白馬の王子様が遂に……!? って、違う、こういうんじゃなくて!!! お金見せびらかしたり、ギラギラしたりしてなくて、自然にイケメンでさりげなくレディーファーストで……(以下、略)

15年ほど前、フジテレビ系で松嶋菜々子さん主演の「やまとなでしこ」というドラマが放送されていました。松嶋さん演じる主人公は、家が貧しかったため、お金持ちな白馬の王子様を待っているという設定でした。ドラマの中でも、王子様という台詞がたびたび登場し、当時大ヒットドラマとなりました。

ドラマに限らず現実の世界でも、女性の中には、若い独身の人だけに限らず、既婚者でも白馬の王子様願望を持っている人はいます。太って変わり果てた旦那を見て失望し、もう子どももいる私だけど、いつか大金持ちのイケメンがさらってくれて、こんな日常におさらば……と現実逃避する人もいることでしょう。なぜ女性は、この「白馬の王子様願望」ともいえる願望を持つのでしょうか。

白馬の王子様は日本だけではなく……

白馬の王子様という言葉、イメージとしてはイケメンでお金持ち、性格もよくて女性を幸せにしてくれる。そんな感じですよね。そしてこの白馬の王子様願望は、日本の女性たちだけが抱くものではありません。白馬に乗った王子様は、海外のドラマや映画の中に登場します。つまり、「白馬に乗った王子様」は日本人女性だけのためのものではなく、女性を幸せにしてくれる存在としてのグローバルスタンダードな代名詞なのです。

では、一体どこでこの白馬に乗った王子様が生まれたか。それは、ウォルト・ディズニーの影響です。シンデレラや白雪姫など、最後にはイケメンの王子様が白馬に乗って登場しし、ヒロインたちを救い出す。めでたし、めでたしのハッピーエンドになるわけです。

私たちは幼い頃から、このウォルト・ディズニーの作品を見ることで、影響を強く受けています。女性たちの"白馬の王子様願望"というのは、シンデレラや白雪姫の世界観の影響を受けた結果生まれたといってもいいでしょう。

もちろんそれ以外の要因もあります。女性の場合、妊娠・育児という問題から、本能的に自分や子どもを保護してくれる男性を求めます。現状よりも、よりよい相手がいないかと探求するのは当然です。そんな心理が、白馬の王子様という言葉に具体化しているのも事実です。いずれにしても、女性がいつまでも白馬に乗った王子様を求めるのは、そんな理由からでしょう。

ちなみに、ウォルト・ディズニーが広めているのは、白馬に乗った王子様だけではありません。外見が美しい人は内面も美しく、外見が醜いひとは内面も醜いというステレオタイプもその一つ。シンデレラや白雪姫は美人ですが、彼女たちをいじめる存在は不美人に映像化されていますよね。こういった作品を子どもの頃に繰り返し見ることによって、ステレオタイプ化してしまうのです。私たちが子どもの頃に受ける影響は、計り知れないものがあるのです。

※画像は本文と関係ありません。

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理に詳しい。
現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は「化粧にみる日本文化」「黒髪と美女の日本史」(共に水曜社)など。