聞いたことがある? 芦別名物のスープ「ガタタン」

学生時代、北海道出身の学友たちが話題に出していた「ガタタン」という言葉を聞くたび、どこかエキゾチックな印象を抱いていた大阪出身の筆者。最近、芦別へ出張した際、再びこの言葉の響きに惹かれて現地の食堂へ入った。実はこれ、芦別で戦後から愛されてきた具だくさん贅沢スープの名称なのだ。

10種類以上の具に個性が加わったスープ

ガタタンには、白菜、ニンジン、イカげそ、豚肉、山菜、だんごなど10種類以上の具材が入っている。豚骨や鶏ガラなどがベースのとろみあるスープに、最後に溶き卵を落としていただく。名前の由来は、中華料理の「含多湯(がたたん)」にあると言われている。戦後、中国東北部から引き上げてきた村井豊後之亮氏が、大陸の家庭料理をヒントに創作し、芦別でデビューさせたのがその始まりなんだとか。

現在は、芦別の名物として多くの店で提供されている(ちなみに、芦別市の観光情報サイトでは、「ガタタンを出している店」として12店舗が紹介されている)が、店舗ごとの個性が加わっているのも特徴だ。なお、芦別商工観光課では「芦別名物 ガタタンマップ」という店舗マップも配布されているので、現地で食べ歩きしたい人はこれを利用するのもいいだろう。

ラーメンや焼きそばのガタタン

今回、まず足を向けたのは、和食・洋食・ご当地グルメと幅広い食を、リーズナブルに楽しめる芦別市観光物産センター2Fの「ラ・フルール」。テレビ報道されたことをきっかけに有名になったこの店は、連日、多くの客で賑(にぎ)わっている。こちらの店では、あっさりとしたスープに太麺を加えてラーメンとした「ガタタンラーメン」が人気。900円で楽しめる。

「ラ・フルール」の「ガタタンラーメン」は900円

ボリューム満点だが爽やかなスープは喉にやさしく、とろみがあるわりには、いわゆる中華料理にありがちなしつこさは全くない。エビやイカといった海鮮類もあっさりとした味わいで、女性人気の一品であることも納得できる。材料は色とりどりの野菜に、海鮮、豚肉と実に楽しい。ちなみにこの店では、「ガタタン焼そば」900円も人気だ。

焼そばにも展開されている。カラフルな「ガタタン焼そば」は900円

●infomation
ラ・フルール
芦別市北4条東1丁目1番

柔らか団子が魅力の一品

次に紹介したいのは、「ガタタンといえば宝来軒」というほどの有名店。もともとは具だくさんのスープであったガタタンそのものを味わえる店だ。

この店の「ガタタン」は650円。柔らかい杏仁豆腐のようなお団子が入っており実においしい! とろみをつけたスープに、タケノコ、フキ、イカ、シイタケ、キクラゲ、豚肉、ちくわなどの具をつめこんだ、見た目も華やかな一品だ。他の店に同じく、リゾットやドリアもガタタンのアレンジバージョンを用意。変り種でガタタンを堪能したい人にはうれしい店である。大衆食堂らしい気取らない店内で、あつあつの品々を堪能できる。

地域の老舗である「宝来軒」の「ガタタン」は650円だ

●infomation
宝来軒
芦別市上芦別町38

10種類の食材でダシをとるスープカレー

最後に、北海道らしい一品で締めくくろう。芦別市の市街地にある食堂「きんたろう」では、「ガタタンスープカレー」(850円)を食べることができる。材料もウインナーや彩野菜、ゆで卵といった子供に大人気の品々を使っており、クセのないさっぱりとしたスープに仕上げている。

きんたろうのガタタンは、ガタタン専用のダシを2日がかりで作っているという。豚骨ベースの和風ダシで、野菜、カツオ節などダシだけでも10種類の食材を使い、丁寧にアク抜きから下茹で・中茹で・本茹でするとか。前述のスープカレーにしても、カレーのスパイシーな食感とガタタンならではの素材のゴージャス感を一度に楽しみたいのなら、この店がオススメだ。

スープカレーに展開された「きんたろう」の「ガタタンスープカレー」は850円

●infomation
きんたろう
芦別市北4条西1-3

以上、駆け足で紹介してきた芦別の「ガタタン」。全国区の知名度とはまだ言えないが、エリア内では着実に店舗数増加中で、ファンも増える一方だ。近くまで旅をした際には、是非このスープを口にしてみてほしい。ご当地芦別ならではの飾らない、しかし栄養満点の一品なのである。