本日6月21日、ついに世界遺産入りを果たした「富岡製糸場と絹産業遺産群」。見学などの際にこの群馬県富岡市に訪れたら、ぜひご当地グルメを味わって帰りたい! そこで、富岡製糸場近くの、レアなご当地名物が食べられる店を紹介しよう。
天然繭のうどんで肌もつるつるに!?
今回紹介したいのは「富岡シルク麺」だ。その名の通りうどんにシルク、すなわち絹の主成分が配合された麺である。その主成分は「フィブロイン」と呼ばれるもので、そこから抽出されたシルクタンパク質がうどんに配合されている。シルクタンパク質によってうどんはつるつる感が増し、コシも強くなると言う。そして、食感もまた独特。
富岡シルク麺「まゆ美人」は、上州富岡の美しい水と空気が育んだ富岡養蚕農家の富岡シルクフィブロインと、群馬県産小麦の麺が配合された独自の麺。この麺を使ったうどんなどが食べられる店が、富岡製糸場近くの食事処「たちばな源氏庵」である。
店主である土屋吉雅さんによれば、富岡シルク麺「まゆ美人」を使ったうどんを目の前に、若い女性たちは自分もこの麺のように「つるつるのお肌になれる」ことを期待して胸躍らせるという。年配客からは、「さなぎは入っていないよね?」などとちょっと心配性な意見も出るようだが、そのつるつると食感の良い麺の味わいは老若男女問わず好評のようだ。
たちばな源氏庵の夏メニューのまゆうどん。(正面手前から反時計周りに)「サラダまゆうどん」1,029円(税別)、「冷桶まゆうどん」800円(税別)、「カレーうどん」900円(税別)、「田舎うどん950円」(税別) |
繭と生糸の生産量日本一を誇る群馬
そもそも「富岡製糸場と絹産業遺産群」って? という人にちょっと説明したい。群馬県富岡市の富岡製糸場を中心とした絹産業遺産群は、群馬県内に今もなお残る、養蚕・製糸・織物に関係のある文化財。まさに群馬の絹糸産業の発展を物語るものといえる。富岡製糸場は明治維新後、外国が喜んで高く買ってくれたという生糸の模範工場として、フランスの技術を元につくられたそうだ。
そんな群馬における養蚕の起源は、古く奈良時代にまでさかのぼる。長年に渡って、繭・生糸の豊かな絹文化を築いてきたが、富岡製糸場が築かれてからさらに発展したという。現在は繭と生糸の生産量日本一を誇り「絹の郷」とまで呼ばれている。その優良な繭は「ぐんまシルク」として、品質においても非常にレベルが高いといわれている。
群馬名物「おっきりこみ」もシルク麺で
もちろん、群馬の魅力は絹だけではない。小麦作りにぴったりの気候条件であることから、群馬では昔から米より粉文化が発達してきた。うどんなどの粉食料理は、地元民にとって身近な主食なのである。
中でも、日常的に庶民の間で食されてきたのが「おっきりこみ」。塩は使わず、幅広に切った麺を下ゆでせずに、ニンジンや長ネギ、ダイコン、シイタケ、ジャガイモ、サトイモなどと一緒に煮るおっきりこみは、今では群馬の郷土食として広く知れ渡っている。
下ゆでしないことで打ち粉が汁に溶け出し、とろみが出る。その名の由来は、のばした生地を綿棒に巻いたまま包丁で切り込みを入れることや、麺を切っては入れ、切っては入れるその調理過程からきているという。そんなおっきりこみは、たちばな源氏庵でも食べることができる。同店ではおっきりこみを通年で提供しており(春・夏は数量限定)、それも、シルク入り手打ち麺で楽しめる。醤油ベースの味わいは、幅広い層に支持されているようだ。
世界遺産登録で話題の富岡に訪れるなら、味覚でもシルクを楽しめるこのグルメを求めてみてはいかがだろうか。店は富岡製糸場から車で約5~6分、徒歩約30分。県道10号線沿いにある。なお、店には車が40台ほど停められる駐車場もあるのでご安心を。
富岡製糸場まではJR高崎駅から上信電鉄に乗り換えて約40分の上州富岡駅下車、徒歩約15分。見学で思いっきり歴史を吸収し、空いたおなかにたっぷりのつるつるしこしこ麺を味わえば、世界遺産登録記念を個人的にも祝うことができそうだ。
※記事中の価格・情報は2014年6月取材時のもの