最近、「NISA(ニーサ)」という言葉を耳にすることが多いかと思います。NISAって何? 結局、何なの? 金融制度に詳しいファイナンシャルプランナーの新倉由紀さんに聞いてみました。そう、あなたがトクするためのきっかけが、このNISAにあるかもしれないのです。
イギリス国民の4割が利用する制度が見本
NISAとは2014年1月からスタートする制度で、株や投資信託(投信)などの運用益や配当金を一定額非課税にするというものです。この最初の一行を読んで、「あ、私には関係ないわ~」と思われた人も多いのではないでしょうか(笑)。でも、NISAという制度が導入された経緯を知っておくと、少しは興味が湧くかもしれません。
NISAはイギリスのISAという制度を参考に作られました。ISAは「アイサ」と発音し、「預金ISA(Cash ISAs)」と「株式ISA(Stocks & Shares ISAs)」の2種類があります。どちらも1999年に導入されたことで、イギリスではすっかり定着して国民の約4割がこの制度を使っているようです。この制度が導入で、イギリスでは一般の人が投資を意識するようになり、実際に投資を行う人も増えたそうです。
以前、「素人投資家がトクをするセオリーとは?」でも説明しましたが、今後は「貯蓄だけでお金をためる」というのは得策ではないかもしれません。実際のところ、NISAは正式名称を「少額投資非課税制度」といい、若年層や小口の個人投資家に配慮した内容になっています。これらの層を優遇することで、「今まで投資に興味がなかった人たちに、少額でもいいので投資を始めてほしい」というのが国の意図なのです。
NISAのオトクはずばり税金
では、NISAにはどんなメリットがあるのでしょうか? メリットはずばり税金。そう、税金が安くなるのです。2014年1月から、上場株式等の配当・譲渡益に対する税率は20.315%になりますが、NISAを利用して投資をした場合、利益(値上がり益や分配金)に税金はかかりません。
具体例を出しましょう。例えば投資信託を毎月1万円、1年間積み立てて、売却時に14万円に値上がりした場合を考えてみます。売却益は2万円(14万円-12万円)で、この利益に対して普通の口座ですと20.315%(4,063円)が課税されます。でも、NISA口座だと税金は非課税。つまり、2万円まるまる自分の利益となります。
NISA知っておきたい3つのポイント
「へぇ~、なかなか画期的な制度じゃない!」と乗り気になった人のために、NISAを理解するためのポイントを3点挙げておきます。
ひとり一口座のみ。金融機関は吟味して!
NISA口座を開設できるのは、日本に住む20歳以上の人です。ひとり1口座だけに限定されているので、複数の金融機関でいくつも開設することはできません。例えば、郵便局でNISA口座を開設した場合、最初の4年間は他の銀行や証券会社などに口座を変更・開設することはできないのです。
こんな事情から、今、金融機関はNISA口座開設の取り込み合戦をしています。金融機関のNISAキャンペーンなどに目を奪われるのではなく、「自分が利用したい金融商品を扱っているか」や「手数料の水準」「利便性はどうなのか」という“自分にとっての使い勝手”をきちんと吟味しましょう。
1年間に投資できるのは100万円まで
非課税の対象となるのは、「毎年年間100万円までの投資」です。値上がり益や配当でNISA(非課税口座)の残高が100万円を超えても、非課税枠には影響しません。また、利用しなかったその年の非課税枠は、年末を期限に利用できなくなります。「今年は30万円非課税枠が残ったから、来年に繰り越そう」というのはできないので注意しましょう。
非課税期間は5年間
NISAで税金が非課税となるのは、投資開始から最長5年間です。5年経過後は時価で、翌年分のNISA口座(100万円)を活用して非課税保有を続ける、又は、課税口座(一般口座や特定口座)に移すこともできます。ここで覚えておきたいのは、「毎年年間100万円」はある年の「非課税投資総額」だということ。下記のイメージ図のように、非課税投資総額は最大500万円まで拡大することができます。
NISAは上手に使えばオトクな制度です。ただ「オトク」にばかり目がいき、貯金(元本保障の商品)一辺倒だった人がいきなりリスクの高い商品に手を出した結果、元本がなくなってしまったら本末転倒です。NISAを利用する際には、自分の身丈にあったリスク内での投資を心がけましょう。
監修者プロフィール : 新倉 由紀(にいくら ゆき)
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会会員(CFP)・1級FP技能士。短大卒業後、証券会社等を経て、現在は独立系FP会社「ストックアンドフロー」に所属。企業研修や一般向けの各種セミナー、原稿執筆を行っている。「心と体のバランスをとりながらお財布も豊かになってほしい」との思いから、顧客が抱えるマネー面以外の悩みにも耳を傾けるFPとして、日々活動している。書籍に、『日本一やさしいネット株の学校』(ナツメ社:監修)『かんたん袋分け いきいき家計簿』(永岡書店:執筆・監修)などがある。
筆者プロフィール : 楢戸 ひかる(ならと ひかる)
1969年生まれ 大手商社勤務を経てフリーライターへ。中学生と小学生の男児3人を育てる主婦でもある。家事生活をブログ「家事マニア」にて毎週火曜日に更新中。