最近、FXの世界では、自動売買(システムトレード、略称「シストレ」)を行なう人が増えている。プロの投資家が作った売買プログラム(ストラテジー)に取引を任せる、という運用方法のため、時間があまりないサラリーマンや、為替相場にそれほど詳しくない主婦でも利用できるのがメリットで、TVや雑誌でも取り上げられることも多い。
シストレの運用の秘訣は「稼げるストラテジー」を選ぶこと。各社、ストラテジーの収益ランキングを用意したりなど、利用者に合ったストラテジーを選べるよう、さまざまなサービスを提供しているが、中にはちょっと変わったサービスを提供している会社もある。
「シストレ24」を提供するインヴァスト証券では、社員が実際に顧客同様にシストレを運用し、その運用方法をそのまま真似ることができるようにしている。社員が更新するブログでは運用収益を公開し、結果を詳細に報告している。なぜそんなことをしているのか!?
「お客様と同じ目線で運用をしてみる」ことを目的に150万円投入しガチ運用開始
マーケティング部に所属する山田勤氏(仮名)が語る。
「弊社では、実際に社員が運用してみようという話になりました。お客様と同じ目線で運用をしてみて、そこからサービスを改善したり、プロモーションをおこなおうと」。
しかし、証券会社の社員が私的にFX運用をすることは禁じられている。そこで、会社が150万円の資金を用意してくれ、それを会社の口座で運用することになった。
「始めたときは、ほんとうに素人同然です。普通の会社員と変わりありません。せいぜい、夜に普通のニュースではなく、経済系のニュース番組を見る程度でした」。
手探りでFX運用を始めたが、いきなり資金が減り始める…
当時は、シストレ24の最大のセールスポイントであるMyシストレ24のステータス表示がなかった。現在は、各ストラテジー(売買プログラム)に「調子がいい」「調子が悪い」などのステータスが表示されるので、それを参考にそのときの相場にもっとも適したストラテジーを選びやすくなっているが、当時はそれがなかった。まったくの素人にはどのストラテジーを選んだらいいのかがわかりづらかった。
そして、手探りでFX運用を始めた山田氏はいきなり資金を減らし始めてしまう。
「1万円勝っても、3万円負けるというような小さく勝って、大きく負けるパターンばかりでした。僕の運用成績は、全社員がいつでも見られる状態になっているので、ものすごくプレッシャーを感じました」。
いったいなんのために投資をやっているのかと苦しい状態が続く
しかし、山田氏にもビギナーズラックが訪れた。2013年4月ぐらいからアベノミクス効果で、株と円があがり始めた。その一本調子の相場に乗って、ようやく原資を回復することができた。
ところが、そこから山田氏の長い苦しみが始まる。「その頃、1000通貨単位の取引が導入されました。なるべくリスクをとりたくないという気持ちから、いろいろなストラテジーに1000通貨単位ずつ入れるという分散投資をおこなったのです」。
この弱い気持ちが、よくなかった。資金を減らすことはなかったが、どのような工夫をしても利益が乗っていかない。横ばい状態が続くことになる。
「1000通貨単位なので、損をしても小さいかわりに、利益も小さい。あれこれやってみても、増えも減りもしない。いったいなんのために投資をやっているのかと苦しい状態が続きました」。
調子のよさそうなストラテジー3つに絞って、集中的に資金を投入
その頃の山田氏のストラテジーの選び方は「調子のいいもの」。直近の利益が大きいものを選ぶという、初心者にありがちな選び方だ。しかし、それでも利益が増えないことに焦っていた山田氏は勝負にでた。調子のよさそうなストラテジーを3つ~5つ程度に絞って、集中的に資金を投入したのだ。
「一瞬で20万円ほど負けました。直近の相場で大きな利益をとるストラテジーは相場が変われば大きく負ける可能性もあるわけです。ストラテジーというものをきちんと理解していなかったことが原因です」。
その後、相場がまったく動かない低ボラティリティの時期が続く。
「こうなるとストラテジーにとっても厳しくなります。利益が出にくく、損切りばかりが続くという状態になり、資金は120万円ほどまで減ってしまいました」。
プロモーション業務の一環としてFX運用をしているので、損をしても実害があるわけではない。しかし、山田氏は社内では肩身が狭く、ひたすら自分の存在を消して、隠れるように仕事をしていたという。
「やはり、お前、なにやっているんだという目で見られますし、お客様にも印象が悪い。僕がどんどん利益をだしていれば、お客様も運用したいという気持ちになるでしょうけど、僕が損をだしていたら、お客様だって躊躇します。お客様から直接なにかをいわれたことはありませんが、ブログがまったく書けない。お客様の運用に役立つ情報がありませんから。正直、一回なかったことにして、もう一度最初からやり直しさせてほしかったぐらいです(笑)」。
もっとも旬なストラテジーを紹介する「イマコレ」開始で"悟り"
2014年の5月、「イマコレ」サービスがスタートした。これは山田氏ともう一人の担当者が、今、もっとも旬なストラテジーを紹介するというサービスだ。もちろん、山田氏も自分で選んだストラテジーを実際の運用に利用し、その結果をブログで公開していく。
ここで山田氏は変わった。本格的にストラテジーの勉強を始めたのだ。もちろん、ストラテジーの中身はブラックボックスになっているので知ることはできない。そこで、山田氏は、現在の値動きがどのくらいの値幅なのかといった点と今の相場によく似た相場状況を過去から探しだし、そのストラテジーがどのような挙動をしているのかを観察することを繰り返した。
これは今でも山田氏の基本戦略になっている。現在がどの程度の値幅なのか。加えて動かない相場なのか、一定幅で上下動するレンジ相場なのか、一方向に進むトレンド相場なのか。それを見極め、過去、似たような相場状況の時期を探しだす。その時期にうまく利益をだしているストラテジーをイマコレで紹介し、自分でも運用する。さらに、ストラテジーを分散させずに、常に3~5つ程度のストラテジーに集中させる。特にシストレ24でしか利用することが出来ないストラテジーの多くは、損切りが早く、利食いを遅くするという性質をもっているので、荒れている相場のときは、小さなリスクで、大きく勝てるのだ。
「ここから奇跡のように利益がでるようになりました。2014年9月ごろから相場が動くようになり、10月に黒田バズーカ2があって一気に円安が進みました。そこからは利益がどんどん積み重なっていく」。
150万円が185万円前後まで増加、"真剣さ"が原動力に
150万円で始めたFX運用は、一時期120万円まで減らしたが、現在は185万円前後まで増やしている。20%以上の利益だ。
FX運用に関しては素人同然だった山田氏は2年足らずで、自分なりの手法を見つけだすことができた。それは「現在の相場状況と似ている過去の相場を見つけ、そこで利益をだしているストラテジーを選ぶ」「シストレ24で調子が悪いサインが点灯したら、いったんそのストラテジーは止めて、仕切り直しする」というふたつが柱になっている。今では、すっかりプロの投資家になったといいっていいだろう。
顧客が独り立ちして運用できるようなサポートの有無が、口座開設の決め手に
なぜ、山田氏は、短期間でプロになれたのか。真剣さがその原動力だ。自分の資金ではないということはあるものの、業務としてやっているという厳しさが、お客様に恥ずかしいところは見せたくないという緊張感が山田氏を動かしてきた。山田氏にもできたのだから、私たちだって、2年あればプロの投資家になることができるはず。その決め手となるのは、投資に対する本気度だ。
一般的には高リスクなイメージを持たれるFXだが、インヴァスト証券では、山田氏のように身を削りながら、「いかに顧客が長く取引できるのか」を考え、顧客の取引のサポートを行なっているのだ。
「NISA」も開始され、またスマートフォンなどが広く使われるようになったこともあり、投資の機能や投資環境は充実してきた。しかし、投資への一歩が踏み出せたからといって、長く安定的に続けるためには、顧客自身も、運用のための知識をある程度身につける必要がある。ブログを通じて山田氏らの"ガチ体験"を生かすことのできるインヴァスト証券のようなサポートを行なっているかどうか、という観点から、投資口座を開く会社を探すことが、今後は重要になりそうだ。
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