6月6日は「芒種 (ぼうしゅ)」にあたります……と聞いても何のことだかわからない人の方が多いことでしょう。これは、農業に関連した大事な時期を示すものですが、そこには意外な意味も込められていたようです。
二十四節気の芒種は、夏の節気として3番目。稲や麦など、穂の出る穀物の種まきの時期です。
「芒種」の「芒 (ぼう)」は、訓読みすると「のぎ」です。「芒 (のぎ)」は、稲など穀物の実の先端についている穂先のこと。つまり、「芒種」は「芒 (のぎ) の種」という意味なんですね。まさに種まきの時期を表した言葉です。
とはいえ、実際の種まきは芒種よりも前に行われています。日本では水田に直接種をまくのではなく、苗代である程度、育ててから植え替える方法をとっていることなどがその理由です。そのため、実際の芒種は、稲作における「田植えの時期」と言えます。
機械化された現在でも田植えは重労働ですが、かつての稲作は現在と比べものにならないほど大変なものでした。そのため多くの農村では、稲作を見守る「田の神 (たのかみ)」信仰があったと言われています。田植えの際には水田に祭場を設け、田の神を迎え、早乙女(さおとめ)と呼ばれる女性たちが厄除けを行ったとか。田植えは、非常に神聖な祭りとしての要素もあったのです。
都市生活者にとっての芒種は遠い存在かもしれませんが、そんな昔の日本の姿に思いをはせながら一日を過ごしてみるのもいいかもしれませんね。
<参考文献>
三省堂年中行事辞典【改訂版】 (三省堂) / 入門 日本の旧暦と七十二候 (洋泉社) / 原色シグマ新国語便覧 増補三訂版 (文英堂) / 暮らしのしきたり十二か月 うつくしい日本の歳時と年中行事 (神宮館) / 日本の風俗の謎 (樋口清之著、大和書房) / 日本人のならわしと暮らし暦12か月 (瀧本マリ子と日本人の暮らし研究会著、海龍社)
執筆:野村佳代
株式会社アスラン編集スタジオ 代表取締役。編集・ライター。一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師。Webサイト「ビジネス文章力研究所」を運営している。