「スダマカン!」。

なにやらRPGの呪文に出てきそうな響きのこのフレーズ、実はマレーシア語で「ご飯、もう食べた?」を意味する。マレーシアの人は、知人と顔を合わせたらすぐにこう切り出すと言われるほどの食事好き。そんな魅力あふれるローカルグルメを紹介しよう。

中華料理の「肉骨茶」(バクテー)は、薬膳スープで煮込んだ豚肉がやみつきに!

マレーシアは食文化の宝庫

マレーシアのグルメを知るには、まずその文化について知っておく必要がある。

人口約3,000万人が暮らすマレーシアは、大きく3つの文化に分けられる。人口の60%を占める「マレー系」と同じく25%を占める「中国系」、そして7%を占める「インド系」だ。その他にも先住民系の文化などもあり、実に多様な文化が融合している国がマレーシアなのだ。

となれば当然、食の文化もそれぞれ系統によって異なり、そのレパートリーも多彩だ。今回は「マレー」「中華」「インド」のそれぞれの食事を紹介する。

具のセレクトに迷うナシレマ

マレー料理は、チリや香辛料などで作った「サンバルソース」という調味料を用いるメニューが多い。また、ココナツミルクやピーナツなどを使った、コクのある味わいの料理が見られるのも特徴だ。

今回は、マレー料理の代表的存在である「ナシレマ」を首都・クアラルンプールにあり、地元住民でいつも賑(にぎ)わうという「antarabangsa」にて体験してきた。

左下にある発酵食品「テンペ」が筆者のお気に入り

ナシレマはココナツミルクで炊いたご飯に、素揚げした小魚やサンバルソースを混ぜて食べる。複数あるトッピングから好きな物を選び、自分好みのナシレマにして食べるのがスタンダードだ。

筆者はスパイシーな味付けが特徴の「レンダンチキン」、大豆を用いた発酵食品「テンペ」と空芯菜の炒め煮である「カンクォン」、鳥の卵を串に刺した「ブルンプヨ」と「ビーフ」をトッピングした。

さまざまなおかずは、見ているだけでワクワクする

まずはレンダンチキンにガブリ。サンバルソースのピリ辛な味わいが食欲を刺激する。骨までしゃぶりつきたくなる味だ。ビーフは濃厚なデミグラスソースとカレーが混ざった味で、カンクォンはシンプルに油でいためてあるだけなので、口の中をさっぱりさせたいときにちょうどよい。テンペは大豆の素朴な味わいがとても気に入った。ブルンプヨは、日本でいうところのうずらの卵みたいな感じで、プルプルの触感が楽しかった。

無限に続けたい肉からお茶へのループ

ナシレマに続いてトライしたのが、中華の「バクテー」。漢字で表すと「肉骨茶」となる。骨つきの豚肉を、数種類の漢方や野菜などと長時間煮込んだ料理で、この肉とお茶を交互に楽しむスタイルが名前の由来だという。

クアラルンプールで現地の人たちがお勧めしてくれた人気店「旭日肉骨茶」で、バクテーを食べてみた。

写真のように部位ごとに皿を分けて食べるのが、バクテーの本来のスタイルだそうだが、この店ではすべてを一つの鍋に入れて提供する

鍋の左上にある「ユーチャークゥエイ」(油条)があまりにも絶品だった

しょう油ベースのスープは、スパイスとハーブで独特の風味がプラスされていて、一度飲むとクセになる。骨つき豚肉はボリュームがあるし、豚足は骨まで食べられるぐらいトロトロ。日本で言うセンマイに似たホルモンは、ホルモン好きの筆者にはたまらかなった。

とにかく箸が止まらないおいしさだった「バクテー」

その中でも、小麦粉を使った中国式揚げパン「ユーチャークゥエイ」(油条)が個人的に最も気に行った。ドーナツに似たような食感だが、スープに適度にひたすと生地のサックリ感とスープのジューシーさが同時に味わえて、絶品だった。肉にかぶりつき、鉄観音のお茶で口の中をさっぱりさせてまた肉を食す。この無限ループがいつまでも続けられそうなほどのおいしさだった。

クリスピー感あるナンに舌鼓

マレー、中華と攻略し、最後はインドグルメだ。同じくクアラルンプールにあり、地元の人たちよりも観光客がよく訪れるという「The Olive Tree」にてインド料理の定番・カレーとナンを味わってきた。

数種類のカレーからセレクトしたのは、「いんげんとにんじんのカレー」「ひよこ豆とじゃがいものカレー」「マトンカレー」だ。

手前から「ひよこ豆とじゃがいものカレー」、「いんげんとにんじんのカレー」、「マトンカレー」

まずは「いんげんとにんじんのカレー」を一口食べると、野菜のうまみがカレーに溶け出し、やや甘めの味わいだった。にんじんも大きくカットしてあり、食べ応え十分だ。お次は、普段あまり食べない「マトン」。羊肉特有の臭みはそこまで気にならず、独特の味わいがしっかり楽しめた。最後の「ひよこ豆とじゃがいものカレー」は、一番ピリ辛。ゴロゴロしたじゃがいもが絶妙なやわらかさで煮込んであり、食べやすかった。

また、ナンの生地はもっちりふわふわした感じではなく、クリスピーピザのようにやや薄め。サクサク感の中にしっとりした食感が味わえ、カレーとの相性もバッチリ。ナンをちぎる手が止まらなかった。

太ること前提でおいしい物を!!

今回紹介した料理は、マレーシアフードの魅力のほんの一例だ。この他、中華料理をベースにマレー料理のレシピを取り入れた「ニョニャ料理」も有名だし、海に面しているマレーシアでとれた新鮮な魚介類を用いたシーフード料理もマレーシアの名物だ。

マレーシアの人は、1日に5回も6回もご飯を食べると言われているほど、食事が生活の中心になっている。マレーシアを訪れた際は、多少の体重増量は覚悟の上でおいしい料理を思う存分、堪能してほしい。