キリンビールより2013年5月に発売された新ジャンル「キリン 澄みきり」は、麦のうまみがしっかりとありながらすっきりとしていて飲み飽きず、毎日飲みたくなる味わいで大ヒット。昨年10月には年間販売目標を上方修正し、好調だ。しかしそんな売れ筋商品が昨年12月、発売後7カ月で早くもリニューアルとなった。なぜこの時期に……?? スピードリニューアルの裏には、どのような意図があったのだろうか。開発担当者から話を聞いた。

「新ジャンル」誕生から10年

昨年12月のリニューアルではパッケージデザインも変更。写真右がリニューアル後、左がリニューアル前のパッケージ。"KATANA(刀)"というコンセプトはそのままながら、シルバーイエローからシルバーブルーに変更し、グラデーションも強めたことで、より洗練された力強さを表現した

キリンビール・商品開発研究所・中味開発グループの須田崇さん

第3のビールとも言われた「新ジャンル」が登場して昨年で10年。最初は安さのみが注目されがちだったが、先端技術が次々と導入され、著しく味わいが向上してきている。そんな中、新ジャンルという商品全体のレベル底上げを図り、「自ら進んで手に取ってもらえる商品」として開発されたのが「澄みきり」である。

「麦100%(麦芽・大麦・大麦スピリッツ使用)にこだわりながら、デイリーに楽しめるようすっきり飲みやすい味わいにすることに苦労しました」。「澄みきり」の新商品開発時について、こう話してくれたのは、キリンビール・商品開発研究所・中味開発グループの須田崇さんだ。「『キリン一番搾り生ビール』で培った麦の取り扱いの手法や『キリンラガービール』でのホップの研究をいかし、さらにはキレのよい味わいを作りだす新酵母も採用。そうすることで、うまみを出しつつ澄みきった味わいの表現が可能となりました」。キリンの主力ビールの技術が惜しげもなく注ぎ込まれた新ジャンル。なんて贅沢な商品なのだろうか。改めて驚く。

さらに味を左右する仕込みの加熱工程では、通常30℃程度の幅で温度を変化させていく中で、1℃刻みの実験を実施。「澄みきり」の味わいを作りだすための最適な温度を研究した結果、「澄みきり」でしか使用していない温度条件での仕込みを行っている。

"生の声"を盛り込んで成長していく商品

そこまでこだわって開発した「澄みきり」。しかし、リニューアル自体は発売後4カ月で決定していた。「お客様の反応は発売後でないとわかりません。そういった生の声を盛り込めるリニューアルは、商品が成長していく過程では必要と考えています。なので、発売して少し経った頃には既に『リニューアルするんだったらこうかな』と頭の中に描いていました」と須田さん。

発売後のお客様の声を実際に聞き、麦の香りや厚みについて「まだまだ進化できる余地がある」と感じた。そこで、コクを上げるため、「澄みきり」の基になる麦汁の分解を強める手法や、麦汁の煮込み方を強めたりする手法などを試みたという。しかし、これらの手法では雑味が生まれてしまい、既にファンのいる「澄みきり」特有の澄みきった味わいが失われてしまう。そこで麦の力強さを出す為にたどりついたのが、麦芽と大麦の使用量を増やすという選択だった。これはコストアップに直結するが、試作品が以前の物と比べて格段においしくなっていたため、社内からもなんとかGoサインが出たとのことだ。

今回の早期リニューアルは、「今後も常に進化し続けることを示す、お客様との約束」でもあるという。新技術を開発し続け、常に新しく、おいしくなっていくという「澄みきり」。今後の進化も楽しみだ。