政府は3日、第32回原子力災害対策本部(本部長:安倍晋三首相)会議を開催し、東京電力福島第1原子力発電所(以下、福島第1原発)の汚染水漏えい問題に対処するための基本方針を決定した。

汚染水対策に政府が総力を挙げて取り組むため、原子力災害対策本部の下に、菅官房長官を議長とする「廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議」を設置。併せて、福島第1原発近くに関係省庁の職員が常駐する「廃炉・汚染水対策現地事務所」を設置する。

技術的難易度が高く、国が前面にたって取り組む必要があるものについて、財政措置を進めていくことを決定。汚染水の漏れを防ぐ事業などにかかる費用を全額国が負担することとし、早期の事業開始を促すため、今年度予算の予備費を活用するという。

タンクからの汚染水漏えいの現状(出典:首相官邸Webサイト)

具体的には、原子炉建屋付近への地下水の流入を防ぐため、国費を投入して、凍土方式の遮水壁を建築する。また、汚染水の放射性物質除去装置「ALPS(アルプス)」について、不具合を修正し、より処理効率の高い改良型を国費で新設する。なお、凍土方式遮水壁の運用開始時期は2014年度中をめどとしている。

原子炉建屋海側の主トレンチ内の高濃度汚染水については、除去を進めるとともに、移動式の浄化装置で濃度を下げ、その後、トレンチの閉塞作業を行う。

併せて、建屋周辺に井戸を設置し、地下水をくみ上げて汚染水の増加を防ぐ。くみ上げた地下水については、線量を確認した上で海へ放流することを検討しており、政府は「関係者の理解を得るよう最大限努力する」としている。さらに、建屋地下に滞留する汚染水を完全に除去(ドライアップ)するため、建屋の止水(地下水が流入する建屋の隙間などを塞ぐこと)など、地下水流入を防止する対策を実施するという。

汚染水貯留タンクについては、漏えいリスクが高いボトル締めタンク全基を溶接型タンクに取り換える。ただし、交換後もタンクや配管からの漏えいリスクは存在するため、パトロールを強化するとともに、タンクに水位計や漏えい検出装置などを設置する。また、接合部の漏えいリスクが高い鋼製横置きタンクに貯留している汚染水を溶接型タンクに移送し、鋼製横置きタンクのボルト締め接合部の強化を行う。

建屋海側の汚染エリアに雨水が染みこみ、新たな汚染水が発生することを避けるため、アスファルト等で汚染エリアの地表を舗装する。汚染水を浄化することで発生する高レベル放射性廃棄物については、これらを保管する高性能容器(HIC)などの設備を覆う建屋を設置し、漏えいした場合のリスクを低減させる。