787-9のデリバリー式典は7月8日の夜に催され、その2日後の7月10日早朝にはオークランドに向けて出発した。シアトルからオークランドまでは大圏距離で1万1,300km、飛行時間は14時間近くになるが、1万5,400kmもの航続距離を持つ787-9にとってはまだ余裕のある距離といえる。

デリバリーフライトのために用意された搭乗券とともに出発を待つ

ちなみに引き渡された初号機は、全面をニュージーランドのナショナルカラーである黒に塗っているが、2号機以降は前部胴体が白くなる。ニュージーランド航空では、各機種の特別な機体だけを全面黒にしている。また、胴体後部に描かれているのはニュージーランドを象徴するシダの葉であり、尾翼のマークはシダの新芽(コル)をデザインしたものだ。

ニュージーランドを代表するデザイナーのトレリス・クーパー氏が手がけた制服は、777-300ERの導入に合わせて2011年5月に投入された

大型のディスプレイが特徴的な787-9のコクピット

前を見たままデータを確認できるHUD(ヘッドアップ・ディスプレイ)

長距離飛行に備えるパイロット用仮眠室

エコノミークラスのシートがベッドになる

キャビンはフルフラットシートを斜めに配置したビジネス・プレミア18席、準ビジネスともいわれる幅広のシートを2-3-2席に配置したプレミアム・エコノミー21席、そして3-3-3席配置のエコノミー263席の計302席。また、エコノミークラスのうち14列のシートは、ベッドとしても使えるスカイカウチ仕様となっている。

スカイカウチはフットレストをシートの座面と水平に出すことによってベッドのように使えるユニークなシートだ。大人1名の場合はエコノミークラスの運賃にプラス8万円、大人2名の場合は運賃にプラス4万円(ひとりあたり2万円)という料金設定になっている(ニュージーランド航空を通じて購入した場合)。ビジネス・プレミアのように身体をまっすぐに伸ばすことはできないが、リーズナブルな追加料金で大きな快適性が得られるとして人気が高い。

3人掛けのシートをベッドとして使えるエコノミー・スカイカウチ

エコノミークラス

プレミアム・エコノミー

ビジネス・プレミア

ギャレー

ラバトリー

低騒音エンジンで機内も静か

ストレスのないエンターテインメントシステム

スカイカウチそのものは777-300より導入されているが、それ以外のシートは787-9への導入に向けて新規開発されたもので、そこに組み込まれた個人用エンターテインメントシステムも劇的によくなっている。プログラム数は約2,000で、何よりもタッチスクリーンの反応が素晴らしく、まったくストレスを感じない。ニュージーランド航空ではこれを787-9だけでなく777にも順次導入していく予定であるという。

かくして、クルーを含めてほとんどの人が初めて体験したという長いフライトにも関わらず、疲れを感じることなくオークランドに到着することができた。それは筆者だけでなく、キャビンクルーにも共通の感想である。

日本便には日本人もしくは日本語を話すCAが乗務している

ビジネス・プレミアで提供された機内食

7月10日早朝、強い雨風の中で787-9はオークランドに到着した(写真: ニュージーランド航空)

筆者プロフィール : 阿施 光南(あせ こうなん)

1958年生まれ、東京都出身。航空工学を専攻した大学時代からプロカメラマンとして活動。対象は主に民間航空分野だが、スカイスポーツから宇宙開発、あるいは気象解説まで多彩な著書がある。また、旧軍用ジェット機の操縦訓練を受けたパイロットでもある。