10月30日に発表された「ミシュランガイド香港・マカオ編2015」。食の都・香港では、ミシュランのお墨付きは高級料理からB級グルメまで、さまざまなジャンルの飲食店が選ばれる。地元・香港の人から愛されるB級グルメのひとつである麺、さて、ミシュラン審査員をもうならせる麺料理とはいかに?
香港伝承つるっとした「竹昇麺」を使用
九龍サイドの下町・サムスイポー。ここで1956年の創業以来、地元の人に愛され続ける麺がある。「竹昇麺」は昔から香港で受け継がれている調理法で、今や工場も少なく、食べられる店も少ない。竹の棒を使って麺を打つのだが、機械で打つ麺よりとコシと滑らかさがあり、しっかりとした食感を残しながらも簡単にサクサクとかみ切れるのだ。
この麺にこだわり、近くに麺打ち工場を作ってしまったのが「劉森記麺家 Lau Sum Kee Noodle」。生麺なので2日間で使い切るため、いつでも新鮮だ。ちなみに、麺にはアヒルの卵を入れてコシを出し、かん水を入れてさらに歯ごたえをアップさせている。
エビの卵の食感とその匂いにやみつき
この自慢の麺に醤油とラードを絡め、蝦子(乾燥させたエビの卵)をふりかけたのが、看板メニューの「蝦子撈麺」。撈麺は汁なし麺という意味だ。蝦子は粒が大きく味も濃厚で食感がいいといわれる中国広東省の斗門から仕入れたもの。蝦子のふりかけが満遍なく麺に絡まり、日本の汁なし麺よりもよりカラッとしている。
明太子より一層細かいツブツブの食感と濃厚な蝦子の味が見事に調和し、汁なし麺独特の歯ごたえとが相まって、結構な食べごたえがある。付け合わせにワンタン麺用の特製スープがついてくるので、麺にかけるかスープに麺をつけて食べてもよし。
自家製の濃厚ワンタンも
ワンタン麺が食べたいなら、「蝦子淨雲呑」(32香港ドル=約490円)を。自家製ワンタンの中には蝦のほかに蝦子が入っており、口にしたとたんに濃厚なエビの香りが口にじゅわーっと広がる。麺のしっかりした歯ごたえと濃厚なワンタン、そしてこれに負けないのが特製スープである。
濃厚に仕上げられたスープは、豚骨と大地魚というヒラメのような魚を干したもの、干しエビ、羅漢果などをじっくり煮込んで作られている。汁があるとより一層、竹昇麺のつるっと感を味わえるので、こちらのワンタン麺も大人気なのがうなずける。
麺は細麺と太麺(平打ち)があり、どのメニューでも麺を選べる。太麺のほうがスープを吸収してボリューム感とともにスープと麺のうまみが強くなるので、濃厚派はぜひ太麺にトライしてみてはいかがだろうか。ちなみに太麺は1日100食のみとなっている。
なお、漬物は屋台で営業していた創業当初から受け継がれているものだそう。香港の麺屋さんでは昔はよく見かけたが、今ではほとんどお目見えしない。暑い夏は身体を冷やし疲れをとるのと同時に、食欲増進の効果もあるという。
劉森記麺家Lau Sum Kee Noodle(OpenRice掲載ページ)
※1香港ドル=15.2円で換算。記事中の価格・情報は2014年10月取材時のもの