シリーズ累計120万部突破のミステリー小説

シリーズ第一弾「珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を」著者: 岡崎琢磨 発行: 宝島社(648円・税別)

「珈琲店タレーランの事件簿」というミステリー小説をご存知だろうか。 『このミステリーがすごい! 』大賞シリーズからデビューした大型新人が描くミステリーシリーズで、現在第三弾まで出版されており、シリーズ累計120万部突破の大ヒット。最新刊「珈琲店タレーランの事件簿3 心を乱すブレンドは」が3月に発売となり、さらに注目度がアップしている。

同作品の舞台は京都。京都の街中にある一軒の珈琲店「タレーラン」の女性バリスタ・切間美星(とっても美人さん! )が、数々の謎を解き明かしていく、といったストーリーだ。京都が舞台だけあって、通りの名前や地名が頻繁に登場し、「イノダコーヒー」という実在する京都の名店の名前も出てくる。京都好きならば、小説を読んだだけで京都の情景が浮かび上がってくるような内容となっている。

さらに特徴的なのが、小説の中にコーヒーのうんちくや味わいに関する表現が度々登場するという点。切間バリスタの淹れるコーヒーは「絶品」とされ、作中では「唇から注ぎ込んだ瞬間、鼻腔にふわりと広がる香ばしさ。次いで感じたのは、そっと舌をなでるような甘みだった。丹念に炒られた豆だけが生み出せる絶妙な清涼感が、刺々しくなりがちな後味を上手にフェードアウトさせている」と描写されている。

次々と出てくる謎にぐいぐいと引き込まれているのはもちろんだが、読み進めていくうちに「おいしいコーヒーが飲みたい! 」と感じるのもこの小説の特徴だろう。

そう、「珈琲店タレーランの事件簿」は、コーヒーが飲みたくなる小説なのだ。しかも、普通のコーヒーではダメ。おいしいコーヒーじゃないとっ!!

ということで、東京都内で絶品コーヒーを出すカフェを探してみた。どうせなら、小説の世界観がそのまま楽しめるよう、美人バリスタのいるお店がいい。そこで目をつけたのが東京・表参道にあるカフェ「ラテスト 表参道 エスプレッソ バー(LATTEST OMOTESANDO Espresso Bar)」だ。

バリスタは全員女性

「ラテスト 表参道 エスプレッソ バー(LATTEST OMOTESANDO Espresso Bar)」

店内はコンクリート打ちっぱなしでスケルトンの天井。男性的な雰囲気の漂う店舗デザインだが、バリスタは全員女性! しかも、監修は「ストリーマー コーヒー カンパニー(STREAMER COFFEE COMPANY)」の代表でバリスタの澤田洋史さん。澤田さんといえば、コーヒー業界で知らない人はいない有名人。「フリーポア・ラテアート・チャンピオンシップ」の世界チャンピオンで、「マックカフェ」や「ニコン COOLPIX S640」といったテレビCMでもその華やかで美しいラテアートを披露してきた。ラテストのバリスタ兼マネージャーの伊藤麻美さんは、ニュージーランドの人気カフェで勤務の後、ラテストのオープンにあわせて招聘され、澤田さんのもとでみっちり修行。同店の立ち上げから携わっている。

バリスタ兼マネージャーの伊藤麻美さん(写真左)はラジオDJとして活躍後、ワーキングホリデーで訪れたニュージーランドでカフェにハマり、人気カフェに勤務。その後「ラテスト」のオープンに合わせて招聘され、「ストリーマー コーヒー カンパニー」代表でバリスタの澤田洋史さんのもとでみっちり修行した。写真右はバリスタの滝口希さん

冷たいミルクと熱いエスプレッソの魅惑のマリアージュ

ラテストの看板メニューは、店名を冠した「ラテスト」(420円)。冷たいミルクを入れたショットグラスに、通常の約3倍のコーヒー豆を使った濃厚なエスプレッソを落としたドリンク。冷たいマキアートといったイメージで、もともとマキアート好きだった澤田さん考案のドリンク。同店でのみ提供しているオリジナルの商品だ。

「カフェラテ」(450円)

「ラテスト」(420円)

「ラテストは、オイルがしっかりと出るように深く焙煎したコーヒー豆だからこそつくることができる商品です。普通のエスプレッソだと、ミルクにすーっと混ざってしまいますが、この豆を使うとオイル分が表面に浮いた状態になり、きれいな層になります」と伊藤さん。

ひとくち目、温かいエスプレッソが口の中に流れ込み、ガツンとした味わいが口内に広がる。ワインでいえばフルボディの赤ワインを飲んでいるような、チョコレートでいえばカカオ80%のタブレットをかじったような感覚だ。

そのうちに、冷たいミルクが後追いしてくるので"あつひや感"を楽しめ、徐々にミルキーに変化していくエスプレッソの味わいも面白い。しかし、飲み進めていっても、エスプレッソの香り高さは失われることがなく、飲み終わった後もいつまでも余韻に浸っていられる。独特の魅力にハマる人が続出とのことで、立て続けに9杯飲んだお客さんもいたのだとか。リキュールを加えたアレンジバージョンもあるので、飲み比べてみても楽しいだろう。

ちなみに現在同店でバリスタとして働く滝口希さんは、元々コーヒー嫌いだったが、この店のカフェラテを飲んでコーヒー好きに。さらにそれがきっかけとなってバリスタになったとのことだ。コーヒーが苦手な人をも虜にしてしまうラテストのコーヒー――。どうだろう、読者の皆さんも気になってきたのではないだろうか。

女性バリスタのみのお店で、しかも美人バリスタばかり。しかし、提供するコーヒーはなかなかに男性的で力強い味わい。非常に強く印象に残る。ラテストで「珈琲店タレーランの事件簿」を読みながらコーヒーを飲めば、あなたも小説の登場人物の1人となって、切間バリスタと一緒に謎解きをしているような気分になれそう。ぜひ、ラテストで小説の世界観を楽しんでみてほしい。

バリスタは全員女性。ピックや爪楊枝を使わず、ピッチャーから注ぐミルクのみでラテアートを仕上げるフリーポア・ラテアートが楽しめる。テイクアウトは紙のカップを使用するが、その際にもラテアートをしてくれる。実は紙のカップでのラテアートは難易度がとても高い!