ハイカラでおしゃれなイメージが強い神戸だが、長田区のあたりには下町の風情たっぷりの商店街があり、庶民の胃袋を満たしている。この神戸・長田発のB級グルメと言えば、炭水化物×炭水化物の代名詞気的な存在「そばめし」である。

神戸市の「そばめし」の魅力は!? (写真は店舗「青森」のもの)

この界隈のほとんどのお好み焼き、焼きそば店はそばめしを提供しているので、このメニューを食すことができる正確な店舗数は不明だ。しかし神戸市内だけで50軒以上で食べられることは確実だろう。今日では冷凍食品としても発売され、全国的にもメジャーになったこのそばめしを、地元長田区で食べてみることにした。

工場の従業員が求めた時短メシ

最初に向かったのは元祖といわれる「青森」だ。兵庫なのになんで青森なのか。それは店主が青森さんだから。店構えはいかにも下町のお好み焼きという感じでレトロな庶民風の雰囲気だ。

店主の青森功樹さんによると、そばめしは「57年前に生まれたんです」とのこと。その経緯は「この辺りは工場が多くて、その従業員の人が、お昼ご飯に焼きそばを食べに来ていたんです。それでお弁当箱に詰めたご飯を持ち込んで焼そばと一緒に食べていたんです」。

電子レンジもない時代、冷たいご飯は鉄板の上で温めていたらしい。そのうち常連から、「別々に食べるのが面倒だから焼きそばとご飯を混ぜて焼いてくれ」と言われ、鉄板の上でそばとご飯を混ぜて焼くようになったという。なるほど、要するに時短の発想だ。

何はともあれ食べてみよう。そばめしは700円(税込)。できたて熱々の状態だと、香辛料の効いたソースの香りがあたり一面にただってくる。この匂いだけで食欲が3倍ぐらい増進しそうだ。ひと口食べるとアッツアツで、ソースの甘辛さが口いっぱいに広がる。がっつりなメシとしてもいいのだが、ビールのつまみにも食べたくなる味である。

ちなみにこちらの店は、土日は観光客が多いとのことだが、平日は地元の人が多く和気あいあいとした雰囲気だとか。また、今回はお皿で食べたが「鉄板の上から食べるのが一番おいしいよ」とのオススメをいただいた。

「青森」の「そばめし」は700円(税込)

●information
青森
兵庫県神戸市長田区久保町4-8-6

パラパラの秘密は焼き加減にあり!

次に向かうのは、こちらも地元の有名店「お好み焼き ゆき」だ。昭和55年(1980)創業の老舗で、そばめしは730円(税込)。独特の香ばしさが人気だというが、そのヒミツはどこにあるのか。

こちらのそばめしは口にすると、とにかく香ばしい。ご飯も麺も程よくパラパラとしていて食べやすいのである。ベースに薄く塩で味がついていてそこにソースの味わいがインパクト満点だ。

「うちはご飯をよく焼いて、それとは別にそばもよく焼いてから混ぜ合わせるんだよ」と言うのは店主の池端幸江さん。「麺をよく焼かないとベチャベチャしちゃっておいしくないんだよ。だから、血豆ができるくらい一生懸命焼いてるよ」と。とにかく徹底的に焼きこむことが味のポイントというわけだ。

「お好み焼き ゆき」の「そばめし」は730円(税込)

●information
お好み焼き ゆき
兵庫県神戸市長田区久保町4-2-5

甘辛い牛スジが味をぎゅっとしめる

最後に訪れたのは若者に人気の「長田タンク筋」だ。この店の一番人気のそばめしは、地元名物の牛スジ煮込み「ぼっかけ」をぜいたくに使った 「牛スジぼっかけそばめし」(860円・税別)。

ぼっかけとは、国産黒毛和牛を100%使って独自の仕込み方で煮込んだもの。ベースのそばめし自体は比較的あっさりとした味わいだが、甘辛く食感もらかい牛スジとマッチし、いくらでも食べられてしまう。

「長田タンク筋」の「そばめし」は860円(税別)

以上ざっと駆け足で紹介してきたそばめし。神戸の下町から生まれた庶民派・ご当地グルメを、是非現地で味わっていただきたい。

※記事中の情報・価格は2014年5月取材時のもの