各作品のひと言コメントと採点(3点満点)

『ようこそわが家へ』 月曜21時~ フジ系

出演者:相葉雅紀、沢尻エリカ、有村架純ほか
寸評:ストーカーと企業不正のダブルミステリーで興味を引きつけ、シリアスになりすぎない演出のさじ加減も良好。ただ初登場の人物を黒幕にした最終回はアンフェアとしか言えない。犯人が小物すぎたため、ミステリー最大の魅力であるカタルシスが味わえなかった。終わってみればあおりの演出が目立ち、物語は薄味。原作通り父の会社問題メインで良かった気がする。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『LOVE理論』 月曜23時58分~ テレビ東京系

出演者:大野拓朗、片岡愛之助、清野菜名ほか
寸評:実用書をドラマに採用し、「ちょっと笑って、感動して、タメになる」というコンセプトを貫いた。LOVE理論をベースに組み立てているため、ストーリーは極めて不自然なのだが、濃いキャラたちとエロで退屈させず。バラエティ班の演出家たちが腕を見せつける格好に。大野のヘタレ、愛之助のキレ演技は説得力十分で、別のドラマでも見てみたいクオリティ。
採点:【脚本☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『戦う! 書店ガール』 火曜22時~ フジテレビ系

出演者:渡辺麻友、稲森いずみ、千葉雄大ほか
寸評:「書店員のお仕事ドラマ」というせっかくのテーマを掘り下げなかったことが疑問。恋愛、友情、足を引っ張る悪役などのシーンを連発させ、自ら「アイドルドラマ」と言われやすい状況を作ってしまった。渡辺は稲森についていこうと奮闘していたが、並び立てるのはさすがに気の毒。何より『ファーストクラス』を手がけた渡辺千穂の脚本が不発だったのは残念。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

『マザー・ゲーム ~彼女たちの階級~』 火曜22時~ TBS系

出演者:木村文乃、長谷川京子、檀れいほか
寸評:借金、夫の暴力、引きこもり、売春未遂など、母親たちの問題はどれもステレオタイプで、最後まで新たな発見はなし。それらを解決するべくヒロインのセリフが冗長的で目立たず、疑問が残るシーンも目立った。救いとなったのは、子役たちのキュートな演技。母親同士のバトルを描かないのなら、子役のほのぼのシーンをもっとフィーチャーしてもよかったのでは。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

『Dr.倫太郎』 水曜22時~ 日本テレビ系

出演者:堺雅人、蒼井優、吉瀬美智子ほか
寸評:静寂とアンニュイなトーンは、クオリティの高さを感じる反面、見る人の熱を奪ってしまう諸刃の剣。トレンドを無視したこだわりの演出には好感が持てるが、最後まで倫太郎の診察スタイルがつかみ切れず、目に見える効果も少ないため、消化不良さを感じさせた。堺と小日向文世の含みある佇まい、蒼井と高畑淳子の心をえぐるような振る舞いは、さすがひと言。
【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『心がポキッとね』 水曜22時~ フジテレビ系

出演者:阿部サダヲ、藤木直人、山口智子ほか
寸評:心を病み、自分も人も傷つけてしまった4人の会話は、序盤こそ心地よい空回りだったが、あまりにも変化に欠けた。各話のテーマも、カップルの進展具合も希薄で、ドラマらしい残り15分の盛り上がりもなし。残念なキャラばかり集めたため、人間関係が渋滞していた印象もある。設定からセリフ、キャスティングまで果敢な挑戦だったが、難易度が高かったのでは。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

『京都人情捜査ファイル』 木曜20時~ テレビ朝日系

出演者:高橋克典、松下由樹、松平健ほか
寸評:同枠らしいシンプルな事件と謎解き、てんこ盛りの人情、勧善懲悪のクライマックスは安定感十分で、着実に固定ファンを楽しませた。気になったのは、被害者支援室メンバーの武器が女やサイバーなど安易なものだったことと、ボスに松平を据えて時代劇のテイストを高めすぎたこと。視聴率は振るわなかったものの、たった6話であっさり終えてしまったのは疑問。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

『かぶき者 慶次』 木曜20時~ NHK

出演者:藤竜也、中村蒼、西内まりやほか
寸評:藤がカッコよくかつ飄々と慶次を好演。最終回で家康と対峙したシーンは“漢”同士の迫力があり、時折見せるキュートな表情も魅力的だった。主人公がベテランであるにも関わらず、さわやかさなトーンでまとめ、新解釈を加えたいかにも現代版の時代劇。妻や娘が慶次を上回るかぶき者であることなど、同枠らしく当時の人物をリスペクトした描写が多かった。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『ヤメゴク ~ヤクザやめて頂きます~』 木曜21時~ TBS系

出演者:大島優子、北村一輝、遠藤憲一ほか
寸評:ダイナミックな映像、小気味いいテンポ、遊び心ある小ネタなど、随所にこれまで通りの堤幸彦監督らしい演出が見られた。ただ、物語の軸となる“足抜け”のシーンがそれほど盛り上がらず、そもそもテーマとして弱く無理があった印象が拭いされず……。大島以外の女優も見せ場が多く、実は男性を盛り立て役に回した女性向けドラマ。終盤の勝地涼は圧巻だった。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『アイムホーム』 木曜21時~ テレビ朝日系

出演者:木村拓哉、上戸彩、西田敏行ほか
寸評:家族と企業のバランスが良く、少しずつ明らかになるミステリーは連ドラの醍醐味。「キムタクが普通の人を演じている」と話題になったが、実際はモテて仕事も料理もできる万能男で、まだまだ生活感に欠ける。ただ、もっと夫や父親の要素が見たかったとはいえ、新境地を開いたのは間違いない。仮面が取れるシーンやラストの大団円も含め、視聴者の期待に応えた。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆☆ 総合☆☆☆】

『医師たちの恋愛事情』 木曜22時~ フジテレビ系

出演者:斎藤工、石田ゆり子、相武紗季ほか
寸評:3組の恋愛はハッピーエンド。ただの恋愛モノならそれでOKだが、医療を絡めた意味は最後まで薄かった。気になったのは、悩みの描写が浅かったこと。そこを掘り下げなければ2人の恋を応援しようという気持ちは高まらない。サービス精神旺盛な斎藤らしく、全ての要望に応えるようなセリフや仕草を連発。ただ、自然な演技をしづらいムードなのは気の毒だ。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

『恋愛時代』 木曜23時59分~ 日本テレビ系

出演者:比嘉愛未、満島真之介、佐藤隆太ほか
寸評:最後までイライラ、ハラハラ。もどかしい展開の連続は90年代の恋愛ドラマそのもので、制作陣の意図がうかがえた。ゆったりとしたテンポで、登場人物全員を大切に描いていたのも好印象。優しい人々に包まれてのハッピーエンドは、やたら悪人を作りたがる風潮とは真逆のベクトルだった。せっかちな若者には難しそうだが、深夜帯だけではもったいない作品。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】

『三匹のおっさん2 ~正義の味方、ふたたび!!~』 金曜20時~ テレビ東京系

出演者:北大路欣也、泉谷しげる、志賀廣太郎ほか
寸評:第2弾も悪者成敗の立ち回り、三匹が口ずさむ懐メロ、親子三世代の心の声などは健在で、「大事件ではなく、町の問題を解決する」というスタンスはハッキリ。ほのぼのとスッキリで埋め尽くされた安定の予定調和は、金曜の夜にピッタリだが、原作が尽きたため続編は微妙で、完全オリジナル版が期待される。祐希と早苗のキスを実現させるサービスもきっちり。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『アルジャーノンに花束を』 金曜22時~ TBS系

出演者:山下智久、栗山千明、窪田正孝ほか
寸評:山下の演技にかかる比重の大きい作品だが、起伏の激しい役を演じ切った。男女の恋より、男同士の友情を選んだラストはさわやかさで……と言いたいところだが、女性の描き方が画一的で、ある意味これが野島伸司らしさかとも。残念だったのは、結末を前提に組み立てられたような終盤のストーリー。制作側の都合で進む展開が続き、キャラの魅力がやや失われた。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『天使と悪魔-未解決事件匿名交渉課』 金曜23時15分~ テレビ朝日系

出演者:剛力彩芽、渡部篤郎、宇崎竜童ほか
寸評:司法取引のシーンは緊迫感があり、その危うさを提示した最終回も見応えたっぷり。ただそれだけに、各話のクオリティにバラつきがあったのはもったいなかった。実質的に単独主演の渡部は、司法取引を持ち出すときの繊細な演技が出色。穏やかながらも強く、憐れみを向けながら迫る姿でグッと引きつけた。ナイトドラマではなく、浅い時間の方がよかった気が。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】

『不便な便利屋』 金曜24時12分~ テレビ東京系

出演者:岡田将生、鈴木浩介、遠藤憲一ほか
寸評:これというテーマはなく、無邪気な大人たちのゆるい会話劇なのだが、『北の国から』のオマージュや、雪だるまのギネス挑戦など、鈴井監督の故郷愛がギッシリ。田舎町のふれ合いや騒動のドタバタ感は賛否両論というより、ピンポイントでツボにはまらないと笑えない。季節感のズレは最後まで解消されず、『ドラマ24』の自由さを善悪両面で考えてしまった。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

『ドS刑事』 土曜21時~ 日本テレビ系

出演者:多部未華子、大倉忠義、吉田羊ほか
寸評:多部のドSな役作りがハマり好スタートを切ったが、徐々に失速。ドS描写のバリエーションや意外性が少なく、毎回判で押したような展開に、飽きてしまった人も多そうだ。その意味では多部のコメディセンスでここまで持ったのかもしれないが、だからこそM側に回る男性陣に芸達者な俳優が必要だった気も。これこそ深夜帯で思う存分やり切ってほしいテーマ。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

『64』 土曜22時~ NHK

出演者:ピエール瀧、木村佳乃、柴田恭兵ほか
寸評:シリアスなトーンに徹し、映像にも音楽にもこだわった力作であることに疑いの余地はない。しかし、ホームページの相関図を見なければ、誰と誰がどんな関係かさえ分からない難解さ。ピエール瀧を筆頭にキャストは渾身の演技を見せていたが、実力派をそろえた制作チームの「これだけこだわっていますよ」と言わんばかりの強引さは、好みが分かれるところ。
採点:【脚本☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『She』 土曜23時40分~ フジテレビ系

出演者:松岡茉優、中条あやみ、竹富聖花ほか
寸評:ハンディカメラを多用したドキュメンタリーは連ドラとしてはまだ少なく、いい意味での違和感を生み出していた。ラスト数分間でのどんでん返しは唐突に見えるが、序盤から張られていた伏線もあり納得。リアルタイムでツイッターと連動させるなどの仕かけも含め、攻める姿勢が随所に見えた。松岡の魅力が生かされなかったのは残念だが、今後も同枠には期待したい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】

『妄想彼女』 土曜23時40分~ フジテレビ系

出演者:広瀬アリス、浅利陽介、木南晴夏ほか
寸評:誰がどう見ても広瀬を愛でるためのドラマ。「男性から見た理想の彼女」と「女性から見たリアルな彼女」の2面を演じ、これまでのキャリアで培ったスキルを見せた。ファジーなストーリーは明らかに狙いだが、広瀬と木南の比較が不十分なため、ラストシーンが生きなかった印象。4話でサラッとまとめたのも含め、若い年代向けのドラマを作る姿勢は好感が持てる。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】

『天皇の料理番』 日曜21時~ TBS系

出演者:佐藤健、黒木華、鈴木亮平ほか
寸評:『JIN-仁-』『とんび』の鉄板チームはやはり健在。各話きっちり泣かせつつ全体のテーマを進める脚本、性善説に基づいた温かみのある演出は、地力の確かさをうかがわせた。佐藤を盛り立てる助演の力量も十分で、安定感たっぷり。それだけに、1カ月ずらした放送時間は視聴者を戸惑わせただけで、残念としか言えない(6月28日分までを対象に採点)。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆☆ 総合☆☆☆】

『ワイルド・ヒーローズ』 日曜22時30分~ 日本テレビ系

出演者:TAKAHIRO、青柳翔、岩田剛典ほか
寸評:暴力団に加え、宗教団体、黒幕のレインマンなど怪しい人が次々に現れるぶっ飛んだ展開は、『スケバン刑事』時代を思い起こさせるハチャメチャさ。ただ、それを熱演するEXILE一族と、想像以上に好相性。少し見方を変えれば、コントに近い作品も立派なドラマの1ジャンルであり、これくらいツッコミながら見るアイドルドラマがあってもいい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。