外観と内観の違いにびっくり

最後の1軒も、館ブランシェと同じ花園銀座商店街の中にある。外観は普通の昭和の喫茶店にしか見えないのだが、初めて「喫茶コロンビア」を訪れた人は中に入って驚くに違いない。ものすごく広いということと、天井に輝くシャンデリアがとにかくゴージャスなのだ。

外観からは想像できない「喫茶コロンビア」のゴージャスさ! 手前と奥に大きなシャンデリアが2つある

創業は昭和23年(1947)、今年で67年になる。現在のような豪華な内装になったのは1980年代の前半頃だという。創業者はとんかつ屋、キャバレー、喫茶店など手広く商売をしていた実業家。「コロンビアはいわばオーナーの道楽の店。内装にはかなりのお金をかけたらしいです」と話すのは現在のオーナー・尾花啓史さん。前オーナーに後継者がいなかったため、頼まれて喫茶コロンビアを引き受けたそうだ。

天井に輝くシャンデリアは、まるで光の雨が降り注いでいるよう。1階には24ものボックス席があり、全てベルベットのソファ。このシャンデリアを見ると、喫茶店というよりはキャバレーのような華やかさがある。ちなみに、一番奥の席からは小さい日本庭園が見える。

メニューも器も当時のまま

内装は豪華だが、メニューは至って庶民的で懐かしい昭和の食べ物が並ぶ。一番人気は「チョコレートパフェ」(650円)。人気の秘密はおいしさはもちろん、その大きさだろう。レトロなパフェグラスに、底までびっしりアイスクリームが詰まっている。

チョコとバニラアイス、生クリームとチョコレートソースにウエハースがついたシンプルなスタイル。おしゃべりに夢中になっていると、底のアイスが溶けてしまうから油断できない。食べ終わると達成感があるくらいのボリュームだ。

「チョコレートパフェ」(650円)はボリュームがすごい

注文してから焼いてくれるアップルパイもオススメの一品。アツアツサクサクのパイの中に、しゃきっとした歯ごたえが残るリンゴが美味。こちらは単品(600円)か、コーヒーまたは紅茶付きの「パイセット」(820円)で提供されており、アップルパイの他、カスタードやマロンクリーム等全部で5種類のパイがある。

5種類そろうパイ(600円)の中で1番人気はアップルパイ

創業当時のメニューがほとんど残っているという喫茶コロンビアは、器にもこだわりがあるそうだ。

「商大(小樽商科大学)を卒業し、全国各地に就職した元学生が小樽に来た際に、うちに立ち寄ってくれることがあるんです。懐かしいものを注文した時に器がちょっとでも変わっていると、懐かしさを感じられないんじゃないかと思うんですよ。当時のままで出したいんです」と尾花さん。不足した器は札幌へ出向いたり、インターネットで探したりしてなんとかそろえているそうだ。

創業当時からほぼ変わっていないというホールスタッフの制服がクラシカルでいい

馴染みの客にもふらりと戻ってくる客にも、ホッとできる店でいられるような喫茶店。その一方で、2014年に小樽で開催された「小樽アニメパーティ」では、同店の2階が出張メイドカフェとなり、普段とはまるで違った雰囲気で尾花さんも少し戸惑ったそうだ。しかし、そうした取り組みも行うなど、店の奥行き同様、なんとも懐が深い喫茶店ではないだろうか。

●information
喫茶コロンビア
北海道小樽市花園1-10-2
営業時間: 11:00~24:00
定休日: 無休

深紅のベルベットのソファが象徴的な、昭和の香りがする喫茶店。小樽には古くて良いものがまだまだたくさん残っている。地元の人に交じって少し想像力を働かせてみれば、隣にはキャバレー帰りの客、あるいはマッサン、あるいは情熱にあふれた創業者がいるような気分で、旅行をもっと楽しむことができるかもしれない。

※記事中の価格・情報は2015年4月取材時のもの。価格は全て税込