今、前園真聖が面白い。特にレギュラー出演している『ワイドナショー』でのコメントが視聴者にバカウケ。あの松本人志も「おっきい笑い取りやがって」とボヤくほどで、マスコミ関係者の注目を集めはじめている。

実際この1カ月強で、『ナカイの窓』『大人のkiss英語』『ネプリーグ』などのバラエティ番組に出演。元アスリートながら、ゲームや自転車などサッカー以外のイベントにもゲストとして招かれている。

しかし前園と言えば、2013年10月に泥酔状態でタクシー運転手に暴行を加えた容疑で逮捕され、謹慎していたことが記憶に新しい。トラブルの理由は違えど、矢口真里、中島知子、河本準一、酒井法子らが、なかなか以前のような活動ができない中、なぜ前園はここまで受け入れられているのか。その理由を探りながら、芸能人の復帰方法を考えていく。

ピンクのポルシェと「澤さんはダメ?」

バラエティ番組での露出も増えている前園真聖

まずはみなさんに前園の現状を理解してもらうために、『ワイドナショー』での面白コメントを並べてみよう。

中田英寿と柴咲コウの熱愛報道について聞かれ、「僕は知らないし、会ってもいない。過去の女性も知らない」とコメント拒否。松本に「全然戦力にならない」とダメ出しされると、深刻な表情になり、「なるほど……『性格的に結婚願望がない』と言っているんで」と友人を売ってしまう。

同い年の武井壮から「(前園が)六本木の店にピンクのポルシェで乗りつけて、毎回200万円くらい置いて帰っていた」と暴露されると、「僕じゃない」と否定しながらも「(ピンクのポルシェは)乗ってました……」と苦しい言い訳。さらに小声で「あいつ(武井)しゃべりすぎ」とこぼす。

松本から「女子サッカーの人と結婚して子ども産むって考えないですか?」と聞かれ、「全く考えないですね。……ま、タイプがあんまりいない」とぶっちゃける。続けて武田鉄矢から「つき合う女性の筋肉とか見るタイプ?」と聞かれて「………」と無言のあわや放送事故。「瞬発力なさすぎ!」とツッコまれる。さらに松本から「澤(穂希)さんは何でダメなんですか?」と振られて、「さ、澤さんはやっぱタイプではない……じゃないというか、それぞれタイプがありますから」と必死のセルフフォロー。

不祥事で一年間禁酒しているため、松本から「飲むときはこの番組で飲みましょう」と振られて考え込む前園。続けて「何が飲みたいですか?」と聞かれると、口をポカーンと空けてさんざん考えたあと「……とりあえずビールで」。

オープニングのときに不在だったことを責められて、「ちょっと用事がありまして」と真顔で返事。「用事優先やめなさい!」とツッコまれる。

その他、41歳になっても結婚できないことや、ペットのミニブタ、さらには「前園について」というトピックを作られるなど、毎週イジられまくっている。それを受けて、目を閉じて耐えたり、「スーッ」と息が漏れたりする前園の姿は、文句なしで面白い。小藪千豊も「もう顔が面白い。喜劇役者がボケる前の顔してるもん。新喜劇出て欲しい」とジェラシーを燃やすくらいなのだ。

まずは「笑われる」というスタンス

前園に関して言えば、間違いなく松本の力によるところが大きい。番組復帰するなり、「何で髪切ったんでしたっけ?」「(ドリンクを見て)それ水割りでしょ」とイジり、当時の新聞報道を大写しにした上で、「お酒を飲みすぎてちょっと“おイタ”をしました」と言わせて笑いを誘った。

しかし、「ただイジられればいい」というわけではない。視聴者はその表情や姿勢をよく見ている。『ワイドナショー』での前園を見ていて感じるのは、「緊張」「マジメ」「正直」「失敗」の4点。まずは「笑わせる」より、「笑われる」というスタンスが貫かれているのだ。

この点、「笑わせるのが仕事」の芸人・中島、河本らは悩ましいところか。バラエティ番組を主戦場にしてきた矢口もウケ狙いに走らず、上記の4点に気を付けることで、視聴者の「もう許してもいいかな」を引き出せるかもしれない。

間違っても、いきなり本来のキャラに戻ろうとしたり、人をイジる側に回ろうとしたり、カッコつけたところがあってはいけないのだが、ずっとその状態では活動に支障が出るし、精神衛生上よくない。そもそもタレントである以上、自分の持ち味である本来のキャラを少しずつ取り戻していくべきだろう。

現在の前園をシーソーでたとえてみよう。現状は視聴者が上で、前園は下。つまり「視聴者は上から目線で前園を見ている」ことになる。ただ裏を返せば、「前園が自ら視聴者の下に入っている」とも取れる。足をついて少し腰を浮かせば、両者の目線は対等に近づき、本来のキャラを少しずつ出していけるはずだ。具体的に言えば、「コメントを調整して様子を見ながら、徐々に本来のキャラに戻していく」という形になるような気がする。

本来のキャラに戻しても批判が出ないようになったら、イジられキャラと合わせて2つのキャラを持つことになる。まさに「災い転じて福と為す」という状態だ。

現在の“取扱説明書”を作ってもらう

最後に、芸能人の復帰についてふれておこう。「少しでも早く謝罪会見をした方がいい」のは一般企業などと同じ。時間をかけるほど、あらぬ噂を立てられ、騒動や悪印象が大きくなってしまうからだ。

そして、芸能活動への復帰は、前園が松本を頼ったように、やはり大物司会者の力を借りた方がいいだろう。まず大物司会者の番組へ出て、条件をつけずに“現在の取扱説明書”を作ってもらう。それを見た他番組のキャスティング担当は、扱い方が明確になったため、オファーしやすくなる、という流れだ。

もし復帰番組でつまずいたとしても、次以降の番組で“取扱説明書”を作ってもらえばいいというだけ。逆にそれがないうちは、オファーが少なく、出演できたとしても司会者たちを困らせるだけだろう。

また、最近の視聴者は露出頻度にも敏感なだけに、マネージメント側の配慮も欠かせない。トラブルに関する同じイジられ方を何度か見ると、「反省が見えない」「笑いでごまかそうとしている」などの批判が一気に集まってしまうからだ。ツイッターやSNSなどを見ながら、本人にどんなアドバイスするのか、力量やセンスが問われる。

どんなトラブルでも、芸能人という職業は必ずしもマイナスになるとは限らない。それは「もはやキャラの一部」というより、復帰して「しばらくの間はメインのキャラ」になる。「浮気=陣内智則」というイメージで立ち直ったように、矢口にそれを背負う覚悟があるのか……。相変わらずバッシングの声は大きいが、やり方次第ですぐに「笑われる」段階にはたどり着けそうな気もする。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。