点検・補修システム

「高齢化」しているという首都高だが、どのようなメンテナンス体制で支えているのだろうか。点検・補修のシステムとそれを取り巻く技術について迫った。

保全情報管理システム「MEMTIS」

首都高を走っていると黄色いパトロールカーを見かけることがあるが、首都高速道路ではパトロールカーや徒歩での目視による「日常点検」、高所作業車や仮設吊足場を使用して接近して損傷状況などを詳細に把握する「定期点検」、地震時などの「臨時点検」を実施している。これらの点検・補修は「計画→点検→判定→対応」のPCDAサイクルで進められているという。

日常点検の一つ「高架下徒歩点検」(提供: 首都高速道路株式会社)

定期点検の一つ「船舶による接近点検」(提供: 首都高速道路株式会社)

点検結果は損傷状況によりA~Dまでランク付けされ、ランクに応じた対応策が実施される。Aランクは第三者被害につながる恐れのある損傷などの「要緊急対応」、Bランクは計画的に補修が必要な損傷を指す「要対応」、Cランクは損傷が軽微な「対応不要」、Dランクは「異常なし」だ。Aランクの場合は「応急措置(恒久措置)」、Bランクの場合は「補修・補強」、CランクとDランクは「次回定期点検」という対応になっている。

これらの履歴を保存しているのは、同社の保全情報管理システム「MEMTIS」(Metropolitan Expressway Maintenance Technical Information System)だ。MEMTISは、「管理台帳」「点検履歴台帳」「補修履歴台帳」の3つで構成されている。管理台帳には、構造物や附属施設などの材質や形状などの情報が収められ、点検履歴台帳と補修履歴台帳には、点検結果と補修履歴が記録されている。データを一元管理し、情報を随時更新できる体制にして、道路構造物の「量・質」を定量的に把握・評価し、効率的な点検・補修へ活用しているのだ。

「音」で損傷を探す

超音波探傷装置による点検の様子(提供: 首都高速道路株式会社)

点検や診断のための技術も、首都高を支えている。「半自動超音波探傷装置」は、超音波探傷技術を応用して、銅床版のデッキプレート内部で進展する亀裂を発見することができる装置。デッキプレート外面に位置情報が記録・保存できる専用の探触子ホルダを走査させると、亀裂の位置と範囲情報がモニター画面に表示・保存されるという仕組みになっている。通常の探触子を使った方法よりも、効率的に点検作業をすることができるという。

「簡易型高所用打音検査システム」は、たたき点検で損傷状況を把握するための機器で、コンクリート構造の損傷を「音」で発見できる。本体附属のマイクロフォンにより地上で打撃音を聞くことが可能で、高さは8mまで対応。高架下状態が悪く機械足場が設置できない場所や、機械足場のバケットが入れない場所にあるコンクリート構造物を点検する際に使うことができる。熟練した技術者が、微妙な音の変化をもとに損傷状況を把握するということだ。

様々なシステムと技術が、首都高のメンテナンスを支えていた。利用するだけではなく、システムや技術などのメンテナンス体制を知ることで、首都高をより身近に感じることができるかもしれない。