妊娠検査薬といえば、「尿をかけるだけで手軽に妊娠判定がおこなえる便利なキット」ということは多くの人が知っているかもしれません。では、なぜ妊娠がわかるのでしょうか? なぜ病院に行く前に自分で調べる必要があるのでしょうか? 手軽にできる検査だからこそ、知っておきたい妊娠検査薬の正しい使い方や目的を紹介します。

妊娠中にしか分泌されないホルモンに反応して結果が出る

そもそも、妊娠検査薬はどのように妊娠を判定するのでしょうか。それにはホルモンが関係してきます。女性が妊娠すると赤ちゃんのへその緒とママの子宮をつなぎ、酸素や栄養を送るための「胎盤」が作られ始め、そこから「ヒト絨毛性ドナドトロピン(hCG)」というホルモンが分泌されます。「hCG」は妊娠中におなかの赤ちゃんを守り、胎盤を育てる働きを持つホルモンで、分泌されると尿の中にも出てきます。妊娠検査薬は、尿の中に含まれる「hCG」を検出すると陽性反応が出るしくみになっています。

hCGは妊娠4週目ごろから尿に出てくるので、例えば、生理の周期が28日の人なら次の生理予定日のころに、妊娠がわかります。最初はhCGの量が少ないため、妊娠検査薬は一般的に「次の生理予定日の1週間後」から使うこととされています。生理の周期や前回の生理開始日がわからない場合は、「セックスをした日から3週間後」が検査できる時期の目安となります。

検査方法は、検査薬の採尿部に2~5秒ほど尿をかけるか、紙コップにためた尿に採尿部を浸すだけ。キットを水平に置いて約1分待てば判定結果が得られ、その正確さは99%といわれます。

なぜ妊娠を早く知ることが大切と考えられているのでしょうか。妊娠したらおなかの赤ちゃんの発育とママの健康を守るためにもお酒やタバコを避け、風疹などの感染症を予防し、薬の使用にも注意が必要になってきます。特に妊娠初期は赤ちゃんの脳や心臓など、体の大切な器官が作られる時期で、外からの影響も受けやすいときだからです。

ただし妊娠以外でも不妊治療などで排卵誘発剤の投与を受けている場合や、別の病気が原因で陽性反応が出ることもあります。そのため、妊娠検査薬の結果だけで自己判断せず、必ず産婦人科を受診し確定診断を受けることが必要です。

また、人によっては妊娠初期には尿の中のhCG量がごく少なく、陽性反応が出ないこともあります。陰性の判定が出ても生理が来ない場合は1週間後に再検査するか、産婦人科を受診しましょう。

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善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など