昨年12月23日に開業55周年を迎えた東京タワー。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』など様々な作品にも登場するように、東京の視覚的な象徴として東京タワーを思い浮かべる人は少なくないだろう。観光名所としてのみならず、建築物としての東京タワーを調べてみた。

東京タワーにのぼってみた

「塔博士」が設計

東京タワーを設計したのは「塔博士」として知られる内藤多仲氏である。同氏は耐震構造理論の権威で、名古屋テレビ塔や大阪通天閣などを手がけた人物だ(鮫島敦『東京タワー50年』、2008年、日本経済新聞出版社、106頁)。

東京タワー総合メディア部の澤田健氏によれば、内藤多仲氏は「東京タワーは、美しくしようとして作ったのではなく、無駄がなく安定したものを作ろうとした結果、美しく仕上がったのだ」という意味の発言を残している。これは"数字の作った美しさ"とも呼ばれている。電波塔に展望台という役割に、耐震や安全性を加えた結果が東京タワーの形なのだ。

東京タワーを見て「安心感がある」といった声を聞くこともあるそうだ。それについて澤田氏は、「末広がりの安定感や4本の足で立っている安心感、昔から変わらずに東京にあるという存在感」が理由ではないかと話してくれた。「地方や海外から帰ってきたときに見ると、東京に帰ってきた実感を与えてくれる」という声もあるそうだ。

東京タワー、確かに末広がりだ

のぼれば繊細な構造美が

東京タワーは、階段でのぼることができる。フットタウン屋上から大展望台(150m)まで続く約600段の階段が「昇り階段コース」となっているのだ。土曜・日曜・祝日の11時~16時にオープンしている(「昇り階段」についての詳細はWebサイト参照)。話に聞いた機能美の秘密を探るべく、筆者ものぼってみることにした。

階段のスタート地点はフットタウン屋上。ここからは曲線美が目を引く「アーチ」がよく見える。また、塔のほぼ真下から東京タワーを見上げることができるため、鉄骨が組み合わされて成り立っている塔だということを実感できる。

アーチが目の前

東京タワーを真下から見られる!

階段に出てまず驚くのは、鮮やかな鉄骨の色。この色は赤ではなく「インターナショナルオレンジ」という。「白」との2色で東京タワーは塗られている。5年に一度の塗りなおしで塗り替えたばかりなので、よりいっそう鮮やかさを感じられる。

鮮やかな階段

階段をのぼっていると、外から見て想像していたよりも意外と細い鉄骨があることに気づく。太い鉄骨と細い鉄骨がきれいに組み合わせられている。

鉄骨がきれいに組み合わされている(写真の黒い線はフェンス)

外からは安定感と美しさを感じさせる鉄塔だが、中から見ることで緻密な構造と繊細さによって、安定感と美しさがつくられていると感じられた。「東京タワーには安心感がある」と言う人たちの「安心感」には、この「安定感」も含まれているのだろう。

階段中腹からの眺めも見ものだが、階段の途中から鉄骨越しに東京の景色を見る機会もそうそうない。

鉄骨越しに見る東京(写真の黒い線はフェンス)

変化する都市に思いをはせる

階段をのぼりきると、大展望台に到着。360度すべてから東京を見渡せる。2020年に行われる東京オリンピックの会場も、ほぼ全てがこの展望台の視界に入るという。地面から遠すぎないため、景色に立体感があるのが特徴だ。東京の真ん中で、今の東京を感じるのに向いているだろう。

また、立ち並ぶ高層ビルを一望することで、東京という都市の変化を感じることもできる。レインボーブリッジが目を引く湾岸エリアや、蜃気楼のように見える新宿高層ビル街、新しさが際立つ虎ノ門ヒルズ界隈など、変わり行く都市を目で見て確かめることができた。

さんま祭りなどのイベントも

東京タワーの場所は、東京都港区芝公園4丁目2-8。営業時間、アクセスなどの詳細や最新情報はWebサイトで確認できる。

9月23日には「三陸・大船渡 東京タワーさんま祭り」も実施。時間は9時30分~16時で、東京タワー屋外特設会場にて行われる(荒天中止)。炭火焼のさんま合計3,333匹などが振る舞われるとのこと。

東京タワーを改めて見ることで分かったのは、変化を続ける東京という都市に"いつもある"存在だったということだ。階段の途中からは、普段とは一味違う東京の景色も楽しめた。目まぐるしい日常に疲れたときにこそ、足を運んでみるのも良さそうだ。