日本医師会などはこのほど、「性・年齢別疾病の発症予防・重症化予防と日本型食生活の役割」をテーマに、「食育健康サミット 2014」を都内にて開催した。

講演では、あいち健康の森 健康科学総合センターの津下一代センター長が「中高年の肥満対策と生活習慣病予防のための食事処方」と題して登壇。近年は「やせにくい体質」の人が増えていることを解説した。

あいち健康の森 健康科学総合センターの津下一代センター長

BMIでエネルギーバランスの把握がしやすくなった

津下センター長はまず、厚生労働省がこのほどまとめた2015年版の「日本人の食事摂取基準」(食事摂取基準)によって、自身のエネルギー収支バランスが把握しやすくなったことが、生活習慣病改善にプラスに働くことを説明した。

「従来のエネルギー収支バランスは、カロリー計算という難しく面倒な方法でしたが、このたび、BMI(体重/身長×身長)の目標数値を基準に調整するという大変簡単でわかりやすいものになりました。毎日体重計に乗って、自身のエネルギー収支バランスを意識することで、健康づくり、生活習慣病予防に励んでいただきたいと思います」。

食事摂取基準では、18歳以上のBMI目標値を男女共通で以下のように設定している。

■18~49歳: 18・5~24・9

■50~69歳: 20・0~24・9

■70歳以上: 21・5~24・9

各年代の上限値である24・9を超えるほど、生活習慣病である糖尿病や循環器疾患などの発症リスク、さらには総死亡率が高くなっていく。そのため、できる限りこの数値の範囲を維持できるエネルギー摂取が望ましいというわけだ。ただ、実際は高血圧や高血糖に悩んでいる中高年が多いと、津下センター長は指摘する。

「現代は、薬によって血糖値や高血圧をコントロールしている中高年の方々が非常に多いです。ただ、たとえ薬の力によって特定の数値を下げることはできていても、肥満などの生活習慣病の発症を高めるファクターがコントールできていなければ、根本的な予防対策にはなりません」。

一見、BMIは低下しているものの……

では実際に、生活習慣病に悩む人は増えているのだろうか。

平成24年国民健康・栄養調査報告によると、中高年男性の約3割、女性の約2割が肥満に該当していた。男女とも、同調査報告の3年前の2009年をピークに減っている傾向にあり、糖尿病の有病率も1997年の調査以降、初めて減少に転じている。

「健康日本21」の取り組みや保健指導などの普及により、国民の健康意識やメタボ対策意識が高まり、肥満の増加に歯止めがかかったことなどが理由として考えられると津下センター長は話す。だが一方で、別の問題が浮上してきたという。

「男性は働き盛りの40代のBMI平均値が約25と最も高く、50代ではやや低下傾向を示しています。ですが、全国の特定健診データを集約したナショナルデータベースによると、50代のBMIは低下していても、腹囲のサイズの低下は見られません。このことから、内臓脂肪量は減少しにくいものの、筋肉量を含めた体重の減少があることがうかがえます」。

筋肉が落ちるということは、基礎代謝が減ることを意味する。すなわち、表面上はBMIが減ってやせているように見えるものの、実際は「やせにくい」体質になっているということだ。

男女別の年代ごとのBMIとウエストの推移

さらに中高年期は、生活活動量が減少するため運動不足となり、エネルギー消費量も減少する。油断をすると、すぐに体重増加や脂肪蓄積にいたってしまうことになる。

無理のないマイルドな減量をすることが大切

だからといって、津下センター長は体に"ひずみ"が出るようなダイエットは避けるべきだと主張。毎日の食事をしっかりと摂(と)ることで間食が減り、メタボリック症候群の人たちのダイエットが成功するというデータも出ているという。

「偏った無理のあるダイエットは長続きせず、たとえ一時期的にやせても、すぐにリバウンドします。メタボなどで体重管理を(医師らから)指導された方々は、無理のないマイルドな減量を心がけてください」とし、中長期での積み重ねによって体重を落とすのがよいとまとめた。