アートディンクから発売された『A列車で行こう3D ビギナーズパック』。都市開発&鉄道会社経営シミュレーションゲーム『A列車で行こう3D』に攻略ガイドブックを追加した特別版だ。著者は本誌連載「鉄道トリビア」「列車ダイヤを楽しもう」などでおなじみの杉山淳一氏。今回は発売を記念し、杉山氏に攻略ガイドブックを「ガイド」してもらった。

『A列車で行こう3Dビギナーズパック』ガイドブック付きで6998円(税込)

「初心者向け」には収まらない内容

『A列車で行こう3D』は、鉄道会社を経営し、子会社としてまちづくりに関与して、マップに与えられた目標をクリアするゲーム。目標は人口だったり、株式公開だったり、産業比率だったりする。これらの目標はチュートリアルで学ぶ要素だけでも達成できる。今作『A列車で行こう3D』も、前作『A列車で行こうDS』と同様、ゲーム内のチュートリアルを遊ぶことで、ゲーム内容はほぼ把握できる。

では、ガイドブックの役割とは何だろう? 杉山氏は、「ビギナーズパックに付属するガイドブックですから、初めて遊ぶ人にゲームを理解していただく内容となっています。でも、このゲームはチュートリアルで基本の遊び方は理解できます。そこで前作と同様、実際の鉄道の運営を踏まえた上での線路やダイヤのテクニックを紹介しています。ゲームをやりこんだ人や、内容をもっと知りたい人にも役立つと思います」と説明する。

ゲームを起動しないときも楽しめるように

ゲームのガイドブックに必要な要素は、「ゴールへ導くヒント」と「便利なデータ」だと考えられる。これはシミュレーションゲームに限らず、ロールプレイングゲームなども同じだ。マップ紹介ページの開発事例は、「ゴールへ導くヒント」にあたる。マップをなるべく大きく配置し、マップ内に初期配置された建物の位置を示している。

「ゲームを起動すれはわかることですよね。でも、マップを大きくした理由は、ゲームを起動しないときに、本書を眺めて路線計画を立てるためです」と杉山氏。電車の中や学校、会社など、ゲーム機で遊べない(持ち込めない)場所でも、本書を開けば路線計画を立てられる。

マップは地域の紹介2ページと開発事例2ページで構成される

「マップ紹介ページについては、『ゴールへ導く』というより、『初めの一歩を手助けする』という意図があります。初めて遊ぶ人も、遊び慣れた人も、シナリオマップを開いて悩むところは、『最初に何をしよう? どこに駅を置こう?』だと思います。そこで詰まってしまう」(杉山氏)。それはつまり、ライターが原稿を書くとき、1行目に悩む感覚と同じようなもの……? いや、ゲームの場合は楽しい悩みだろう。

また、杉山氏によれば、「開発事例は3段階の難易度のうち、『やさしい(初級)』の目安です。『標準(中級)』『いばらの道(上級)』では異なる戦略が必要かもしれません。そこまでやるとネタバレになってしまうので、プレイヤーさんの悩みどころ、つまり楽しさを残しています」とのこと。

マップ紹介ページには、行政区域名と埋蔵資源の位置も掲載している。行政から支援の申し出があったときに把握しやすい。同じゲームで遊ぶ仲間とマップの話題になったときに、地名がすぐにわかると便利だ。

「埋蔵資源を探す楽しみもあると思います。でも、路線計画を助ける攻略要素として、あえて明示しました。メーカーさんからいただいた情報をどこまで公開するか? というバランスはいつも悩むところです。地名はプレイすればわかる情報なんですね。でも、あえてガイドブックに載せて、いつでも見られる形にしたかった。プレイヤー同士のコミュニケーションツールになれたらいいなと思って」と杉山氏は語る。

新要素として貨物の種類が増えた。資源の生産地と消費の一覧表が「便利な要素」

すべての建物データを紹介

建物データページは、ゲームに登場する建物をすべて紹介している。ゲームで子会社として設置する建物だけでなく、自然に発生し、子会社として売上げを期待できない建物もある。そのため、建物データページは分厚い。まるで図鑑みたいだ。

「マップコンストラクションでは、ゲームでプレイヤーが建設できない建物も自由に配置できます。このゲームはどんな小さな建物にも人口や必要資材量などの数値が設定されています。建物の配置とデータを見れば、ここに駅を作ると何人くらいのお客さんが期待できそうだな、資材をどのくらい使ってくれそうだな、判断しやすくなります」と杉山氏。都市全体の把握に役立ち、鉄道建設にあたってマーケティングの要素となる。このデータはビギナー向けというより、「やりこみたい中級・上級者向け」といえそうだ。

230以上の建物をすべて紹介

画面のないページが多数、異例の構成

ゲームの攻略ガイドといえば、ゲーム画面がたくさんあって、1カットずつ説明が付くという構成が普通だ。しかしこのガイドブックは画面がないページも多い。ゲームのガイドブックとしては異色の構成といえそうだ。「線路の配置とダイヤ設定については、画面より図のほうがわかりやすいと思います。なるべく少ない線路に、たくさんの列車を走らせる。それは実物の鉄道の運行のテクニックと同じですから」と杉山氏は説明する。

図を駆使して、鉄道路線の作り方やダイヤ作成法を紹介

加えて杉山氏は、「線路の配置やダイヤ設定を工夫すると、もっと楽しく、もっと早くゴールにたどり着けますよ。ゲームに上達すると、実物の鉄道の理解も深まると思います。『どうして特急はうちの最寄り駅を通過しちゃうんだろう?』とか、『何でこの電車は終点まで行かないで折り返しちゃうんだろう?』とか」とも。全列車の性能データと230以上のすべての建物データは、すでに遊んでいる人にとっても新たな発見があり、便利だと思われる。

なお、「もうゲームは入手しているから、攻略ガイドブックだけほしい」という人のために、電子書籍版も発売予定とのことだ。前作『A列車で行こうDS ナビゲーションパック』に付属していたガイドブックも電子書籍化されるとのこと。ふたつ合わせて読むと、ゲームと実際の鉄道運行の両方について理解が深まるだろう。