ムジ・ネットとUR都市機構は25日~2月3日まで、東京都・高島平団地にて団地リノベーション物件の賃貸募集を行っている。無印良品の良品計画とUR都市機構とのコラボレーションが気になる同物件、実際に取材に伺った。
ワンルームから3部屋まで"伸び縮み"
ムジ・ネットとUR都市機構は、現代の多様化した暮らしに新たな賃貸リノベーションを発信するという目的で「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」を2013年から実施している。今回募集される高島平団地では、首都圏第1号プランとして「Plan 08」と「Plan 09」の2種類を展開。
「伸び縮み自在なLDK」がテーマの「Plan 08」は、ふすまの使い方次第で部屋の数を変えられるのが特徴。広々としたワンルーム使い、広めの寝室とダイニングの2部屋使い、寝室、勉強部屋、ダイニングからなる3部屋使いと、3種類の展開ができる。押入れの壁をなくすことで、ワンルームが可能になる間取りを実現した。
部屋を仕切るためのふすまには「ダンボールふすま」を使用しており、シンプルな印象を与えている。普段はワンルーム、来客時はふすまを使って寝室と区切るなど、生活形態に合わせた暮らし方ができそうだ。
押し入れが勉強部屋に!
「効率的に家事ができる」がテーマの「Plan 09」は、寝室とダイニングからなる2部屋タイプ。押入れ部分に机を置くと、勉強部屋として使うこともできる。洗濯機置き場を南面の日当たりが良いキッチンの隣に設置したのも特徴で、洗濯と調理という家事が近接し、部屋干しもできるので家事がしやすそうだ。
両プランでは、キッチンとテーブル、ベンチが付属となっている(※そのほか写真に写っている家具は付属ではない)。テーブルはキッチンの作業台につなげて使うほか、L字型やT字型に動かすことも可能。話しながら料理と食事を楽しむことができる。
キッチンなどにあるシェルフの上に取り付けられているのは「小天井」。天井の下にもう一枚天井がある状態で、壁際の天井下に取り付けられている。家具を、地震で倒れないために固定できるようにしているという。
これまで畳があった部分には「麻畳」を敷いた。麻でできているため、畳として使用するだけではなくイスなどの家具を置くこともできる。フローリングだった部分には「麦わらパネル」を使用。麦わらを圧縮して床にしたもので、独特の見た目とさわり心地があった。壁は白塗りで、浴室は古いタイルを主に白色で塗装。「使えるものはそのまま」使い、「加えるものは最小限に加えて」仕上げたとのこと。
今回募集している部屋では、夫婦2人から夫婦2人と子供1人くらいの居住人数を想定している。
「機能重視、合理的、余計なものをつけない」
今回のコラボレーションについて、ムジ・ネット取締役住空間事業部開発部長の川内浩司氏にお話を伺った。同氏によれば、50年ほど前に当時の日本住宅公団が、その時代における新しい日本人の住宅のスタンダードとして提供した住宅は、「機能重視、合理的、余計なものをつけない」という点で、1980年代から「必要なものを必要なかたちで」提供してきた無印との相性が良かったとのこと。
コラボレーションのきっかけは、大阪でUR都市機構が行ったリノベーションをムジ・ネットのスタッフが見学に行ったことだったという。同社のWebサイトで団地活用の事例として紹介したところ、たいへん評判が良かったことなどから、コラボレーションの実施に至った。
昨年大阪で行った第1回の募集倍率は平均5.7倍で、応募層は30代が中心。団地にはエレベーターがない棟も多く、4階や5階の部屋は敬遠されることもあったが、このプロジェクトでは4階や5階を希望する人が多いという。このような違うプランの提案ができ結果を残せたことでプロジェクトの良さを知り、東京で展開することにつながったとのこと。
「戦後の日本人の暮らしをつくってきたUR都市機構だが、間取りが時代にそぐわないのは否めない部分もあるので、今回のような例を新しいスタンダードにしていきたい。普及してこそスタンダードになると思う」と締めくくってくれた。
今後は品川区や国立市でも
今回高島平団地で募集しているのは、「Plan 08」7戸と「Plan 09」8戸。所在地は、東京都板橋区高島平二丁目他。モデルルーム見学や申し込みなどについての詳細はUR都市機構Webサイトで確認できる。プロジェクトの詳細はムジ・ネットのプロジェクト紹介サイトでも見ることができる。
同プロジェクトは今後、品川八潮パークタウン潮路南(東京都品川区)と国立富士見台(東京都国立市)でも展開していく予定。
正直、団地は部屋の間取りが固定されているというイメージを持っていたが、今回のリノベーションでは決まったスペースがこれほど自由になるのかと驚かされた。家具の配置などを工夫して、自分にとって心地よい住まいをつくっていくのも、暮らす楽しみになりそうだ。