11歳の少女ライリーの頭の中の"感情たち"を描いたピクサー長編アニメーション20周年記念作品『インサイド・ヘッド』(公開中)で、世界各国に対応するため本編映像に細やかな変更をほどこしていることがわかる場面写真がこのほど公開され、そのほかの変更点もピート・ドクター監督によって明かされた。

ライリーの父親の頭の中(上:ホッケー 下:サッカー)

以前、本作において日本だけアニメーションを変更していたという事実を紹介した記事でも触れたが、ピクサーのこだわりの中には、映画を"自分の物語"として楽しんでほしいという思いがある。そのため、映画が公開されるそれぞれの地域にあわせて、さまざまな変更が行われており、鑑賞者は違和感なく映画の物語に入り込むことができる。

本作での最初の変更点は、"感情たち"の名前。各国それぞれの感情を表す言葉をつけ、より"自分の物語"として感じてほしいというフィルムメーカーの要望で日本を含む世界42言語の感情名が誕生した。日本でも、"ヨロコビ""カナシミ"など、キャラクター名としては違和感を覚える名前も、自分の中にもいる"感情たち"として浸透させることに成功させた。

その考えはキャラクター名だけではない。このたび公開されたのは、劇中で描かれる家族の食卓シーンで、ライリーの父親が頭のなかでスポーツ中継のことを考えている時の場面画像。同じ頭のなかでも一方はホッケーで、もう一方はサッカーになっている。ピート・ドクター監督は「最初に作ったホッケーに加え、サッカーバージョンも作って各国に提案しました。多くの国でサッカー人気は絶大ですから」とその狙いを説明し、「結果的に、サッカー人気の高い国でも、ライリーの家族がミネソタ州出身という設定からホッケーファンであることは自然という考えのもと、あえてホッケーバージョンを選択する国もありました」と語る。

大掛かりな作業が必要となるアニメーションの変更だが、こだわりは細部にまで及ぶ。監督は「看板や標識、その他の文字要素の変換は技術的に容易なため、最終的には28の絵柄を45の場面にわたり変更しました」とも明かす。さらに、「"イマジネーション・ランド"や"夢の製作スタジオ"などの看板は文字が立体形だったのですが、すべて各国の言語に作り変えました」とコメント。世界の誰にとっても、映画を最適な形で届けるため、妥協を許さない姿勢をかいま見ることができる。

そのほか、劇中での大きな変更がみられるのは、"ビンボン"が、"ヨロコビ"と"カナシミ"に横書きの言葉を1文字ずつ指さしながら「近道だ」というシーン。日本やアメリカでは左から右に文字を読むため、"ビンボン"の指も同じく左から右へ移動するが、右から左に文字を読む言語にも対応するため、別パターンのアニメーションも作成した。


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