コンビニやスーパーの弁当では若干物足りない。そう感じる読者も多いのではないだろうか。そんな悩みを解決してくれるお弁当屋さんこそが、東京都・早稲田にある「わせだの弁当屋」。略して"ワセベン"である。

早稲田学生の胃袋を支え続けた驚異の弁当

以前から早稲田出身の知人に「ワセベン、ヤバいよ」と聞かされていたが、実際に訪れてみると確かにそのヤバさを実感。まず、弁当が圧倒的に安すぎる。例えば餃子&唐揚げがのった「ギョーカラ弁当」、シューマイ&唐揚げを盛り込んだ「シューカラ弁当」、茄子&唐揚げの「茄子カラ弁当」がいずれも350円ですよ。利益が出ているのかと心配になるような価格だが大丈夫なんですか、店長の西坂さん!

「昭和40年代からずっと同じ場所で営業してきたんだけど、その頃から早稲田の学生さんたち向けに弁当を作り続けてきたんです。だから価格も控えめなんですよ」。

地下鉄東西線早稲田駅より徒歩3分ほど。早稲田大学・大隈講堂のすぐ近く。黄色いひさしや看板が目印だ。レジ前のメニュー看板を見ると……面白いネーミングの商品も

メニューの看板を見ていると、面白いネーミングの弁当が多数。肉食系にオススメしたい「パワー弁当」や直球ネーミングの「ドカ弁」。そして……「たぬき弁当」って何ですか。

「先代の社長が考案したメニューなんですよ。ウチは揚げ物が多いので天カスがよく出るから、それをご飯の上にのせて甘辛いタレをかけたものが『たぬき弁当』です。お金のない学生さん向けに開発したそうなので、250円と激安なんです(笑)」。

そんな学生への愛が溢れたメニューがあるとは! ならばその「たぬき弁当」と、西坂店長が一番人気と語る「茄子カラ弁当」を注文しまっす!!

「『茄子カラ弁当』はマシますか」。

……マシ? マシって言うとあの黄色い看板のラーメン屋さんこと某「二●」が聞いてくる、あのマシ??

「ウチの弁当はプラス50円すると唐揚げを2個追加できるんです。マシマシはプラス100円で4個追加。どうします? 」。

すでに1人で弁当2つを注文しているのだが、最高峰の頂があるならば登らなくては……と、「茄子カラ弁当」はマシマシ、ついでに大盛り(プラス50円)で注文。それでも500円とワンコインで収まるのはさすがである。

悩殺"からチラ"

注文後、2品とも5分もかからずに出てきたのだが、弁当のフタが閉まりきらず、魅惑の"からチラ"(※唐揚げのチラリズム)。物言わぬアグレッシブさが伺え、圧倒的なプレッシャーを感じずにいられない。まずは「茄子カラ弁当」と勝負だ。

ドカンと7つ鎮座する唐揚げ。その下には茄子の輪切りを揚げた物がぎっしり

12種類のスパイスを使っているという唐揚げを一口食べてみると、確かにスパイシーだが日本人好みの味付け。そして揚げた茄子が甘辛のタレと絡んで破壊力抜群。確実にハイカロリーすぎるのだが、油っこさやモタレなどを感じさせず、あっという間に完食。そして、胃から脳へと送られる満足感……。物足りなさなど皆無である。

「たぬき弁当」は米の上に天カスとネギ。キンピラ、昆布の佃煮、しば漬けがアクセント

脳には満足感と同時に、もうこれ以上は危険というシグナルが送られているが、続いて「たぬき弁当」に挑戦。まるで長年連れ添ってきた夫婦かのように阿吽の呼吸を見せるほっこりごはんとサクサクの天カス。そして、それを結びつける甘辛のタレに「子はかすがい」という言葉を連想せずにはいられない。これは250円のレベルを逸脱しているぞ。そしてアクセントのキンピラたちもいい仕事をしてくれてなんとか完食した。

学生たちへの溢れる愛を弁当箱に詰め込んだ「わせだの弁当屋」の弁当たち。ワンコインで確実に腹を満たしてくれる弁当屋として、覚えておきたい。

(文・A4studio牛嶋健)