流行性角結膜炎(はやり目)になると、充血や目やに、目のゴロゴロ感に悩まされる

季節性の目の疾患といえば、花粉症を思い浮かべる人も多いことだろう。だが、知られていない季節性の目の疾患は他にも数多くある。その一つが、これから迎える夏場に多くの患者が出る「流行性角結膜炎」、いわゆる「はやり目」だ。

非常に感染力が強く、乳児が罹患(りかん)した場合は、失明の可能性もある流行性角結膜炎。その症状や感染ルート、予防策などについて、あまきクリニック院長の味木幸先生に話を伺った。

充血や大量の目やになどの症状

流行性角結膜炎は、「アデノウイルス」に接触して感染することによって発症する。同ウイルスの感染者が目を手でこするなどして、その手でドアノブやパソコンのキーボード、紙幣などに触れると感染が広がっていきやすい。

その主な症状は、目の充血や大量の目やに、目のゴロゴロ感などだ。ウイルスの潜伏期間が長い(7~14日)ため、突如として充血や大量の目やにに悩まされても、いつどこで感染したかわかりにくい特徴を持つ。また、目の疾病と気づかない人も多いと味木先生は指摘する。

「私たちのクリニックでは、流行性角結膜炎と疑って来院する人は皆無で、何かのタイミングで『目にゴミが入ってから痛い』と訴える人が多いですね」。

症状は片目から始まり、治癒には一般的に10~14日ほど要するが、その間にもう片方の目にも症状が出ることが多い。症状の経過や治癒までの時間は個体差が大きいものの、一度感染すると、角膜障害や失明の危険性もゼロではない。特に乳児は、自ら「痛い」「気持ち悪い」と周囲に訴えることができず、失明のリスクも高まりやすいので注意が必要だ。

感染力が強いアデノウイルス

非常に感染力が強いアデノウイルスは眼科医の診察が必須で、「学校保健安全法」では登校禁止ウイルスに指定されている。会社員でも出勤は自粛し、飛行機や電車など、多くの人がいる密閉された空間への出入りは避けるべきである。

一方で、感染しても症状が出ない人(不顕性感染)もいる。だが、自覚症状がない不顕性感染の人が媒介役となって、結果的に会社や学校などでより多くの感染者を生んでしまうケースも多いという。

「不顕性感染になるかどうかは、ウイルスに対する抗体生産能力によって決まります。生後6カ月までの赤ちゃんは自分で抗体を作る力が十分でありませんし、幼児や老人は重症化しやすいです。大人でも、オーバーワーク気味で自分が本来持っている健康維持の力が失われていると、発症した際に治りが悪いですね」。

近年は冬場での感染も目立つように

通常、ウイルスは乾燥した環境を好むが、厄介なことにこのアデノウイルスは湿気や水に強い特性を持つ。そのため、プールや公衆浴場での水を介した感染も見受けられる。

「最近の特徴として、スパや健康ランド、ゴルフ場の浴場などの施設が充実しているため、夏のウイルスなのに冬でも感染者が多くなっています」。

水の中でもウイルスが死滅しないことから、例えば家庭内ではお風呂での2次感染が考えられる。感染者が漬かった浴槽に、非感染者が入ることでウイルスに感染してしまうケースだ。家族など、身近な人が感染したら十分に注意したほうがよい。

手洗い、うがいでの自己予防が肝心

感染力が強く、水中でも感染するというアデノウイルスだが、実はいまだに抗ウイルス薬は開発されていない。そのため、対症療法と抗体を作るための休養が対策となるのだが、味木先生は予防にもっと注力してほしいと力を込める。

「一番大事なのは手洗いとうがいのセットで、これが予防の基本となります。アデノウイルスはアルコール消毒や煮沸で除去できますが、そうしないと2週間ほどは平気で生き続けます。例えば、『トイレを使用したら手を洗う』『外出先から帰宅したら手を洗う』ということを習慣化することで防げるケースも多いです」。

アデノウイルス対策としては、「日ごろから手洗いやうがいなどをして感染しないようにする」「万一、感染したら休養をとる」「感染したら他の人に移さない」の3カ条が大切だと肝に銘じておこう。

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記事監修: 味木幸(あまき さち)

あまきクリニック院長、慶緑会理事長。広島ノートルダム清心高校在学中に米国へ1年の留学。米国高校卒業後に母校に戻り、母校も卒業。現役で慶應義塾大学医学部入学。同大学卒業後、同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。医師として痩身や美肌作り、メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。