研修を終えて実務を始めている新入社員も多くなってきたでしょうか。5月病なんてものがありますが、こと新入社員において原因となりやすいのが「社会人になって初めて叱られる」こと。

大卒の平成生まれが会社員になる時代になり、彼らゆとり教育を受けた世代は打たれ弱いという批判がそこかしこでなされています。かく言う私は「平成ベビーの会社員」第一世代でありまして、批判される彼らの心情や考え方は理解できます。

ゆとり世代、打たれ弱いわけじゃないんです

そこで、新入社員を叱る諸先輩方には言いたい。
打たれ弱いんじゃないんです。
「真に受けているだけ」なんです。

ゆとり世代は好景気を知りません。私は平成2年生まれですが、誕生した瞬間にバブルが弾けるという社会からの一種の裏切りを受けており、諸先輩方とは違って未来に展望を持っている社会に触れた経験に乏しいという現実があります。

物心ついた頃からテレビで、やれ不景気だ、やれリストラだのと繰り返し報道されていれば、子供向けテレビ番組の安穏として希望に溢れた言葉の数々が偽りであったことにも薄々感づきます。

すると自分を否定するものを受け流して「まァ、何とかなるっしょ」と楽観的に捉えたり、反骨の精神を持って「なにくそ! やったろうやんけ!」と自分を鼓舞することが能力として低くなってしまう傾向を持つ世代が出来上がりました。

それでも新入社員を教育して立派な企業戦士に育てなければならない使命をお持ちになられる先輩方です。

せっかくですからゆとり世代の新入社員が「すっ」と伝えたいことを受け止められる注意の仕方にしませんか。人を注意するにもエネルギーが必要ですから、できる限りエコでいきましょう。

私も社会人3年目になり、少しばかりは先輩方の新人に対するモヤモヤなどが感覚として分かるようになりましたゆえ、ご参考になれば幸いです(後輩に対しては上司より気を使いますね……)。

新人が思ってること「顔が笑える」

新入社員を注意するときは、以下のことに留意してくだされば幸いです。

・キレる必要があるのか

目を血走らせて唇をわななかせ、そして声を荒げるアナタを見て、新入社員がまず思うのは「こわっ」か「めんどくさ」か「顔が笑える」のいずれかです。キレるだけ体力の無駄です。玄関前のゴミ拾いでもしたほうがよっぽど会社のためになります。

目的があってキレる様子を見せたいなら別ですが、そうでないならば大人の嗜みとして感情を抜きにして伝えましょう。上記したように受け流さないのがゆとり世代ですから、落ち着いて話せばしっかり反省できる人が多いですし、残る印象がまったく違います。

・本人だけの責任なのか

経験があればうまくこなせることでも新入社員は全てが初めてに近いわけで、仕事のコントロールができない場合が多々あります。怠惰などの完全に本人の責任であれば別ですが、「別に指示をした人間がいるかも」「教えてあげなかった人がいるかも」と、新入社員の立場から少し想像してみてください。少しでも共感の言葉をかけてあげつつ「だけどね」と注意してあげれば、新入社員は自分の悪い部分を意識してより効果的に反省できます。

・次につながる失敗なのか

新入社員は、やることなすこと全てが挑戦。なかには先輩方からは理解できない不可思議な言動をとられ、その結果、「最近の若いやつはわからんよ……」と濃いため息を吐き出すこともあるでしょう。しかし、それはテンパってしまっていただけかもしれませんし、本人なりに考えた結果なのかもしれません。次回の成功に繋がるものなら、叱る部分は叱り、認められる部分は認めてあげてください。伸びしろを作ったことに気付けずに腐っていけば、大きな損失ですから。

・先輩方自身の言うことに論理性や合理性はあるのか

上記のように、ゆとり世代は先の見えない状況で頑張ることを嫌う傾向があります。そもそも論理的でも合理的でもないものを人に押し付けるのは異常だというくらいの認識でいますので、逆の発想を持つようにしましょう。「なぜキミは注意されるのか」「これを正せばどんなメリットがあるのか」などを明示すれば、むしろ従順に取り組むはずです。

・ブーメランではないか

新入社員は職場に慣れていないこともあり、先輩方が思う以上に周囲を観察し、記憶しています。注意するときに新入社員だと侮って好き放題を言っていると、後になって行動を観察されて「お前ができとらんやんけッ!」と思われることになり、信用度は絶望的に低くなります。新入社員はいろんな人に注意されることが多いので「人に厳しく自分に優しい」に敏感です。注意は自分の行動を制限していると心得ましょう。

以上のことにご留意いただければ、新入社員の同期飲み会でボロクソに陰口を叩かれることもないはずです!

※画像は本文とは関係ありません


武野光
平成2年生まれ。「TOEIC未受験」「サークル未所属」「友達の数が片手未満」といった状況から就職活動に挑み、その体験から得た教訓をつづったブログ『無能の就活。』が大きな反響に。現在はサラリーマンと兼業で作家活動を行う。著書に『凡人内定戦略』『凡人面接戦略』(中経出版)、『就活あるある ~内定する人しない人~』(主婦と生活社)など。また、週刊ビッグコミックスピリッツ「キミ! さいよー」(石原まこちん/小学館)内で「平成ベビーの就活用語辞典」連載中。