毎月一定額を支払えば、映画やドラマ、アニメなどをインターネットで視聴出来る定額制映像配信サービス。インターネット普及の昨今、同サービスは市場拡大の動きを見せている。その中の1つであるHulu(フールー)は、月額980円で見放題に加え、PCやスマートフォン、ゲーム機器などでも視聴可能なマルチデバイス対応のサービス。米国本社のため、海外ドラマの充実が特長であったが、1日にTBSオンデマンドとコンテンツパートナーシップを締結し、国内コンテンツが増大した。そこで、Huluの日本代表でマネージング・ディレクターを務めるバディ・マリーニ氏に話を聞いた。

バディ・マリーニ
太陽神戸三井銀行(当時)、ユニバーサル・ピクチャーズ、インターナショナル・デジタル・アーティストなどを経て、エイベックス・アジアで映画事業開発および音楽事業の代表を務める。2012年5月にHulu日本代表に就任。ビジネス戦略計画、日々のオペレーション、コンテンツ獲得やディストリビューションの拡大、マーケティング活動などを中心に取り組んでいる。UCLAアンダーソン・スクール・オブ・マネジメントにてエンターテインメント・マーケティングのMBAを取得

TBSオンデマンドとコンテンツパートナーシップを締結した反響はいかかですか?

反響はものすごく良く、ユーザー様に喜んでいただいています。これまでのHuluは、海外ドラマが豊富だと知っている人はいましたが、日本のコンテンツが増えたことで更なる関心を持っていただけたと思う。現在、配信中のTBSオンデマンド作品は約250本ですが、徐々に追加して最終的には約3,000本に増やす予定。この提携は、私たちにとって大きなマイルストーン(画期的な出来事)になりました

今回、締結に至った経緯とコンテツホルダーにとってのメリットとは?

最初は『どういったサービスなのか分からない。マイナスなんじゃないか?』という想いはあったかもしれない。だが、クオリティーの高い映像を色んなデバイスで見ることができる私たちのサービスに対しての理解は高まっていると実感しています。マネタイズの新しい方法の1つとして、せっかく作った良い放送作品を色んな人に届けることが出来る。例えば、続編を作る際にも、最初の作品を観る人を増やした方が良いし、コンテンツの価値も高まると考えています

今後、国内コンテンツを増やしていく予定は?

もちろんあります。日本はコンテンツのクオリティーが高いので、米国でもアニメなど日本のコンテンツを配信すると視聴ランキングも高い。日本でサービスの 運営をしていくには、"日本のコンテンツを、日本の視聴者のために"というのは必須だと考えています。今後も、大ヒット作からニッチな作品まで幅広くコンテンツを増やしていきたい

Huluのユーザーについてお聞かせください。

子どももターゲットにしていますし、私の両親も利用しているので利用者の年齢層は幅広いですが、コアのユーザー層は25~40歳。最初は男性ユーザーが多かったが、女性ユーザーも増えてきました。海外ドラマや洋画からスタートしたので、新しい海外ドラマを配信すると反響が良いですが、色んな方が色んなジャンルを幅広く楽しんで頂いていると感じています。毎週、視聴動向を確認しているので、人気作品をピックアップしたり、次に配信するコンテンツを常に考えています

『日経消費インサイト』(2013年7月号)の調査では、定額制映像配信サービス利用者の約4割を獲得し、利用者の満足度も90.4%という結果が出ていますが、Huluの強みとは?

配信するコンテンツも大事ですが、いつでもどこでも好きなデバイスでシームレスに視聴出来る環境を作るテクノロジーの提供が重要。その点で、日本のユーザーには受け入れて頂けたと思っています。そこに価値があり、観ている人たちも満足感を感じている。日本のユーザーの方はクオリティーに厳しいので、受け入れられているのは映像配信サービスとしてうれしい

現在は月額980円の定額制だが、新作などは課金制というPPVの導入予定は?

課金制にすると観たい作品だけ視聴するが、私たちは定額制の見放題が重要だと思っています。海外作品やドキュメンタリーなど、今まで関心が無かったものも見てみようと、アクティブに観ているのが私たちのユーザー様です。課金制のマーケットも重要ですが、見放題のマーケットは米国でも拡大しています。ワンプライスのビジネスモデルはキープしていきたい

常に革新し、1番良い形でエンタテイメント作品を提供していきたい

定額制映像配信サービスの利用者は4.8%、興味がある人は22.5%(日経消費インサイト調査)ということだが、今後の目標及び課題は?

まだまだ小さい市場ですが、今後、このようなサービスがあると理解してもらえれば、関心を持ってくれる人が増えると思う。“決まった時間にテレビを見る、映画館に行って見る、DVDを借りて観る”という習慣はありますが、インターネットで見放題というのは人のライフスタイルを変えるサービスだと思っています。インターネットの進化によりテレビや映画を見なくなると言われていますが、私たちはインターネットを使って、それらを観ようということをやっています。現在、様々な会社が映像配信サービスを提供しているので、今後は『見放題ってこんなに良いんだ。ライフスタイルに合っている』という人たちが増えていくと考えています

最後に、映像配信サービス業界の展望についてお聞かせください。

インターネットは映像だけじゃなく、色んな意味でライフスタイルを変えています。色んな情報に簡単にアクセス出来る未来は必ず来る。映像配信サービスは、今後必ず大きく伸びると確信しています。インターネット環境は毎日、技術が革新しているので、私たちも同じように常に革新していかねばならない。先を読んで、1番良い形でエンタテインメント性のある作品を提供していきたい。今後、マーケットのリーディングプレイヤーになりたいと思っています

Hulu(フールー)

Huluは、約14,000本の映画やドラマ、アニメ、ドキュメンタリーなどの作品を、月額980円で視聴出来る定額制映像配信サービス。2007年に米国での設立後、2011年9月に日本で独自のサービスを開始した。インターネットに接続したテレビ、PC、タブレット、スマートフォン、ゲーム機で視聴出来るマルチデバイス対応で、視聴中の作品の続きを他の機器で再生することも可能。9月に東宝、10月に東映アニメーション、11月にTBSオンデマンドとコンテンツパートナーシップを締結し、国内コンテンツを拡大中だ。現在、2週間の無料トライアルを実施中。