第2局・佐藤紳哉六段 対 やねうら王

第2局観戦記 佐藤紳哉六段 対 やねうら王 - 罠をかいくぐり最後に生き残ったのはどちらか

やねうら王開発者・磯崎元洋氏:今回の5戦が終わり、人間側から見たら1勝4敗という形で、勝率で言うと2割になっていますが、じゃあコンピュータ将棋って強いのか? と言われると、強い部分がありながら下手をするとアマチュア初段、それ以下の部分もあり、そういう二面性があると思っています。将棋というのは結局、比較的終盤で勝負がつきやすくて、最後にミスを出した側が負けてしまうという要素があります。結果として勝率は差が開きましたが、ソフト側もアマチュア初段ぐらいしかない弱い側面をレベルアップしていかないと、人間側に突かれ続けると感じた一局でした。

将棋のハンディキャップには、駒落ちという形が伝統的にありますが、コンピュータ側が安定して8割の勝率をあげられるのであれば、おそらくは香落ちくらいの手合で互角ぐらいになるかと思います。ただ、現在のプロの公式戦は平手の対局しかありませんから、香落ちの定石などがあまり開拓されていない。本気でプロの方々が香落ちを研究されたら、ハンデ以上にもっと勝ってしまうのかなと思う部分があります。ですから、プロが本気で研究された香落ちの将棋を、私としてはすごく見てみたい想いもあります。

戦前には、そういう香落ちの対局がよくあったようですが、現在は平手しかないという状況です。ハンディキャップの付け方ですが、将棋の駒落ちというのは、伝統的に二枚落ち、四枚落ちなどがありますが、木村義雄十四世名人が出された『将棋大観』という駒落ちの定石書を踏襲し、それに習っているという状況です。つまり、あまりルールとしての駒落ちはバリエーションがなく、決められていない。チェスには、面白い駒落ちがありまして、後手一手待ちというハンデのルールがあり、先手だけ最初に一手指すことができます。将棋でも最初に二手指せるなど(ハンデのルールがあれば)どんな指し手がベストか――中段より前に駒が進むといきなり角が成って王が取れてしまうので、中段よりは前にいけないなどのルールを設ける。そして、三手待ちとか四手待ちとか、後手が待ってから一手指すというようなルールでハンディキャップをつけられるのなら、どういう将棋になるのかなと。おそらく香落ちよりは小さいハンデになるかもしれない。色々なハンデを考えて、どうやったら互角になるのかと色々考えさせられた電王戦でした。森下先生が言うように、盤駒を使うなどすれば、人間はもっとパワーアップすると思いますし、そうして互角の戦いをずっと見ていきたいと思いました。

佐藤紳哉六段:まず最初にお詫びをさせてください。第1局の終了後に流れたPVでの、私の言葉、また、その後の記者会見での発言など、大変聞き苦しい部分があったと思います。大変、申し訳ございませんでした。将棋の感想ですが、ソフト相手には、終盤で競り合っては勝てないとか、時間がなくなっては勝てないという風に言われていましたが、競り合っても、終盤勝負でも、時間がなくても勝てる――そういう部分を見せたいなと思っていました。実際は、終盤で間違えてしまい残念な気持ちです。ソフトとの練習を通して、自分が思ってもいないような手を指してくる、そういう場面にたくさん遭遇し、将棋の奥深さを感じることができました。結果は出ませんでしたが、電王戦を通して本当に楽しくいい時間を過ごせたと思っています。