最初はトロ、次にもっちり、最後はカリカリと味わいが変わるもんじゃ焼き。鉄板の上でものの数分もしないうちに作られるその味は、短気な江戸っ子にもピッタリ! そんなもんじゃの街として全国に知られる月島に今、新しい風が吹いている。
女性の味方・きのこをもんじゃに
通称「月島もんじゃストリート」と呼ばれる月島の西仲通り商店街には、月島もんじゃ振興会協同組合加盟店だけでも、63店舗が連なっている。トッピングしかり、ダシしかり、店主の心意気しかり、どの店舗に行っても“オンリーワン”な味を楽しむことができるのだ。
そんな月島では7月限定企画として、菌のパワーを食生活に摂り入れる「菌活」に着目し、ホクトのきのことコラボレーションした「きのこがおいしい菌曜日@月島フェア」が行われている。もんじゃの街・月島でも、こうした食材とのコラボ企画は珍しいよう。
ではなぜ“きのこ”なのか? 実はビタミンが豊富なきのこは、整腸作用や美肌効果、老化防止などが期待できる食材である。加えて低カロリーと来たら、夏バテ防止・夏太り防止を目指す女性の味方と言えるだろう。
そして月島では現在、街コンなど女性が楽しめるイベントも行っていることもあり、女性の観光客が増えてきているという。「そんな女性たちにもっと喜んでもらいたい!」と月島がタッグを組んだのがきのこということだ。
とはいえ、「もんじゃときのこって合うの?」と疑問に思われる人もいるだろう。そこで、“菌活もんじゃ”を展開する店舗に味わいどころを聞いてみることにした。
3種のきのこをワサビともろみみそで
はじめに紹介するのは、2番街に店を構える創業18年目の「おしお NST店」。もんじゃと言えば和をイメージするかもしれないが、ここのお店の内装は海と太陽がコンセプトになっている。店内に流れる音楽もレゲエなどの洋楽で、ビール以外にラム酒などの洋酒も豊富に取りそろえている。
そんなおしおが展開するオススメの“菌活もんじゃ”は「Wasabi」(1,150円)だ。ブナシメジとエリンギ、マイタケの3種のきのこがこれでもか!とのった姿は、もう「きのこの山」そのもの。そのきのこを鉄板に流し込むと、目にも留まらぬ早さでヘラを使って切り刻んでいく。こうして刻んでいく中で、きのこにダシのうまみが染み込んでいくのだ。
あっという間に完成したもんじゃからは、もろみみそのいい香りが。ヘラ(コテ)を使ってホクホクしながら食べてみると、歯ごたえのあるワサビががっちりと味を引き締めている。
店長の深瀬吾芸さんいわく、「今までにないもんじゃを作りたいと思い、選んだのがこのワサビです。ワサビは通常、熱で辛味が飛んでしまうものですが、短時間で焼き上げるもんじゃなら香りも残り、サッパリとした後味になります」とのこと。常連さんが選ぶ一品というだけに、初めて訪れた人も是非挑戦していただきたい。
●information
おしお NST店
東京都中央区月島1-20-4
きのこに合うとっておきのチーズがトロリ
続いて紹介するのは、1番街の入り口にある月島もんじゃ振興会事務局の隣で展開している「もんじゃ大江戸坂井」。てんかすひとつをとってもこだわりが詰まっており、そのメニューの多さにも圧倒されるはず。また、日本初の電気鉄板を使って焼き上げるため、ガス式の鉄板に比べてニオイも軽減され、もんじゃならではの風味が楽しめるようになっている。
同店のこだわり“菌活もんじゃ”は「三種のチーズときのこもんじゃ」(1,520円)。「もんじゃの味を生かす」きのことして、エノキとマイタケをベースに、シメジやシイタケ、エリンギなどと2~3種類をミックスさせている。そんなきのこに合わせる食材として選んだのが、ナチュラルチーズ・カマンベールチーズ・スモークチーズだ。
中でもナチュラルチーズは、スイーツにも使用される塩分控えめのチーズを使用。「淡白なきのこに合う食材を考えた時、グラタンやピザなどといろいろな料理に使われているチーズが浮かび、実現したのがこのメニュー。国産品を用いることでおいしいことはもちろん、誰もが安心して食べられる料理を提供したい」というのは、坂井廣行代表取締役の言葉だ。
手早くいためられた具の真ん中に生地を流し込み、こだわりのナチュラルチーズはあとのせでたっぷりと。もんじゃから立ち昇る湯気からは濃厚なチーズの香りが! もっちり感を楽しむのもいいが、はやる気持ちを抑えつつ、カリカリに焼きあがるまで待ってみるのもいい。こうばしい香りとカリカリの食感がたまらず、気付けばビールが進みすぎているということも。
●information
もんじゃ大江戸坂井
東京都中央区月島1-8-1 アイマークタワー102
見た目からおいしいサッパリ系
最後に紹介するのは、4番街にある創業5年目の「月島名物 もんじゃ だるま」。女性スタッフで展開される店内にはポップなメニューボードが掲げられており、女性グループも気軽に入れる雰囲気作りがされている。オーナーこだわりの日本酒も多く取り寄せているので、「ちょっと今日は日本酒もいいな」という人にもピッタリだ。
元イタリアンシェフの千葉あゆ美店長が考案した“菌活もんじゃ”は、「夏野菜と塩麹きのこもんじゃ」(1,500円)。「見た目からおいしいを提供したい」と選んだ夏野菜は、オクラとナスの2種類。特にオクラはスタミナアップとともに、そのネバネバ感がもんじゃの味わいを引き立てるという。
もんじゃに合うきのこに選んだのはエリンギ。他にも鶏ひき肉やショウガをチョイスするなど、他店舗に比べて食材の多さが印象的だが、それらの味を塩麹が締める。「魚や肉など、どんな食材とも相性がいい塩麹は、夏にサッパリと味わいたい時にピッタリの食材」とのこと。
だるまでは、後味濃厚な「こだわりの鶏ガラだし」とサッパリとした「和風だし」の2種類から選ぶことができるが、「夏野菜と塩麹きのこもんじゃ」で店長がオススメするのは「和風だし」の方。そして、エリンギならではの食感を生かすため、いためる際にエリンギは刻まず、最後の仕上げにエリンギを合わせるのがポイントとなっている。
生地はオクラのネバネバも相まって、もっちりとした印象。和風ダシと鶏ひき肉の甘さにショウガがピリッと効いた優しい味わいで、エリンギやナス、オクラの食感が楽しい。女性スタッフとの会話も楽しみながら、熱々をホクホクしてみるのも一興だ。
●information
月島名物 もんじゃ だるま
東京都中央区月島3-17-9
トッピングの組み合わせ次第で、豊富にメニューが誕生するのももんじゃの醍醐味(だいごみ)のひとつ。“菌活もんじゃ”が食べられるのはこの7月だけとなっているので、今までにない、そして今だけのもんじゃに、是非月島で出合っていただきたい。