ソチ五輪王者が世界選手権で初優勝を飾った

26日に開幕した「世界フィギュアスケート選手権大会2014」で28日、男子フリーが行われた。ショートプログラム(SP)3位からの逆転優勝を狙ったソチ五輪金メダリスト・羽生結弦選手は、191.35をマークしてトータル282.59で初優勝を果たした。羽生選手はグランプリ(GP)ファイナルでも優勝しており、同シーズンでこの3大タイトルを制したのは2001-2002年シーズンのアレクセイ・ヤグディン選手(ロシア)以来、史上2人目となる。2位はわずか0.33点差の282.26で涙をのんだ町田樹選手、3位は275.93でハビエル・フェルナンデス選手(スペイン)となった。

唯一、後半に基礎点10点台のジャンプを3度

まさに五輪金メダリストとしての今シーズン集大成といえるフリーだった。冒頭の4回転サルコウ。五輪フリーでも失敗しており、決して得意としてはいないであろうジャンプの着地でぐっとこらえた。昨年10月のフィンランディア杯以来の大技を成功させると、続く4回転トゥーループはきれいに着氷。技の出来栄えを示すGOEで2点の加点が付く、美しいジャンプだった。使用曲「ロミオとジュリエット」を体現すべく、ロミオの猛々(たけだけ)しさとジュリエットの優雅さを備えたスケーティングもさえわたった。

圧巻はジャンプの基礎点が1.1倍になる後半の演技だ。参加選手の中で唯一、基礎点が10点以上になるジャンプの組み合わせを後半に3種類もってきた。トリプルアクセル - 3回転トゥーループ、トリプルアクセル - 2回転トゥーループ、3回転ルッツ - 1回転ループ - 3回転サルコウの3種類すべてでしっかりと基礎点を獲得した。

一方で2位の町田選手は、前半に3種類の基礎点10点以上のジャンプをプログラムに取り入れたものの、後半はゼロ。羽生選手の技術点99.93は、町田選手の93.85を引き離して断トツ1位で、この差がSPでのビハインド(6.97点差)の大半をうめる形になっている。

ネット上では「羽生結弦さんに人生も教えてもらった」

史上2人目の快挙を成し遂げた19歳に、多くの人が敬意を表している。

自身がデザインしたコスチュームで羽生選手が大会に出場するなど、羽生選手と親交があり、「ジョニ子」の愛称で日本にも多くのファンを持つジョニー・ウィアーさんは自身のツイッターで、「Our Olympic champion is now our World champion. Congratulations Yuzuru! 1. Y. Hanyu 2. T. Machida 3. J. Fernandez.」(僕らの五輪チャンピオンが今、僕らの世界チャンピオンになった。おめでとう、結弦! 1位・羽生結弦、2位・町田樹、3位・ハビエル・フェルナンデス: 英文は原文、訳は編集部)と、19歳の優勝を我がことのように喜んでいる。

多くの人のツイッター上でも「羽生結弦選手のフリー演技素晴らしかった! 母娘で素敵な4分半堪能ー!! ほんと王子様みたいだ」「本当に鳥肌たった。 涙出そうになった。 私はこんなちっぽけな事で悩んでたんだ、って思った。 羽生結弦さんには人生も教えてもらった気分」(すべて原文)などと、感謝や賞賛のコメントが見られる。

今シーズンの全大会で表彰台にあがる

五輪金メダリストとして、初めて「追われる立場」になったといってもいいであろう状況で迎えた世界選手権。昨年まで3連覇中だったパトリック・チャン選手(カナダ)が不在とあり、優勝候補の大本命にあげられていた中での1勝は、羽生選手の底力を証明した価値ある1勝と言ってもよさそうだ。

さらに、今回の優勝で今シーズンの"表彰台コンプリート"も達成した。ソチ五輪、GPファイナル、世界選手権、全日本フィギュアスケート選手権、フィンランディア杯で優勝。GPシリーズスケートカナダ、同エリック・ボンパール杯で2位に入った。その強さは圧倒的ですらある。

写真と本文は関係ありません