人気アニメ『機動戦士ガンダム』の原作者で知られる富野由悠季監督が21日、都内で行われた「オオカゼノオコルサマ」と米ハリウッドの制作会社「Legacy Effects(レガシー・エフェクツ)」の業務提携による制作発表会見に出席した。
「オオカゼノオコルサマ」は、日本のクリエイターが世界で活躍できる環境をつくるために立ち上げられたプロデューサー集団で、多くのクリエイターが所属。同社は今回、映画『アイアンマン』シリーズや『アバター』(2009年)、『パシフィック・リム』(2013年)の制作で知られるハリウッドの制作会社「Legacy Effects」と業務提携を果たし、提携作品第1弾として富野監督の手がける新作を世界に発信する。さらに、岩波書店の児童文学作品の実写化も予定しているという。
先週よりネット上で富野監督の新作が発表されるのではないか、と大きな注目を集めていた本日の会見だったが、権利関係などの問題を調整している最中で、具体的なタイトルは言及されず。会見の中で富野監督は「タイトルの発表まで持ち込みたかったのですが『Legacy Effects』のスタッフの来日は、今年だと今日しかなかった。そのために、タイトルを最終的にFIXするまでに至らなかった。本当に申し訳なく思っています」と弁明した。
しかしながら、富野監督は会見の中でいくつかのヒントを残している。まずは完全新作か、過去作のリメイクになるのかどうか。富野監督は「キャリアで言えば基本的に"TVアニメ発"で作品を発表してきましたし、第1作目について言えば、全くの新作でやるというリスクを侵すわけにはいきません。そのため、過去作品からリメイクする可能性を考え、今日までの一カ月半『オオカゼ』のスタッフにはがんばってもらいました」と、あくまで可能性の1つではあるが、リメイクについて言及した。
リメイクについて大多数の人がイメージするであろう作品は『機動戦士ガンダム』だが、富野監督は『ガンダム』以外の作品の可能性についても捨て去ったわけではないという。「今の時期に『ガンダム』となれば、『ガンダム』は今、僕が知らない『ガンダム』がいっぱいある。そういうものに混ざりたくはありませんから、別のものでいきたいという部分もあります」と富野節をさく裂させながら、「今、1、2本企画としては考え始めています」と、企画そのものが確定していないことを明かした。
実写かアニメかということについては「第1作目が2Dの手前、つまり単純に手書きのアニメのような企画を立ち上げるところから始めるほうが無難じゃないかと思っています。ただこれは"無難論"だけではなくて、『Legacy Effects』との提携をどうしていくかということは、後2、3年の時間をかけてやっていった方がいい」と具体的には語らず、作品の発表のみにフォーカスせず、今回の提携自体を育てていく長期プランについて説明。加えて「打倒『アバター』くらいはいきたい!」と宣言した。
なお、どうしても新作に注目が集まりがちだが、富野監督は「今回の提携で一番重要なことは、僕の過去作品の何かを描かせるということが眼目ではありません。これから『Legacy Effects』と、それから『オオカゼ』をベースにして、世界配給できるようにアニメ発やコミック発のコンテンツをもった日本の映像を、広く世界に提供していきたい。そういう製作基盤を東京とハリウッドに作っていきたいと思っています」と、日本作品の海外進出のきっかけとして今回の提携があったことを強調していた。
富野監督の提携第一作については、権利関係の調整が付き次第、近いうちに発表されるという。