(『首都決戦』では)そういう怖さや不気味さがちょっと出ればいいなと思ったけど、基本的には痛快アクション映画というご要望だから、やりすぎない範囲の中で。実は物語としては、ぜんぜん決着ついていない。またやるかもしれないよ、きっと。死んでないんだもん。それ以前に、そもそも灰原って誰よそれ、と。誰でも灰原になりえる。それは、今日性みたいなことを言うのであれば、そこのところにちょっと込めただけ。やりすぎると、たぶん楽しくない映画になる。いやな気分にならない範囲で見せるために、ああいう女の子にしたわけ。

――"見えない戦闘ヘリ"グレイゴーストとイングラムの対決は見せ場の一つでしたね。CG描写のクオリティはご覧になっていかがでしたか?

かなりやれたと思うよ。がんばったと思うし、うまくいったと思う。自分としては都庁上空のコブラの空中戦や、F2(が見せ場)ですね。F2も地味だけど実は大変なことをやってるんです。あとは中盤の突入シーン。アクションとしては長いんですけどね。

ただ、撮影で一番面白かったのは冒頭のシーン。お金も時間もかかったけど、けっこううまくいったと思う。具体的にしていないけど中東のどこかという設定。もちろん国内で撮影したんだけど、大変だった。スタッフが(笑)。ロケセットを組むのに一週間以上かかって、実際に撮影したのは5時間くらい。

たった3、4時間の撮影をするのにけっこうな人数が泊まり込んで準備をして、しかも後片付けにまた3、4日かかっている。それが映画なんだよね。金がかかりすぎると反対もあったけど、今回の映画は外国から始めたかったから、どうしても必要だった。外国から日本に入ってくる、外側の目が欲しかったから。

シリーズなら多分無限にできる

――シリーズのエピソード5/6をとても楽しんで作っていらしゃった印象でした。

映画よりもシリーズの方が、いろいろなことをできる。いっぱい楽しみたいから「シリーズ」というのは魅力です。だから、どちらをやりたいかと言われたらけっこう悩むと思います。シリーズなら多分無限にできる。無限といったら嘘だけど、『CSI:科学捜査班』のようにシーズン12や13くらいはできると思う。……その前に飽きるかもしれないけど(笑)。

――まだシリーズの続きを楽しみにしてもよいということでしょうか?

それは、やれといわれれば僕はいつでもやります。この映画が大ヒットすることがあればプロデューサーや偉い人たちが考えるでしょう。その時にまた僕が監督として呼ばれるかどうかはまた別の話ですが。でもまあ、多分、いったん僕の中で終わったんです。もしやるとしてもまた頭から考え直すしかない。

ただ、確かに映画を作るという仕事は、他の何にも増して楽しいことには違いない。ああやって時々は休みながら、映画を作って生きていけるのなら、言うことはないと思うよ。だからみんなやっているんだよね。生活苦と戦いながらでも。

――監督にとってパトレイバーとはどういう作品ですか?

一番長くやっている仕事。実写の映画までやるとは思っていなかったけど、なんだかんだで20年以上。数もやったし、お客さんも一番入って、そういう意味では一番お金ももらった。好きとか嫌いとかいう感覚はもうなくなっているね。自分の身体の一部のような感じで、違和感がないんだよ。特に愛情があるかというとそういうワケでもない。20年連れ添った奥さんみたいなもので、もちろん好きだけど愛しているかどうかというと微妙だよね……というと怒られるんだろうけど(笑)。そういう感情を超えてしまっている。だから20年経っても平気で作れるし、また20年後にも平気でできると思う。


『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』は、2015年5月1日より新宿ピカデリー他全国の劇場で公開される。『パト2』からのファンにとっては、20年以上を経て意外な形で続編を目にする日がやってきた。劇場へ見に行く前に『パト2』をじっくり見直しておくとより楽しめるだろう。また、実写のキャラクターや特車ニ課の立場といった『首都決戦』の前提として、可能な限りシリーズ作品を見ておくことがおススメだ。

■プロフィール
押井守
1951年生まれ。東京都出身。大学在学中、自主映画を制作。1977年、タツノコプロダクションに入社。テレビアニメ『一発貫太くん』でアニメ演出家としてのスタートを切る。1980年、スタジオぴえろに移籍し、鳥海永行氏に師事。1984年、スタジオぴえろ退社。以降、フリーに。代表作は『うる星やつら』シリーズ、『機動警察パトレイバー』シリーズ、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)、『イノセンス』(2004年)、『スカイ・クロラ The Sky Clawlers』(2008年)など。

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