修: 福島崇夫(ふくしま たかお)

日本大学医学部・同大学院卒業、医学博士。日本脳神経外科学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医。大学卒業後、日本大学医学部附属板橋病院、社会保険横浜中央病院や厚生連相模原協同病院などに勤務。2014年より高島平中央総合病院の脳神経外科部長を務める。