「仕事中にノンアルコールビールを飲んでいる法律事務所がある」。
どうやら福利厚生の一環らしいが、なぜノンアルコールビールを支給しているのだろうか。それを確かめるべく、同施策を行っている都内の“法律事務所テオリア“を訪ねた。話を伺ったのは、法律事務所テオリアの弁護士 松村龍一氏ほか3名。

ノンアルコールビールを飲む松村龍一氏(右から2番目)

会議室に通されると、すでにテーブルの上に人数分のノンアルコールビールが。取材開始とともにカシュッとプルタブを開ける音が会議室に響く。一瞬、目を疑ってしまうような光景だが、この施策は今年のゴールデンウィークに始まったものだという。

きっかけは、「暑くなってきたので温かい飲み物から冷たい飲み物に変えたい」というシンプルなもの。なぜ、麦茶やコーヒー、アイスティーではなかったのかだろうか。すると「我々が飲みたかったからです」、とノンアルコールビールの缶を片手に松村氏は笑顔で答えた。

事務所内の半数がノンアルコールビールを飲んでいるとのことだが、あえてノンアルコールビールを選んだというわけではない。 「スカッとのどごしのいいものが飲みたい時に、炭酸水以外の選択肢が加わっただけ」とのこと。お茶やコーヒー、麦茶だけでは飽きるので、いい気分転換にもなるのだそうだ。

もちろん、ビジネス的にプラスな面もある。弁護士という職業は、仕事の時間が厳密に決まっているわけではないため、夕食を挟んで仕事をすることも。夕食時にビールが飲みたくなってもまだ仕事が残っている。そんなときにノンアルコールビールはありがたく、その後の仕事もはかどるとのこと。 また、意外なことに弁護士の仕事の大半は裁判所や相談者の応対ではなく書類作成。デスクワークの多い仕事なので、家の中にいるかのような環境づくりをすることでストレスなく仕事ができるという。

そして驚くのは、事務所内で楽しむだけではなく、事務所に相談に来たお客さんにも、ノンアルコールビールを提供していること。これには緊張をほぐすという狙いがあり、まずノンアルコールビールを勧める行為が会話のフックになる。相談者がリラックスできる環境を提供するのも弁護士の仕事のひとつだ。 勧められた人は決まってきょとんとした反応を見せるというが、そのまま飲んだ人は100%男性だけとのこと。

事務所の冷蔵庫の中にはノンアルコール飲料「オールフリー」がぎっしり入っている

事務所の冷蔵庫にノンアルコールビールを置き始めてまだ1カ月弱だが、すでに消費量は3、40本。一日に飲む本数は決めていない、アルコールゼロだから気にする必要はない、と口々に言う。 ノンアルコールビールを夏季限定にするか、通年メニューにするかどうかは、これから考えていくとのこと。

今後、福利厚生としてノンアルコールビールを出す会社が増えれば「オフィスでノンアルコールビール」という光景が夏の風物詩のひとつになるかもしれない。