帝国データバンク(以下、TDB)は29日、「2012年度 未上場建設業4,184社の経営実態調査」の結果を発表した。

2012年度の売上高を見ると、復興工事が進む東北が前年度比26.7%増、北陸が同10.0%増と、ともに前年度比2ケタの大幅増を記録。また、全地域で前年度を上回り、建設市況が回復傾向にあることが推測できる。

被災3県については、3県合計で前年度比37.9%増の8,494億5,800万円となり、震災復旧関連工事などの公共投資や住宅投資が進められている状況を反映。特に、岩手県は同45.9%増の1,906億1,400万円と大きく増加した。

また、2012年度の売上高の増減を分析したところ、東北では78.1%、全体では64.8%が増収。さらに被災3県では85.5%が増収となった。

売上総利益率の動向を調べると(2,897社)、全体では前年度より「低下」した企業が54.7%。地域別では東北と中国を除く7地域で「低下」が「上昇」を上回った。TDBは「公共工事の増加で工事量は増えているものの、労務・外注費の高騰を工事請負金額に転嫁できない業者が増えている」と分析している。

一方、被災3県では62.4%が「上昇」し、このうち福島は64.6%でトップとなった。

売上高に対する労務・外注費比率を見ると(2,324社)、全体では前年度比0.9ポイント増の64.3%。地域別では東北を除く8地域で上昇し、全国的に増加傾向を示した。これは、被災3県において大規模な復興・復旧工事が行われ、全国から職人が集結したため、東北地方以外でも職人不足が拡がったことが要因という。

売上高労務・外注費比率推移

一方、被災3県では、工事量が急増し売上高が拡大したことで、労務・外注比率が減少。なお、福島県では、建設作業員が放射性物質の除染作業に従事するケースが多く、他の2県より高い労賃を設定しているため、3県の中では比率が最も大きくなっている。

2012年度の倒産件数は2,731件で、2007年以来、5年ぶりの2,000件台となった。

TDBは今後の見通しについて、五輪特需に期待する声も多いが、五輪招致で職人不足が深刻化し、建設コストの上昇に拍車がかかる可能性もあると指摘。「今後も、労務費や資材価格の高騰に対する懸念は払拭できず、利益の確保と、また一方で、売上増による収支バランスの変化に対応した資金調達も注視していかなければならない」と分析している。

同調査は、同社の企業単独財務ファイル「COSMOS1」(71万社・470万期)、企業概要データベース「COSMOS2」(144万社収録)の中から、未上場の建設業者を抽出し、調査・分析したもの。対象は、2013年10月時点で未上場の建設業のうち、2012年度の年売上高が10億円以上の企業かつ過去3期(2010年度、2011年度、2012年度)の年売上高および最終損益が判明している企業。