小さい子どもがいる比較的若い世代は、万一のときの経済的リスクが最も高い時期。子育てや将来の教育費、マイホーム購入など出て行くお金が多いのに収入は十分とはいえないこの時期に、家計を支えている人に万一のことがあると残された家族はどうなるでしょう。いざというときにも経済的に困らないように備えておく生命保険は、家族が増えたときには、その状況にあった保障を確保できるよう上手に見直しをしていきましょう。

貯蓄と生活費で精一杯で保険に手が回らないから見直しは後でもいい?

保険は自分に万一のことがあったときに、残された家族が安心して生活できるために加入するもの。ですから、万一のことがあってもその後も確実に十分な収入が確保されていたり、家族の生活に支障がないくらい貯蓄があるのであれば、保険に加入する必要はありません。

でも、実際には何十年もの生活費に相当するほどの貯蓄がある人は、そう多くはありません。ましてや子育て世代ならなおさらです。貯蓄や収入に余裕がないからこそ、しっかりと保険で万が一に備えなければならないのです。

家計に余裕がないのに、その中から掛け捨ての保険料を払うのはもったいないと思うかもしれませんが、家族を守るための必要経費と割り切って、必要な分だけしっかり保障を確保しましょう。

子どもが生まれたら保険料負担は増やさないとダメなの?

子ども1人あたりの教育費はすべて公立に通ったとしても約800万円ものお金がかかります(文部科学省/「こどもの学習費調査」平成24年度)。中高大のいずれかから私立に通うことになれば、1,000万円を超えるのは確実です。日々の生活費自体も子どもが増えれば新たな子育て費用が必要となり、子どもの成長とともに食費や通信費などを含めた基本生活費も増えていきます。

子どもが生まれるということは、これまでよりもお金がかかるということですから、家計の収入を支える人に万一のことがあったときに何の手立てもされてなければ、子どもの将来も阻むことになりかねません。

ただし、公的な遺族年金も子どもがいる家庭では保障が厚くなっています。

会社に勤める人などが加入している厚生年金では子どもの有無にかかわらず厚生年金加入者である夫に万一のことがあった場合、その配偶者に遺族厚生年金が支給されます。一方、国民年金からの遺族基礎年金は遺族が妻(配偶者)だけの場合は支給されません。つまり自営業者などの場合には、子どもがいなければ基本的に遺族年金自体給付されません。

しかし、子どもがいる家庭なら子どもが18歳になるまでの間は遺族基礎年金が支給され、子ども1人の家庭で年額100万4,600円、子どもが2人なら122万9,100円もらえます。万一の時には、この遺族年金を生活費の一部として当てることができれば、子どもが生まれたことによる保障額の見直しは、1人当たり1,000万~1,500万円程度の上乗せで必要な保障をカバーすることが可能です。

上手な見直し方法は?

仮に30歳男性で1,000万円の死亡保障を10年の定期保険で加入する場合に月払い保険料はネット生保などを利用すれば月々1,500円弱程度で確保できます。子どもが独立するまでの期間は大学卒業まで順調に進んだ場合で22年。10年定期だと途中で更新が必要ですが、仮に残りの期間は必要な保障額も減っています。仮に800万円の保障を確保すれば大丈夫なのであれば、10年後に更新するときに保障額を減額して更新することで、保険料のアップを抑えながら必要な保障額を確保することが可能となります。

大学の進学資金を貯めながら万一にも備えたいということなら、学資保険で大学の学費を準備する方法も。学資保険は契約者である親に万一のことがあったときにはそれ以後の保険料が免除されるので、いざというときには保険料負担なしで学費の準備ができます。

ただし、学資保険の場合は貯蓄性の保険という性格上、保険料は高負担になります。早めに教育資金の積立を始めるつもりの家庭には向きますが、そのせいで保障が中途半端にならないよう、足りない分は定期保険や収入保障保険などでカバーしましょう。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 堀内玲子

証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て1993年に独立。1996年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。