経済協力開発機構(以下、OECD)は9日、ワーキングペーパー「所得格差の動向と経済成長への影響」を発表した。それによると、多くの国において所得格差が経済成長を損なっており、その主な要因は貧困層への教育投資不足であることがわかった。

推計によると、メキシコとニュージーランドでは、格差拡大が過去20年間の成長率を2000年代後半の経済危機までに10%以上押し下げた。また、イタリア、英国、米国では、所得格差が拡大していなければ累積成長率は6~9%高くなっていたという。一方、スペイン、フランス、アイルランドでは、経済危機前の格差縮小が1人当たりのGDPの増加に寄与していた。

Income inequality increased in most OECD countries(出典:OECD Webサイト)

OECDは、所得格差が縮小している国は拡大している国より速く成長すると分析。経済成長にとって最大の問題は、下位中間層および貧困世帯とそれ以外の社会層との格差が拡大していることだとし、重要なのは教育で、格差が成長を損なう主な要因は貧困層の教育不足だと指摘している。

新たな研究結果によると、貧困家庭の子どもの教育機会が損なわれることで社会的流動性が低下し、技能開発が阻害され、経済成長に影響を及ぼすことが判明。低学歴の両親を持つ場合、格差が拡大するにつれ、教育成果が悪化するのに対し、中学歴または高学歴の両親を持つ場合は、格差が拡大してもほとんどあるいは全く影響を受けないという。

また、経済成長への影響は下位40%の所得層との格差からも発生しており、貧困防止対策だけでなく、現金移転や公共サービスへのアクセス拡大も機会均等化を進めるための重要な社会的投資だと指摘。なお、適切かつ対象を絞った政策の下で実施される限り、再分配政策が経済成長を損なうことはないとしている。