なぜそんな昔のことを……と思ったこと、ありませんか?

大好きな彼女や奥さまと、ケンカしたいと思う男性はいないはず。けれども、長く付き合っていると、ささいなことでケンカをしてしまうこともしばしばです。そんなとき、思いませんか。どうして女性はケンカになったとたん、芋づる式に過去の出来事を持ち出して男性を責め立てはじめるのかと。時には、いつの間にかケンカの内容がことの発端から大きくずれてしまうこともあります。女性はなぜ、ケンカになると過去の出来事をもちだすのでしょうか。

女性の詳細な記憶力

男性であれば、1度はありますよね。自分はもうとっくに忘れている出来事を彼女はいつまでも覚えていて、執拗(しつよう)に責め立てられた経験。その理由の1つは、女性の記憶力の良さではないでしょうか。

以前に、「女性はなぜ細かいことまでよく覚えているのか」という記事で、アメリカのコーネル大学の研究によって、男性よりも女性のほうが詳細に記憶をとどめていることが明らかにされていることを紹介しました。人がまだ狩猟の生活を送っていた頃、女性は村で大勢の人たちと長い時間を過ごしました。共同で生活をする上では、周囲の人々との争いごとを避けなければいけません。そのために、女性は細かなこともしっかり記憶することで不要な争いを避けたと考えられます。

"ケンカの先送り"も原因?

ところで、「ケンカするほど仲がいい」と言いますよね。実際、ケンカというのは恋人や夫婦の関係を維持するためには必要不可欠なものです。というのも、意見が違ったり気に入らないことがあったとき、すぐケンカを始めれば、ケンカはそのときだけで、ケンカの内容が別のものにすり替わることはありませんから。

しかし、ケンカをできるだけ避けようとすると問題は解決せず、それにともなうストレスが蓄積されていきます。それが限界まで達すると、コップにたまった水が溢(あふ)れ出るように、それまでのストレスや鬱憤(うっぷん)が爆発してしまうのです。男性であれば、過去の嫌だった出来事や二人の間で生じた問題を詳細には覚えていないので、「あれもこれも」ということにはなりません。

ですが、女性の場合はそうはいきません。昔のことも詳細に覚えているため、せきを切ったように、ここぞとばかりに過去のことも持ち出してしまうのです。男性からするとあまりにも過去のことなので、素直に謝ることもできず、ケンカを収束に向かわせるのも難しくなるわけです。

誰もが「ケンカはしたくないな」と思うでしょう。ですが、2人の関係をうまく維持させていくためには、むしろケンカも積極的にしたほうがいいのです。女性が芋づる式に持ち出してきたケンカのテーマは、"本来ならそのときにすべきだったケンカ"が先送りされた結果なのです。つまり、上手にケンカをしてあげられなかった男性も、理由の1つと言えるかもしれません。

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著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理にも詳しい。現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』『邪推するよそおい』など。