あいおいニッセイ同和損保が今年4月に販売を開始した自動車保険「つながる自動車保険」は、トヨタ自動車のカーナビに搭載されている「T-connect」というテレマティクス(※)サービスと連動し、運転する顧客と同社が24時間365日"つながる"ことで、「安心」「安全」「お得」を提供する画期的な商品となっている。そこで今回は、同商品の開発経緯などについて、あいおいニッセイ同和損保 商品企画部 企画グループ担当課長の梅田傑氏にお話をお伺いした。

※テレマティクスとは、「テレコミュニケーション」と「インフォマティクス」を組み合わせた造語。カーナビやGPSなどの車載機と移動体通信システムを利用して、さまざまな情報やサービスを提供する仕組みをさす

「つながる自動車保険」は、2004年4月に当時のトヨタ自動車のテレマティクスサービス「G-BOOK」に基づいた自動車保険として発売された「PAYD」を発展させた商品。「つながる自動車保険」では、「PAYD」でも提供してきた、"走った分だけ"の合理的でムダがない保険料の実現に加え、「T-connectナビ」やスマホからワンタッチで保険会社に事故通知できることや、毎月契約者の車両運行情報を分析した安全運転アドバイスのレポートがアプリを通じて届くなど、24時間365日契約者の安全運転をサポートしている。

商品企画部 企画グループ担当課長 梅田傑氏

"事故を予防する保険"、どうして生まれた?

――テレマティクス自動車保険を御社で導入するきっかけになった背景はどういったものだったのでしょうか?

欧米ではもともと、自動車保険の保険料の水準が日本に比べてかなり高かったんです。といいますのも、日本では事故が無く更新していくと、最大約60%割引になる「等級制度」があるので、保険料の水準が低くなりますが、欧米ではそうした仕組みがないんです。また、例えばイギリスだと、若年層が初めて自動車を購入するとなると、保険料が年間数十万円もかかってしまうケースもあり、"車を買うだけでもお金がかかるのに、保険にはかけられない"となると、多くの無保険車が横行し、事故を起こして被害者が出ても損害賠償金を得られないという社会問題になっていました。

――なるほど。保険料が高くて若い人が自動車保険に入れなかったんですね。

そこで2000年代の前半から欧米ででてきたのが、テレマティクス保険です。テレマティクス技術を活用し、契約車と保険会社が繋がることで、ドライバーの運転の状況を把握できることから、スピードの出しすぎなどの危険運転を事前に防止できたり、保険料の低減に走行距離分に応じて保険料が決まる仕組みを実現したりすることができるようになったのです。当社も当時トヨタ自動車が展開していたテレマティクスサービス「G-BOOK」と連動して「PAYD」を開発し、「走行距離」をテレマティクス技術で自動的に取得し、「1km単位で走った分だけ保険料を払う自動車保険」を日本で初めて発売したのです。

――「PAYD」が「つながる自動車保険」に発展した経緯というのはどういうものだったのでしょうか?

「PAYD」が発売された2004年ごろの日本では、保険の仕組みが先進的すぎて社会の関心がまだあまり高まらず、高級車を中心に限られた件数しか売れませんでした。ただ、近年、国土交通省が日本の中でもテレマティクスの技術を活用した保険で安全運転を促進し、重大交通事故を無くていくことを提唱し始めたことから、社会的関心が高まってきたという背景があります。

また、2014年8月にトヨタ自動車が、クルマの「走る」・「曲がる」・「止まる」に加えた第4の機能「つながる」を担うプラットフォームとして、「T-Connect」の販売を開始され、この最先端のテレマティクス技術と連動することで「つながる自動車保険」に発展いたしました。

――なるほど。ようやく時代が追いついてきたということでしょうか。

そうですね。「PAYD」では、つながることで走った分だけ保険料がお得ということを前面に出していたのですが、保険会社としては安価ということだけでなく、「安心」や「安全」も体感してもらえるものを届けたいということで、「つながる自動車保険」としてリニューアルしました。

「安心・安全なクルマ社会」への貢献を目指し、保険会社の機能として「万が一の事故の際に安心」をお届けするのは当然のこと、「車両連携情報を活用した予防安全」にも力を入れて、保険商品で「重大死傷事故の撲滅」という社会的使命に貢献するとともに、事故を起こさなかった方々にも、加入して良かったと思っていただける自動車保険をイメージして開発いたしました。

"つながる"ことで、より安心・安全・お得に

――では、「つながる自動車保険」は、具体的にはどういった商品・サービスなのかお聞きかせください。

「つながる自動車保険」のポイントは、「つながることによる安心・安全・お得」の3つになります。「安心」の面では、例えば事故を起こしたときに、車のナビやスマホからワンタッチするだけで、当社の事故受付デスクとつながることができます。休日や深夜でも自動応答ではなく、24時間365日専任のオペレーターに直接つながりますので、万一の事故の際にもご安心いただけます。

車内の「T-connect」

「安全」では、前月の車両運行情報に応じた「安全運転アドバイス」を、毎月専用ナビアプリ、専用スマホアプリを通じて提供します。提供する内容は、前月の運転が安全運転だったかどうかの五段階評価や、より安全に運転するための季節や運転性向に応じたアドバイスなどとなっており、カーナビ「T-Connect」を通じて取得した運転時間帯、エンジン始動から停止までの走行距離・時間、燃費などの情報と、私どもが持っている保険実績データに基づいて分析しております。危険な運転をする人には、より安全な運転を心掛けてもらう働きかけになりますし、運転に自信がある方に対しても、自分の運転を客観的に見つめ直し、安全運転を意識していただくきっかけになればと思っております。

「安全運転アドバイス」

「お得」に関しては、実際の走行距離を1km単位で保険料に反映させており、本当の意味で「走った分だけ」の合理的でムダがない保険料となっております。他社でも、走行距離を保険料に反映させている商品がありますが、お客様の年間予定走行距離の自己申告制なんです。例えば、「私は年間3000km走ります」など大まかな区分になっています。

これに対し、「つながる自動車保険」は、トヨタ自動車のカーナビ(T-Connect)から毎日1km単位の走行距離の情報が自動送信されるので、自己申告をする必要もないですし、ムダが無く合理的な仕組みが実現できるんです。

――なるほど。IT技術をかなり駆使されているんですね。

「つながる自動車保険」のサービスは、スマートフォンアプリとT-Connectナビ用の専用アプリの2つを使って提供していますので、車に乗っている時も、車を降りた後もご利用いただくことが可能です。

「T-Connect」上のアプリ

運転初心者や高齢者にも安心なドライブ社会に

――「つながる自動車保険」は、どういう人にお勧めですか?

免許取り立てのお子さんをお持ちの親御さんには嬉しいサービスだと思います。20代は統計的にも事故が多いので、自分の子供が普段どんな運転をしているのかが分かるのは大きなメリットです。危険な運転をしていたら、「ちゃんと運転しなさい」ということも言えるんです(笑)。他にも、運転に自信が無い方や高齢者の方が、万一事故を起こした場合でも、車のナビやスマホから直接当社の事故受付デスクの専任オペレーターにつながるので安心されるかと思います。

――実際に使用されている方の反響はいかがですか?

これまでにない「安心」「安全」のサービスには、大変興味を持って頂いています。また走行距離に応じて、1km単位で保険料を算出するところに、興味を持って保険に入るお客様も多くなっています。

――そうなんですね。最後に、今後の加入者目標を教えて下さい

2014年8月以降発売のトヨタ自動車の「ESPO車」(※)が対象で、「T-Connect」の対象ナビを装着していることが加入の条件となります。「つながる自動車保険」は、2015年4月の発売から1年間で、1万台程度を目標としています。今後対応車種も増える予定ですので、トヨタ自動車の販売計画とも連動して当社も裾野を広げていく予定となっています。

※ 「ESPO(エスポ)」とは「ECO PASSPORT」の略語で、エコドライブの運転結果が点数化されることで、エコドライブをサポートするトヨタメディアサービス株式会社が提供するサービスのこと。(ハイブリッド車やレクサス車が「つながる自動車保険」の加入対象となっている)

――本日はありがとうございました。

ありがとうございました。